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異国の女剣客編

第21部分 冒険者ギルド

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 次の日、ギルドに行くと視線を感じた。

 三日前、俺たちに喧嘩を売った子たちだ。
 また何か言われると思ったが、彼らは逃げるようにギルドから出て行った。

「格付けは済んだ」
 なぜか、リザが勝ち誇っていた。

「酷いトラウマを植え付けてしまった。あの時は酔っていたから、加減を間違えたよ」

「ハヤテ、酔って間違いを犯さないでくださいね」
 香が言う。

 君にだけは言われたくないな。
 君の愚行を数えてみるかい?

「香だけは言う資格ない。昨日は子供作るとか言い出した」
 リザが言う。

 香は顔を赤くした。

「それは忘れてください…………」

「さてと…………」
 俺はギルド嬢さんの所に行く。

「どーも、お兄さん、刀鍛冶の件ね」

 先にギルド嬢さんに言われた。
「そうだけど、なんで分かったんですか?」
 
 それを聞くとギルド嬢は不機嫌そうに「気付かないなんて酷いわね」と言った。
 眼鏡を外し、束ねていた髪を解いた。

「あっ…………」

「ギルド嬢兼酒場の給仕のリスネよ。お兄さん」
「ごめん、気付かなかった」

「いいですよ」とリスネさんは笑った。

「実はあまり気にしてないから」

「でも、だったら、昨日酒場で刀鍛冶のことを教えてくれればよかった」
 リザが言う。それに関しては同意見だ。

「あの時は給仕だったから。私、仕事は分けているのよ。それにお兄さんたちには一回、ギルドに来て欲しかったの。はい、これ」

 リスネさんから渡されたのは銅階級Ⅱのメダルが二枚と銀階級Ⅱのメダルが一枚だった。

「昇進、おめでとうごさいます」

「ありがとう。でも、まだ一回クエストをクリアしただけだよ」
「いえいえ、ドレイクを討伐したのだから三階級くらい特進、いえ、一気に金階級にしてもいいくらい」

 俺は彼女が自然に話すから、普通に返答しそうになった。

「…………ドレイク? 俺たちが討伐したのはオーガだよ?」
 それを寸前で思い留まった。

「ギルドがクエストを冒険者に丸投げして、何もしてないと思ってる? ドレイクが人の生活圏に接近しているのは知っていたのよね。それなのにドレイクがいきなり姿を消して、、森を再調査したら、ドレイクが討伐された痕跡があったのよ。討伐の為に金階級の冒険者を招集して、レイドを編成していたのに無駄になっちゃった」

「それだけで、俺たちがドレイクを討伐したことにはならないでしょ」

「ドレイクが出現した方面にクエストへ行っていたのはお兄さんたちだけ。それと一つ、助言をしておきます」
とリスネさんは得意げに言う。

「変装する時は種族も誤魔化した方が良いわよ。ハーフエルフ、ジンブ人なんて目立つ組み合わせ、すぐに特定されちゃう」

 その口調からすると商店にもギルドの情報網は及んでいるらしい。
 ちょっと不用心だったと反省する。

「まぁ、ギルドとしては助かったけど。ドレイクの討伐に戦力を割かなくて良くなったし、強い冒険者は歓迎。お兄さんたちの実力を信じて、特別クエストを頼んじゃうかも」

「特別クエスト?」

「貴族や王族からの極秘クエストなんだけど、成功すれば、大きな後ろ盾を手に入れることが出来るわよ」

「非人道的な頼みじゃなければ、受けるかもね」

「そんなクエストは頼みませんって~~」

 俺はどうかな? と疑問を抱く。

 リスネさんは悪い人には見えないし、俺たちに害をなすつもりは無さそうだ。あったら、とっくに召喚盤が反応している。
 だとしても、奴隷制度が存在する世界だ。
 非人道の基準が違うかもしれない。

「まぁ、今日の所はお近づきの印として、刀鍛冶を紹介するわね。ここから西に行ったところにトレックという村があるの。そこにジンブを旅してきたドワーフがいるわ。その人なら刀を作ってくれると思う。はい、これが地図ね」

 リスネさんはトレック村までの案内地図を渡す。
 ドワーフか。ファンタジーならよく聞く種族だな。
 そして、優れた鍛冶職人として書かれることが多い。
 信憑性はありそうだ。

「香、行ってみる?」

「良いんですか? それにリザちゃんも」
「私は構わない。ハヤテと一緒ならどこでも行く」

「二人ともありがとうございます」

 決まりだ。
 俺たちは二度目の冒険に出ることになった。
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