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南大陸統一編
第189部分 竜の意外な正体
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ワイバーンに乗って、しばらく進むと地面の色が変わる。
一面が若々しい緑色になった。
「この辺りは昔から私たち兎人が手入れをして、食料を育てていたの。でも、一カ月くらい前にいきなり竜がやって来て…………でも、おかしい。荒されていると思ったけど、なんだか量が増えている気がする」
量が増えてる?
だとしたら、ここを占拠している竜が農業でもやっているということだろうか?
「今はおらんようじゃの」とアイラが言う。
俺たちが地面に降りると一面に太い茎の植物が生えている。
ピュノちゃんはそれの一つを引っこ抜く。
オレンジ色をした球体の野菜だった。
「久しぶりだ」とピュノちゃんは嬉しそうだった。
「竜が現れたら、儂とフィールレイが対処する。じゃから、ハヤテとナターシャは収穫を手伝ってよいぞ」
アイラに言われて、俺とナターシャは収穫に回った。
特に竜が襲ってくる気配はない。
三人で植物を引っこ抜き、次々とカード化していく。
作業は順調だった。
しばらく時間が経ったが、竜が現れる気配はない。
もしかして、例の竜は住処を変えたのでは?
などと思い始めた頃だった。
「来たようじゃの」とアイラが空を見上げた。
俺もつられて、空を見ると巨大な影が近づいてくる。
そして、俺たちの前に着地した。
「お前ら私の土地に勝手に入ったな? 死ぬ覚悟は出来ているのか?」
その声は重かった。
ピュノちゃんは俺の後ろに隠れる。
震えるピュノちゃんに「大丈夫だよ」と声を掛けるが、さすがに怯えていた。
「さてと……」
しゃべるだけの知性があるなら、話し合いでどうにかならないか?
そんなことを考えているとフィールレイが前に出た。
「なんだ、お前だったのか、ゾーラ」
「フィ、フィールレイ様!?」
竜は驚いているようだった。
それに声から重さが消えた。
直後に竜の体が光り、小さくなっていく。
光が消えた後には女性の竜人が現れた。
見た目は三十歳前後だろうか。
そう、見た目だけは……
竜人の見た目と実年齢は本当に当てにならない。
だって、俺の目の前に見た目は少女、中身は俺より年上の実例がいる。
「お前、生きていたんだな?」
フィールレイの口調には侮蔑が混じっていた。
「お許し下さい!」
現れた女性の竜人が懇願する。
「えっと、話が見えてこないんだけど? それとあなた、これを羽織ってもらえないかな」
俺は毛布を取り出して、竜人の女性に渡そうとする。
変身した彼女は裸だった。
さすがにこのまま話すのは目の行き場に困る。
「別に私は人間如きに裸を見られても…………」
「ハヤテの言う通りにせい」
アイラが言う。
「なんだ、お前は? 子供の竜人が生意気な」
……おいおい、あいつ、死んだわ。
などと言う台詞が頭に浮かんだ。
「ほう、おぬしはアイラという名前を知らんか?」
アイラは威圧するように言った。
それを聞いた女性の竜人は真っ青になった。
「まさか、あの『竜使いのアイラ』様!? いえ、なのですか!?」
「おぬしの体を使って、証明して見せようかの?」
言われた竜人の顔色がさらに蒼くなる。
もはや、死人のようだった。
「アイラ、あんまり脅さないくれ。ほら、毛布を羽織ってくれ」
今度は素直に毛布を羽織ってくれた。
「で、フィールレイはこの人と知り合いなの?」
「知り合いと言うか元部下だ。こいつの名前はゾーラ。レイドア攻防戦の最終日前夜に逃走した愚か者だ」
フィールレイの口調は厳しかった。
「そ、それはフィールレイ様があのような狂った作戦の指揮を私にしろと言うから……」
フィールレイを直接見るのが怖いらしく、ゾーラは俯く。
狂った作戦。
それには心当たりがあった。
リザードマンたちを使った自爆特攻作戦だ。
他者の命をおもちゃとしか思っていないあの魔王の凶行。
「だとしても、言われたことをするのが軍人だ。お前が逃げたということは他の者がその任に当たったということだぞ」
失礼ながら、俺は久しぶりにフィールレイがまともに見えてしまった。
俺たちの旅に着いてきてからはアイラに執着するヤベー奴になっていたから忘れていたけど、竜人族を束ねる四臣の一人だったんだな、と思い出す。
「さらに他の種族の食料を奪うとはどういうことだ?」
フィールレイの追及は止まらなかった。
「逃走した私はもうフィールレイ様の元へは戻れません。だから、別の土地で暮らそうと…………」
「その結果、弱い立場の者たちから食料を奪ったのか。竜人族が情けない。弁解の余地はない。その首を落としてやる」
「そんな…………」
ゾーラは絶望し、膝を付く。
逃げたり、戦く素振りを見せないのはそれだけ力の差があるということだろう。
フィールレイは自分の魔力で『竜刀』を作り、ゾーラに突きつけた。
一面が若々しい緑色になった。
「この辺りは昔から私たち兎人が手入れをして、食料を育てていたの。でも、一カ月くらい前にいきなり竜がやって来て…………でも、おかしい。荒されていると思ったけど、なんだか量が増えている気がする」
量が増えてる?
