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砂漠の国編
第182部分 同行者追加
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獣人族との戦争に対する講和の布告は出した。
しかし、それで終わりというわけにはいかない。
今度は獣人族と話し合わないといけない。
「本当にあなた方が直接、行くのですか?」
女王陛下は心配そうに尋ねる。
「まぁ、交渉が決裂した時に襲われても、俺たちなら逃げるくらいは出来ますよ」
「逃げるなど言わず、屈服させても良いぞ」
アイラは不敵に笑った。
さすがにそれは避けたい。
もし、屈服させても遺恨が残れば、いずれ戦いになるかもしれない。
「ハヤテ様、私も同行して宜しいですか?」
女王陛下の提案に俺は驚いた。
「あなたがですか?」
「交渉の際に蛇人族の中で高い地位の立っていた者がいる方が信用をされると思うのですが、どうでしょうか?」
「確かにそうかもしれませんけど、それなら別の高官の方が良いと思います。一国の女王に何かがあったら、大変なことになりますよ」
俺の言葉に対して、女王陛下は首を横に振った。
「私はもう女王陛下でありません。王位はあなたに譲ったじゃないですか」
「えっ? いやいや、俺はすぐに王位から退きましたよ」
「この国の決まりで一度退位した王がもう一度、王位につくことは出来ません」
なんだって?
それは初耳だ。
だとしたら、次の王は誰なんだ?
まさかとは思うが、それが決まるまで俺が王位に着いていなければならない、とか言わないだろうな?
「儂らを騙したのか?」
アイラが静かに言う。
表面上は無表情だったが、怒っているのが分かった。
「アイラさん、誤解しないで欲しいわ。ハヤテ様も王位を退いている。王は別にいるのよ。ねぇ、新しい王様?」
女王陛下、いや、もう女王ではないのだから、パトラティア様と呼ぶべきだろう。
彼女の視線はスタンレンさんに向けられていた。
スタンレンさんは難しい表情で、
「まったくお嬢様にはいつも振り回されてばかりです」
と答えた。
「別に思い付きじゃないわよ。魔王がいなくなって、これからはより優秀な治世者が必要になるわ。私は今ある決まりを変えることは得意かもしれないけど、良い状態を継続させるのは苦手。魔王がいなくなって、私の役割も終わったのよ。余生は自由に生きさせてもらうわ。それに血筋から言えば、あなたの方が王に相応しい血統でしょ? スタンレン叔父様」
「今更、血統を言い出しても仕方のないことでしょう。ですが、あなたはずっと政治と戦争の渦中にいた。今から色々なことを楽しむべきなのかもしれません」
「余生って…………パトラティア様は今、おいくつなんですか?」
と聞いてみる。
「ハヤテ様、女性に年齢を聞くものじゃありませんよ。ですが、そうですね。お答えしましょう。二六です」
二十六歳、見た目はもう少しだけ若く見える。
だとしても、アイラやフィールレイのように見た目で年齢詐欺をしているわけではない。
余生と言うには早い気がした。
てか、俺より年下だし…………
「私は冒険に出るんです。ハヤテ様の話を聞いていたら、私も外の世界を見たくなりました」
パトラティア様は少年のように目を輝かせていた。
「旅は大変なことが多いですよ」
「それはご安心ください。竜人族には及びませんが、私も強靭な身体を持っております。少なくとも人間よりは環境に対応できると断言しましょう」
パトラティア様はもう付いてくる気でいる。
「みんなはどうかな?」
俺はリザたちに意見を聞いてみた。
「反対、って言いたいけど、どうせ、ハヤテはごり押しされたら、負ける」
リザは初めから諦めているようだった。
「俺ってそんなに押しに弱いか?」
俺の疑問にアイラとナターシャが肯定の頷きをした。
「私も勝手についてきた身だ。ハヤテの決定に文句はない」
フィールレイはそう言った。
「それでは宜しんですね、ハヤテ様」
パトラティア様は俺との距離を詰めた。
「わ、分かりました。でも、様付けは止めてください。なんだか、慣れません。それとそんなに丁寧な言葉を使わなくていいですよ」
「でしたら、私のことも気軽にパトラティアとお呼びください。いえ、呼んでくれるかしら?」
俺はスタンレンさんの方を見る。
「彼女の願いを聞き入れてもらえませんか?」
そういうことなら仕方ない。
「よろしく頼むよ、パトラティア」
「こちらこそ、お願いね、ハヤテ」
俺とパトラティアが握手すると三つの視線を感じた。
リザ、アイラ、ナターシャだ。
「どうした、お前たち」
「どうした、じゃなかろうて、結局、女王も攻略しおって…………」
アイラは不満そうに言う。
「攻略って…………それにいつもは余裕の態度を取っていたナターシャまでなんでリザたちの方に立っているんだ?」
「これからは本気でハヤテの隣を狙おうと思って」
という答えが返ってきた。
ナターシャを振り切るのはリザとアイラより大変そうだ。
「ナターシャ、私たちは友達だよな? 私の悲しむことはしないよな?」
リザがナターシャに詰め寄った。
「うん、友達、でもリザちゃんにハヤテを譲ったら、私が悲しいかな? リザちゃんはそれでも心が痛まない?」
ナターシャの声は少し悲しそうだった。
俺はそれが演技だと気付くが、リザはそうでないようで、
「うっ……、それは……」
答えに困り、俯く。
なるほど、ナターシャの方が上手だ。
「けど、最終的にハヤテがリザちゃんを選んだら、私は祝福するよ」
なんでこっちを見る。
こっちにターンを回さないでくれ。
俺はこのターンをスキップする。させてください!
