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南大陸統一編

第184部分 南へ…………

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 今日はとても寝苦しかった。

 タオグナを出発した俺たちは砂漠地帯を抜け、熱帯地帯へ入っている。
 
 この地域に入ってから、夜も暑い。
 そして、今日は特に寝苦しかった……

 なんだろう。
 暑さだけが原因ではない。
 身体を締め付けられている気がする。
 外からの圧力だ。

「一体……!?」

 俺が目を開けるとそこには胸があった。
 はっ、なんで!?

 一番初めに疑ったのはナターシャだ。
 でも、ナターシャなら何というか、もっと優しい気がする。

 じゃあ、リザ? それともアイラ?
 いやいや、あの二人の胸はそんなに柔らかくは無さそう……じゃなくて、大胆な行動は取らないだろう。

「んっ……」

 俺を締め付けている人物が力を強めた。
 確認すると俺の全身に巻き付いている。
 しかも裸で…………

「って、やっぱりパトラティア!?」

 俺は蛇に捕食される獲物の気持ちが少し分かった。
 体が軋んで、呼吸が出来なくなって、意識が遠のく。

「た、助け……」

 このままだと女神に再会することになりそうだ。

「おい、馬鹿蛇、何しているんだ!?」

 リザがパトラティアの頭を思いっきり叩いた。

 すると俺に巻き付いていたパトラティアの尻尾の力が緩む。
 その隙に俺は脱出した。

「痛い。何するのよ……」

 パトラティアはゆっくりと体を起こした。

「それは俺の台詞だ! は本当に死にかけた!」

「大袈裟ね。ちょっとした蛇人流の求愛行動よ」

「捕食行動だと思ったよ!」

 確認すると体中に蛇の鱗型の痕がついていた。

「というか、服を着ろ!」

 寝る時は確かに着ていたはずなのに全部脱いでしまっている。

「こんな暑いのに服なんて着てられないわ。ハヤテたちも脱いだら?」

「脱ぐわけないだろ!」

 俺たちが騒いでいるとテントの外から、
「みんな、起きたなら、食事にしよう」
とナターシャが顔を出した。

 後ろにはフィールレイもいる。
 どうやら、ナターシャの手伝いをしていたようだ。

 最近、フィールレイは積極的にナターシャの料理を手伝っている。

 この前、そのことに対してお礼を言ったら、
「別にナターシャの為じゃない。私も美味しい料理を作ってみたいんだ」
とそっぽを向きながら、言った。

 フィールレイが戦う以外にやってみたいことを見つけたことは良いことだと思う。



 …………で、話を戻す。

 ナターシャは裸のパトラティアを見ても特に反応しなかった。
 というより、先に起きていたなら、俺が締め付けられているのを見ていたはずだ。

「なんで二人は俺を見捨てたんだよ……?」

 仲間じゃないのか?

「いい加減、見慣れたよ。タオグナを出発して二週間、二日に一回は巻き付かれているじゃん」

「そういう慣れは良くないと思うんだ! 次には大変なことになっているかもしれないだろ!」

「次にはハヤテの息子ハヤテがパトラティアのパトラティアと合体しているとか? 別に私は気にしないよ」

 そんなことあってたまるか! 
 俺とナターシャの価値観にはズレがあるらしい。

 てか、今日は本当にヤバかった。
 窒息するところだった。

「大丈夫、私だって加減はしているから」
と裸のままだらしない格好でパトラティアが言う。

「まったく……そういえば、アイラは?」

 テントの中にも外にもいないようだ。

「周囲の探索に出たよ」とナターシャが答える。

「こんな朝早くからかい?」

「多分、探索はついでだよ。ほら、この前、アイラさん、小竜を何匹か手懐けたじゃない。その散歩と訓練が本当の目的じゃない?」

 なるほど、そういうことか。
 前は俺が召喚盤で色々やっていたけど、今はソウルポイントが潤沢じゃない。
 アイラは運よく見つけた小竜を手懐け、索敵をさせる為に色々と仕込んでいるようだ。

「少し時間があれば、竜の渓谷からドレイクを呼び戻しても良いぞ」
とアイラに言われたが、それは断った。

 ドレイクの集団なんて引き連れて「話し合いをしましょう」なんて言っても脅迫にしかならないだろう。

「ほら、朝食にするよ。三人とも顔を洗って、それからパトラティアは服を着てね」

 嫌がるパトラティアにどうにか服を着てもらい、俺たちは朝食へ向かった。
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