だとしたら、ここを占拠している竜が農業でもやっているということだろうか?
「今はおらんようじゃの」とアイラが言う。
俺たちが地面に降りると一面に太い茎の植物が生えている。
ピュノちゃんはそれの一つを引っこ抜く。
オレンジ色をした球体の野菜だった。
「久しぶりだ」とピュノちゃんは嬉しそうだった。
「竜が現れたら、儂とフィールレイが対処する。じゃから、ハヤテとナターシャは収穫を手伝ってよいぞ」
アイラに言われて、俺とナターシャは収穫に回った。
特に竜が襲ってくる気配はない。
三人で植物を引っこ抜き、次々とカード化していく。
作業は順調だった。
しばらく時間が経ったが、竜が現れる気配はない。
もしかして、例の竜は住処を変えたのでは?
などと思い始めた頃だった。
「来たようじゃの」とアイラが空を見上げた。
俺もつられて、空を見ると巨大な影が近づいてくる。
そして、俺たちの前に着地した。
「お前ら私の土地に勝手に入ったな? 死ぬ覚悟は出来ているのか?」
その声は重かった。
ピュノちゃんは俺の後ろに隠れる。
震えるピュノちゃんに「大丈夫だよ」と声を掛けるが、さすがに怯えていた。
「さてと……」
しゃべるだけの知性があるなら、話し合いでどうにかならないか?
そんなことを考えているとフィールレイが前に出た。
「なんだ、お前だったのか、ゾーラ」
「フィ、フィールレイ様!?」
竜は驚いているようだった。
それに声から重さが消えた。
直後に竜の体が光り、小さくなっていく。
光が消えた後には女性の竜人が現れた。
見た目は三十歳前後だろうか。
そう、見た目だけは……
竜人の見た目と実年齢は本当に当てにならない。
だって、俺の目の前に見た目は少女、中身は俺より年上の実例がいる。
「お前、生きていたんだな?」
フィールレイの口調には侮蔑が混じっていた。
「お許し下さい!」
現れた女性の竜人が懇願する。
「えっと、話が見えてこないんだけど? それとあなた、これを羽織ってもらえないかな」
俺は毛布を取り出して、竜人の女性に渡そうとする。
変身した彼女は裸だった。
さすがにこのまま話すのは目の行き場に困る。
「別に私は人間如きに裸を見られても…………」
「ハヤテの言う通りにせい」
アイラが言う。
「なんだ、お前は? 子供の竜人が生意気な」
……おいおい、あいつ、死んだわ。
などと言う台詞が頭に浮かんだ。
「ほう、おぬしはアイラという名前を知らんか?」
アイラは威圧するように言った。
それを聞いた女性の竜人は真っ青になった。
「まさか、あの『竜使いのアイラ』様!? いえ、なのですか!?」
「おぬしの体を使って、証明して見せようかの?」
言われた竜人の顔色がさらに蒼くなる。
もはや、死人のようだった。
「アイラ、あんまり脅さないくれ。ほら、毛布を羽織ってくれ」
今度は素直に毛布を羽織ってくれた。
「で、フィールレイはこの人と知り合いなの?」
「知り合いと言うか元部下だ。こいつの名前はゾーラ。レイドア攻防戦の最終日前夜に逃走した愚か者だ」
フィールレイの口調は厳しかった。
「そ、それはフィールレイ様があのような狂った作戦の指揮を私にしろと言うから……」
フィールレイを直接見るのが怖いらしく、ゾーラは俯く。
狂った作戦。
それには心当たりがあった。
リザードマンたちを使った自爆特攻作戦だ。
他者の命をおもちゃとしか思っていないあの魔王の凶行。
「だとしても、言われたことをするのが軍人だ。お前が逃げたということは他の者がその任に当たったということだぞ」
失礼ながら、俺は久しぶりにフィールレイがまともに見えてしまった。
俺たちの旅に着いてきてからはアイラに執着するヤベー奴になっていたから忘れていたけど、竜人族を束ねる四臣の一人だったんだな、と思い出す。
「さらに他の種族の食料を奪うとはどういうことだ?」
フィールレイの追及は止まらなかった。
「逃走した私はもうフィールレイ様の元へは戻れません。だから、別の土地で暮らそうと…………」
「その結果、弱い立場の者たちから食料を奪ったのか。竜人族が情けない。弁解の余地はない。その首を落としてやる」
「そんな…………」
ゾーラは絶望し、膝を付く。
逃げたり、戦く素振りを見せないのはそれだけ力の差があるということだろう。
フィールレイは自分の魔力で『竜刀』を作り、ゾーラに突きつけた。
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