白き聖杖亭へようこそ!

餅蔵

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赤き竜と白き死神の物語

叡智の塔 8

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 グレアの話を聞き、自分の身の上を明かすことからいつまでも逃げてはいられないと思った。

 信用とは、嘘や誤魔化しを積み重ねるほどに薄れていつかは消えてしまうもので、僕は仲間を信用しているからこそ、自分のことをしっかり改めて話すべきだ。

 宿に戻ってからだとそれぞれやるべき事があったりで、こんなに面々が揃うこともあまり無いということもあるので、ここで覚悟を決めることにした。


「僕、一応名目上は種族がプレインってことになってるけど、多分もうみんな分かってると思うけど実は違うんだ」

「シロ……」


 レオンが心配そうに、僕の体を支えながら声をかけてくれたが、僕はもう一度彼に微笑んで「大丈夫」という意思を伝えると頷いて聞く姿勢を取ってくれた。


「本当の種族としては、ホムンクルス。かつて光の帝国アルバで作られた人造兵器。そして魂は異世界から連れてこられた」

「「「……!」」」


 グレア以外は驚きに目を開く。


「……ってことはよ、シロは……」

「な、何歳なの?」

「私より歳上なのは確実ですぅ!?」


 いや、もっとツッコミどころは沢山あるとおもうのだけれど……全員一番最初に気にするのが年齢とは僕が驚きだ。


「え、っと、625歳……ぐらい。正確には分からないけど」

「ハルスエルフィンより長生きなんですねぇ!」

「スゲー!ってことはシロはもしかして、不老不死ってことなのか?」

「でも数年前あたしが白き聖杖亭に来た時より、シロは大人っぽくなってると思うんだけど」


 ホムンクルスは歳を取らず、どんな傷もたちまちすぐに治ってしまうし、行動不能に陥っても技術者が『修理』すれば問題なく再稼働できる。

 それ故にホムンクルスが『不老不死』であることは間違っていないが、今の僕の体は緩やかであるが時間の制約を受けている。


「僕は一度、体に直接瘴気を浴びてしまって変質してしまったから、ハルスエルフィンと同じぐらいの寿命になってしまったんだ。あと百年ぐらいは生きれると思う」

「瘴気を……シロ様は、つまりイレギュラになったんですかぁ?」

「でもシロからは瘴気の気配もしねェし、人を襲うようなこともしねェ。どういうことなんだ?」

「その戦争の折、神々から人はアーティファクトを授かっただろう。それがシロを蝕み始めていた瘴気を祓ったのではないか?」


 僕はこくりと頷いてグレアの見解が正しいことを示した。


「あと百年……しかない、のか?」

「推定だから僕にも正確には分からない。こんな種族は他に居ないし、僕以外のホムンクルスも全て消えてしまったと聞いているから……」


 僕の体を支えていたレオンが僕をそのまま抱きしめた。顔を見上げると、彼は悲しそうな表情を浮かべている。


「でもほら、分かんないんでしょ?じゃあもっと長生きするかもしれないんじゃない?あたしはもっと早く死ぬだろうし、冒険者稼業なんてそれこそ、いつ死ぬか分からないでしょ」

「そうですよぉレオン様!今大事なのは生きている間にどれだけ楽しい思い出を作っていくかですよぉ!私もあと寿命まであと二百年はあるでしょうが、お姉様との時間を密に密に過ごしていくと決めてるんですからぁ」


 アイリスとソフィアが悲しそうなレオンを慰め、その言葉で少し元気が出たのか、もう一度僕を強く抱きしめて体を離した。


「レイヴンにもこの話はしようと思うんだ。いつまでも秘密にするの、なんだか胸がつっかえる気がしてたから……でもみんな意外と普通に受け入れてるみたいで良かった」


 正直引かれたり、気味悪がられるかもしれないと思っていたのだけれど、みんなが気にしたのはただ寿命についてぐらいだったのに安堵すると、レオンが僕の頭を優しく撫でる。


「当たり前だろ。シロはシロだ。お前の種族がどうであっても関係ねェさ」

「そうそう、むしろシロの頑丈さとか強さの理由が分かってスッキリした」


 レオンとアイリスに同意するようにソフィアと、そしてグレアも力強く頷いた。


「さて、あとはここから出て諸々報告しなきゃね」

「お前たちが扉の封印を解いたおかげで、内側からも扉を開くのが容易になった。すぐに出るとしよう」


 表情は無表情だが、どことなくグレアの口調は嬉しそうだ。ずっとここに閉じ込められていたから、外に出られることは彼にとって喜ばしいことなのだろう。

 グレアがアーティファクトである書物を再び呼び出し、何かを小さく唱えると突然僕たちの前に一つの石の扉が現れた。本当に、この間迷宮を探索した時と似たような感じだと思った。

 扉は容易く開き、ここが塔の最上階だというのに扉の向こうに広がる景色は塔の一階、入り口の前だ。


 そんなこんなで全員揃って町に戻り、今回の依頼者である補佐臣のユージーンさんに事情を説明した後、グレアの身柄はシルフェスト王国の港町エルド、冒険者の宿『白き聖杖亭』で預かると言うことを伝えると、彼はグレアに直接意思確認をし、グレアが同意の意を示すとあっさりと了解した。


「本当はその優れた能力で補佐臣を務めてもらいたいと思いましたが、本人の意向を最も優先させるべしと仰せつかっております故、ウェンドラントとしては彼の意見を尊重致します」

「……」

「それでも、ウェンドラントの民が貴方を差別するようなことはこれからもっと無くなってゆく。どこへ行ってもここは貴方の故郷です。遠慮なくいつでも帰ってこられてくださいね」

「……感謝する」


 ユージーンさんの言葉にグレアは少し、ほんの少しだけ微笑んで答えた。



今回の報酬:四人合わせて金貨三十枚と新しい仲間


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