“help”の音は、聴こえない

*明星 詩乃

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「…はぁ」

溜息を吐きながら眉を寄せ、
少し睨み付ける様に、前方へと瞳を向ける

- 苛々する、


沢山の人が押し合い、
むさ苦しい空気が充満する車内を抜け、

ようやく大学の最寄り駅に
辿り着いたかと思えば、

今度はこれだ…いや、いつもの事だけど


目の前の
大学までの細い一本道には

ぎゅうぎゅうと、時には
肩をぶつけ合いながら通り抜けようとする

大学生達で溢れ返っていた


“世界は人で溢れている”とは言うが、

ここ日本の、その中の取るに足らない
一つの大学の中でさえも
こんなに人が居るのだと言うのなら、

やっぱり、人類は増え過ぎだと思う

凄く邪魔だ


…いや、人をこういう風に言うのは

ちょっと思いやりというか、道徳心に
欠けるとは思うが…はっきり言う、

瞳触りだ


かと言って、いつまでも
ここに立ち止まるのも

時間の無駄になるだけなので、

俺は怠そうに
靴を少し引きずりながら、歩き出す


「おっはよー」

歩き出した途端、
明るい声と共に肩を叩かれて、振り向いた


「…川崎」 

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