「あんたたちとの旅は面白そうね」
パトラティアはケラケラと笑った。
香たちと別れて、少し静かになったと思ったパーティはまた騒がしくなってきた。
しかし、それで終わりというわけにはいかない。
今度は獣人族と話し合わないといけない。
「本当にあなた方が直接、行くのですか?」
女王陛下は心配そうに尋ねる。
「まぁ、交渉が決裂した時に襲われても、俺たちなら逃げるくらいは出来ますよ」
「逃げるなど言わず、屈服させても良いぞ」
アイラは不敵に笑った。
さすがにそれは避けたい。
もし、屈服させても遺恨が残れば、いずれ戦いになるかもしれない。
「ハヤテ様、私も同行して宜しいですか?」
女王陛下の提案に俺は驚いた。
「あなたがですか?」
「交渉の際に蛇人族の中で高い地位の立っていた者がいる方が信用をされると思うのですが、どうでしょうか?」
「確かにそうかもしれませんけど、それなら別の高官の方が良いと思います。一国の女王に何かがあったら、大変なことになりますよ」
俺の言葉に対して、女王陛下は首を横に振った。
「私はもう女王陛下でありません。王位はあなたに譲ったじゃないですか」
「えっ? いやいや、俺はすぐに王位から退きましたよ」
「この国の決まりで一度退位した王がもう一度、王位につくことは出来ません」
なんだって?
それは初耳だ。
だとしたら、次の王は誰なんだ?
まさかとは思うが、それが決まるまで俺が王位に着いていなければならない、とか言わないだろうな?
「儂らを騙したのか?」
アイラが静かに言う。
表面上は無表情だったが、怒っているのが分かった。
「アイラさん、誤解しないで欲しいわ。ハヤテ様も王位を退いている。王は別にいるのよ。ねぇ、新しい王様?」
女王陛下、いや、もう女王ではないのだから、パトラティア様と呼ぶべきだろう。
彼女の視線はスタンレンさんに向けられていた。
スタンレンさんは難しい表情で、
「まったくお嬢様にはいつも振り回されてばかりです」
と答えた。
「別に思い付きじゃないわよ。魔王がいなくなって、これからはより優秀な治世者が必要になるわ。私は今ある決まりを変えることは得意かもしれないけど、良い状態を継続させるのは苦手。魔王がいなくなって、私の役割も終わったのよ。余生は自由に生きさせてもらうわ。それに血筋から言えば、あなたの方が王に相応しい血統でしょ? スタンレン叔父様」
「今更、血統を言い出しても仕方のないことでしょう。ですが、あなたはずっと政治と戦争の渦中にいた。今から色々なことを楽しむべきなのかもしれません」
「余生って…………パトラティア様は今、おいくつなんですか?」
と聞いてみる。
「ハヤテ様、女性に年齢を聞くものじゃありませんよ。ですが、そうですね。お答えしましょう。二六です」
二十六歳、見た目はもう少しだけ若く見える。
だとしても、アイラやフィールレイのように見た目で年齢詐欺をしているわけではない。
余生と言うには早い気がした。
てか、俺より年下だし…………
「私は冒険に出るんです。ハヤテ様の話を聞いていたら、私も外の世界を見たくなりました」
パトラティア様は少年のように目を輝かせていた。
「旅は大変なことが多いですよ」
「それはご安心ください。竜人族には及びませんが、私も強靭な身体を持っております。少なくとも人間よりは環境に対応できると断言しましょう」
パトラティア様はもう付いてくる気でいる。
「みんなはどうかな?」
俺はリザたちに意見を聞いてみた。
「反対、って言いたいけど、どうせ、ハヤテはごり押しされたら、負ける」
リザは初めから諦めているようだった。
「俺ってそんなに押しに弱いか?」
俺の疑問にアイラとナターシャが肯定の頷きをした。
「私も勝手についてきた身だ。ハヤテの決定に文句はない」
フィールレイはそう言った。
「それでは宜しんですね、ハヤテ様」
パトラティア様は俺との距離を詰めた。
「わ、分かりました。でも、様付けは止めてください。なんだか、慣れません。それとそんなに丁寧な言葉を使わなくていいですよ」
「でしたら、私のことも気軽にパトラティアとお呼びください。いえ、呼んでくれるかしら?」
俺はスタンレンさんの方を見る。
「彼女の願いを聞き入れてもらえませんか?」
そういうことなら仕方ない。
「よろしく頼むよ、パトラティア」
「こちらこそ、お願いね、ハヤテ」
俺とパトラティアが握手すると三つの視線を感じた。
リザ、アイラ、ナターシャだ。
「どうした、お前たち」
「どうした、じゃなかろうて、結局、女王も攻略しおって…………」
アイラは不満そうに言う。
「攻略って…………それにいつもは余裕の態度を取っていたナターシャまでなんでリザたちの方に立っているんだ?」
「これからは本気でハヤテの隣を狙おうと思って」
という答えが返ってきた。
ナターシャを振り切るのはリザとアイラより大変そうだ。
「ナターシャ、私たちは友達だよな? 私の悲しむことはしないよな?」
リザがナターシャに詰め寄った。
「うん、友達、でもリザちゃんにハヤテを譲ったら、私が悲しいかな? リザちゃんはそれでも心が痛まない?」
ナターシャの声は少し悲しそうだった。
俺はそれが演技だと気付くが、リザはそうでないようで、
「うっ……、それは……」
答えに困り、俯く。
なるほど、ナターシャの方が上手だ。
「けど、最終的にハヤテがリザちゃんを選んだら、私は祝福するよ」
なんでこっちを見る。
こっちにターンを回さないでくれ。
俺はこのターンをスキップする。させてください!
「あんたたちとの旅は面白そうね」
パトラティアはケラケラと笑った。
香たちと別れて、少し静かになったと思ったパーティはまた騒がしくなってきた。
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