31 / 55
赤き竜と白き死神の物語
叡智の塔 8
しおりを挟むグレアの話を聞き、自分の身の上を明かすことからいつまでも逃げてはいられないと思った。
信用とは、嘘や誤魔化しを積み重ねるほどに薄れていつかは消えてしまうもので、僕は仲間を信用しているからこそ、自分のことをしっかり改めて話すべきだ。
宿に戻ってからだとそれぞれやるべき事があったりで、こんなに面々が揃うこともあまり無いということもあるので、ここで覚悟を決めることにした。
「僕、一応名目上は種族がプレインってことになってるけど、多分もうみんな分かってると思うけど実は違うんだ」
「シロ……」
レオンが心配そうに、僕の体を支えながら声をかけてくれたが、僕はもう一度彼に微笑んで「大丈夫」という意思を伝えると頷いて聞く姿勢を取ってくれた。
「本当の種族としては、ホムンクルス。かつて光の帝国アルバで作られた人造兵器。そして魂は異世界から連れてこられた」
「「「……!」」」
グレア以外は驚きに目を開く。
「……ってことはよ、シロは……」
「な、何歳なの?」
「私より歳上なのは確実ですぅ!?」
いや、もっとツッコミどころは沢山あるとおもうのだけれど……全員一番最初に気にするのが年齢とは僕が驚きだ。
「え、っと、625歳……ぐらい。正確には分からないけど」
「ハルスエルフィンより長生きなんですねぇ!」
「スゲー!ってことはシロはもしかして、不老不死ってことなのか?」
「でも数年前あたしが白き聖杖亭に来た時より、シロは大人っぽくなってると思うんだけど」
ホムンクルスは歳を取らず、どんな傷もたちまちすぐに治ってしまうし、行動不能に陥っても技術者が『修理』すれば問題なく再稼働できる。
それ故にホムンクルスが『不老不死』であることは間違っていないが、今の僕の体は緩やかであるが時間の制約を受けている。
「僕は一度、体に直接瘴気を浴びてしまって変質してしまったから、ハルスエルフィンと同じぐらいの寿命になってしまったんだ。あと百年ぐらいは生きれると思う」
「瘴気を……シロ様は、つまりイレギュラになったんですかぁ?」
「でもシロからは瘴気の気配もしねェし、人を襲うようなこともしねェ。どういうことなんだ?」
「その戦争の折、神々から人はアーティファクトを授かっただろう。それがシロを蝕み始めていた瘴気を祓ったのではないか?」
僕はこくりと頷いてグレアの見解が正しいことを示した。
「あと百年……しかない、のか?」
「推定だから僕にも正確には分からない。こんな種族は他に居ないし、僕以外のホムンクルスも全て消えてしまったと聞いているから……」
僕の体を支えていたレオンが僕をそのまま抱きしめた。顔を見上げると、彼は悲しそうな表情を浮かべている。
「でもほら、分かんないんでしょ?じゃあもっと長生きするかもしれないんじゃない?あたしはもっと早く死ぬだろうし、冒険者稼業なんてそれこそ、いつ死ぬか分からないでしょ」
「そうですよぉレオン様!今大事なのは生きている間にどれだけ楽しい思い出を作っていくかですよぉ!私もあと寿命まであと二百年はあるでしょうが、お姉様との時間を密に密に過ごしていくと決めてるんですからぁ」
アイリスとソフィアが悲しそうなレオンを慰め、その言葉で少し元気が出たのか、もう一度僕を強く抱きしめて体を離した。
「レイヴンにもこの話はしようと思うんだ。いつまでも秘密にするの、なんだか胸がつっかえる気がしてたから……でもみんな意外と普通に受け入れてるみたいで良かった」
正直引かれたり、気味悪がられるかもしれないと思っていたのだけれど、みんなが気にしたのはただ寿命についてぐらいだったのに安堵すると、レオンが僕の頭を優しく撫でる。
「当たり前だろ。シロはシロだ。お前の種族がどうであっても関係ねェさ」
「そうそう、むしろシロの頑丈さとか強さの理由が分かってスッキリした」
レオンとアイリスに同意するようにソフィアと、そしてグレアも力強く頷いた。
「さて、あとはここから出て諸々報告しなきゃね」
「お前たちが扉の封印を解いたおかげで、内側からも扉を開くのが容易になった。すぐに出るとしよう」
表情は無表情だが、どことなくグレアの口調は嬉しそうだ。ずっとここに閉じ込められていたから、外に出られることは彼にとって喜ばしいことなのだろう。
グレアがアーティファクトである書物を再び呼び出し、何かを小さく唱えると突然僕たちの前に一つの石の扉が現れた。本当に、この間迷宮を探索した時と似たような感じだと思った。
扉は容易く開き、ここが塔の最上階だというのに扉の向こうに広がる景色は塔の一階、入り口の前だ。
そんなこんなで全員揃って町に戻り、今回の依頼者である補佐臣のユージーンさんに事情を説明した後、グレアの身柄はシルフェスト王国の港町エルド、冒険者の宿『白き聖杖亭』で預かると言うことを伝えると、彼はグレアに直接意思確認をし、グレアが同意の意を示すとあっさりと了解した。
「本当はその優れた能力で補佐臣を務めてもらいたいと思いましたが、本人の意向を最も優先させるべしと仰せつかっております故、ウェンドラントとしては彼の意見を尊重致します」
「……」
「それでも、ウェンドラントの民が貴方を差別するようなことはこれからもっと無くなってゆく。どこへ行ってもここは貴方の故郷です。遠慮なくいつでも帰ってこられてくださいね」
「……感謝する」
ユージーンさんの言葉にグレアは少し、ほんの少しだけ微笑んで答えた。
今回の報酬:四人合わせて金貨三十枚と新しい仲間
1
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます
トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。
魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・
なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️
エブリスタにも、掲載しています。
転生悪役兄と秘密の箱庭でxxx生活
かなめのめ
BL
箱庭世界の乙女ゲームに転生した大学生。
ヒロインに意地悪する悪役少女の兄となり、関わりたくないと思っていた。
好奇心で森の中に入るとそこに広がるのはあのゲームで出てきた城だった。
城に住む5人の魔族や聖人達と奇妙な生活を始める事に…
外には人喰いの化け物がうろつく危険な森の中で、逃げ道がなくなった。
悪役兄ポジだったのに、何故か攻略キャラクター達に身も心も愛される事に…
5人の魔族、聖人×悪役人間兄
その愛は無限に箱庭の中に溢れている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる