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南大陸統一編
第190部分 ハヤテの提案
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「フィールレイ、待ってくれ」
「ハヤテ、これは竜人族の問題だ。それにこいつがいなくなれば、風兎人族も助かるだろう」
「そうかもしれない。それが確実だ。俺はいつも甘い。それは分かっている。でも、戦い以外で誰かが死ぬのは避けたいんだ。ゾーラ、あなたには聞きたいことが二つある」
「なんでしょうか?」と俺を見たゾーラは救いを求めているようだった。
「これだけ広い地域を一人で管理していたのかい?」
「はい、私の祖母は巨人族でした。農業には覚えがあります」
巨人族。
確か、戦いを好まない農作と狩りが好きな種族だっけ。
「じゃあ、もう一つ。あなたは風兎人族と共生をするつもりはないかい?」
「風兎人との共生ですか?」
「おい、ハヤテ、勝手なことを言うな。こいつは責任から逃げるような奴だ。信用には値しない」
フィールレイが言う。
「確かに軍人としては駄目だろうね。だけど、俺だって自分の仲間を特攻させる指揮を執れなんて言われたら、逃げ出すかもしれない。逃げるのだって度胸がいるんだよ。風兎人は迷惑しているだろう。でも、直接、村を襲うようなことはしなかった。それに竜人族の力があれば、商人を襲って、金品や食料を取ったほうが楽だったろうに…………」
「誰かを殺すのは嫌いです。さっきも本当に殺すつもりはなくて、脅せば逃げてくれると思って…………」
その言葉は本心なんだろう。
「じゃあ、風兎人との共生も考えてくれるかい? ここの食料がないと風兎人たちは困るんだよ」
「兎人たちは私を許してくれるでしょうか?」
「それは分からない。でも、君はこのままでいいのかい? たった一人でずっといるわけにもいかないだろう? 俺が風兎人たちと交渉してみる」
「…………」
「許してくるかは分からない。でも、歩み寄って見てもいいじゃないかな?」
すると、ゾーラは少し考えて「分かりました」と言った。
「待ってくれ。軍紀を乱したこいつの罪は消えないぞ」
フィールレイが指摘する。
「見逃してやってくれないか?」
「駄目だ」とフィールレイは退かなかった。
困ったな、と思っていると
「フィールレイ、儂からも頼めないかの?」
アイラは真面目な表情だった。
それを見て、フィールレイは戸惑う。
さらにアイラは続けた。
「もし、この者の罪を問うならば、重要拠点の『ジュラディーズ』を守れず、自身の責務を放棄した儂の罪はさらに重いじゃろう。ただの死罪では済まん罪じゃ。その者を殺す前に儂が処断されるべきではなかろうか?」
「そ、それは……」
アイラはこういう時に狡猾だ。
フィールレイはアイラが絡むと軍規より、感情を優先する。
さらにアイラは、
「じゃが、儂はまだ死にとうない。大切な者と共に生きるという目標が出来たからの」
と続け、俺を見た。
「フィールレイ、戦争も終わり、どうにか竜人族も生き延びることが出来た。恩赦というわけにはいかないかの」
「狡い。そんなことを言われたら、私に選択はない。……ゾーラ」
「は、はい」
「次はない。もし、お前が次に誰かへ迷惑をかけた時は私がお前を処断する。そのことをよく覚えておけ」
「はい!」
ゾーラは深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
とゾーラは俺とアイラにもお礼を言う。
「そんなにかしこまらなくていいよ。君の方が年上でしょ?」
竜人族あるあるには慣れてきている。
「いえ、私の方が年下だと思います」
えっ、俺ってそんなに老けて見えるか?
「ハヤテ、竜人族が全員、お前より年上ってわけではない。こいつは確か二十歳くらいだ」
フィールレイの言葉にゾーラは頷いた。
「えっ、そうなの!?」
これは逆のパターンだ。
見た目以上に大人に見える。
それに俺よりも背は高い。
見た目とかは巨人族の血が影響しているのだろうか?
「えっと、そうなんだ……ところで君が育てた野菜を勝手に採ってごめん」
「大丈夫です。育てるのが好きで増やし過ぎたので、持っていってもらって大丈夫です」
「ありがとう、これで風兎人族の食糧問題も解決するよ。…………ところでナターシャ、ごめん、君の服をまた一着、貸してくれないかい?」
「えっ、ハヤテが着るの?」
「着ないよ! ゾーラに着てもらうんだよ!」
村のみんなに毛布一枚のゾーラを紹介するわけにもいかないだろう。
「良いけど、今日だけで私の服がどんどん減っていくね。それにゾーラさんには私の服でも小さくない?」
「服はまた買い足すから勘弁して。大きさは……そうだね。寝巻のゆったりしたやつなら、着れるかな」
ゾーラに試着してもらい、どうにか着ることが出来た。
「さて、村へ一旦、帰ろうか」
俺たちはゾーラを連れて、村へと帰還する
そこでブルーノさんに事情を説明した。
「ゾーラは人を殺すのが嫌で戦争から逃げるような性格です。根は温和なので、きちんと話し合えば、分かり合えると思います。それに農作がとても得意です。それはあなた方にもありがたいことじゃないでしょうか?」
「それが本当なら、そうですが…………」
ゾーラ自身も土地を占拠したところを謝る。
風兎人たちは戸惑い、歓迎されている雰囲気はなかった。
交渉するなんて調子の良いことを言ったが、これ以上、何を言えばいいかと考える。
そこにピュノちゃんが、
「あのね。ゾーラさんは私たちの食料を増やしてくれていたよ。前よりもたくさんカブジン(オレンジ色の野菜のこと)が出来てた。大丈夫、悪い人じゃないよ」
ピュノちゃんがゾーラを擁護したので、大人たちも真正面から拒絶することは出来なかった。
ぎこちないが、互いに少しだけ歩み寄る。
「大丈夫なのか?」とリザが言う。
「誰だって初めは探り探りだよ。リザだって、初めて俺と会った時は警戒していたじゃないか」
「それはあんな森の中でいきなり人に会ったからだ。今回は違う。加害者と被害者だ。マイナスから始める」
「マイナスから始まったから、どうだというんじゃ」
アイラが口を挟んだ。
「おぬしらと儂の出会いなど、とんでもないマイナスじゃった。それが今ではこうやって共に旅をしておる。関係など、取り返しのつかんことをせん限りはどうにかなるもんじゃよ」
「全員がアイラみたいになれないし、ハヤテみたいに寛大じゃない。……けど、色々な種族が分かり合えるのは事実だ。この村もそうなればいいな」
リザの言葉に俺は「そうだね」と返した。
「ハヤテ、これは竜人族の問題だ。それにこいつがいなくなれば、風兎人族も助かるだろう」
「そうかもしれない。それが確実だ。俺はいつも甘い。それは分かっている。でも、戦い以外で誰かが死ぬのは避けたいんだ。ゾーラ、あなたには聞きたいことが二つある」
「なんでしょうか?」と俺を見たゾーラは救いを求めているようだった。
「これだけ広い地域を一人で管理していたのかい?」
「はい、私の祖母は巨人族でした。農業には覚えがあります」
巨人族。
確か、戦いを好まない農作と狩りが好きな種族だっけ。
「じゃあ、もう一つ。あなたは風兎人族と共生をするつもりはないかい?」
「風兎人との共生ですか?」
「おい、ハヤテ、勝手なことを言うな。こいつは責任から逃げるような奴だ。信用には値しない」
フィールレイが言う。
「確かに軍人としては駄目だろうね。だけど、俺だって自分の仲間を特攻させる指揮を執れなんて言われたら、逃げ出すかもしれない。逃げるのだって度胸がいるんだよ。風兎人は迷惑しているだろう。でも、直接、村を襲うようなことはしなかった。それに竜人族の力があれば、商人を襲って、金品や食料を取ったほうが楽だったろうに…………」
「誰かを殺すのは嫌いです。さっきも本当に殺すつもりはなくて、脅せば逃げてくれると思って…………」
その言葉は本心なんだろう。
「じゃあ、風兎人との共生も考えてくれるかい? ここの食料がないと風兎人たちは困るんだよ」
「兎人たちは私を許してくれるでしょうか?」
「それは分からない。でも、君はこのままでいいのかい? たった一人でずっといるわけにもいかないだろう? 俺が風兎人たちと交渉してみる」
「…………」
「許してくるかは分からない。でも、歩み寄って見てもいいじゃないかな?」
すると、ゾーラは少し考えて「分かりました」と言った。
「待ってくれ。軍紀を乱したこいつの罪は消えないぞ」
フィールレイが指摘する。
「見逃してやってくれないか?」
「駄目だ」とフィールレイは退かなかった。
困ったな、と思っていると
「フィールレイ、儂からも頼めないかの?」
アイラは真面目な表情だった。
それを見て、フィールレイは戸惑う。
さらにアイラは続けた。
「もし、この者の罪を問うならば、重要拠点の『ジュラディーズ』を守れず、自身の責務を放棄した儂の罪はさらに重いじゃろう。ただの死罪では済まん罪じゃ。その者を殺す前に儂が処断されるべきではなかろうか?」
「そ、それは……」
アイラはこういう時に狡猾だ。
フィールレイはアイラが絡むと軍規より、感情を優先する。
さらにアイラは、
「じゃが、儂はまだ死にとうない。大切な者と共に生きるという目標が出来たからの」
と続け、俺を見た。
「フィールレイ、戦争も終わり、どうにか竜人族も生き延びることが出来た。恩赦というわけにはいかないかの」
「狡い。そんなことを言われたら、私に選択はない。……ゾーラ」
「は、はい」
「次はない。もし、お前が次に誰かへ迷惑をかけた時は私がお前を処断する。そのことをよく覚えておけ」
「はい!」
ゾーラは深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
とゾーラは俺とアイラにもお礼を言う。
「そんなにかしこまらなくていいよ。君の方が年上でしょ?」
竜人族あるあるには慣れてきている。
「いえ、私の方が年下だと思います」
えっ、俺ってそんなに老けて見えるか?
「ハヤテ、竜人族が全員、お前より年上ってわけではない。こいつは確か二十歳くらいだ」
フィールレイの言葉にゾーラは頷いた。
「えっ、そうなの!?」
これは逆のパターンだ。
見た目以上に大人に見える。
それに俺よりも背は高い。
見た目とかは巨人族の血が影響しているのだろうか?
「えっと、そうなんだ……ところで君が育てた野菜を勝手に採ってごめん」
「大丈夫です。育てるのが好きで増やし過ぎたので、持っていってもらって大丈夫です」
「ありがとう、これで風兎人族の食糧問題も解決するよ。…………ところでナターシャ、ごめん、君の服をまた一着、貸してくれないかい?」
「えっ、ハヤテが着るの?」
「着ないよ! ゾーラに着てもらうんだよ!」
村のみんなに毛布一枚のゾーラを紹介するわけにもいかないだろう。
「良いけど、今日だけで私の服がどんどん減っていくね。それにゾーラさんには私の服でも小さくない?」
「服はまた買い足すから勘弁して。大きさは……そうだね。寝巻のゆったりしたやつなら、着れるかな」
ゾーラに試着してもらい、どうにか着ることが出来た。
「さて、村へ一旦、帰ろうか」
俺たちはゾーラを連れて、村へと帰還する
そこでブルーノさんに事情を説明した。
「ゾーラは人を殺すのが嫌で戦争から逃げるような性格です。根は温和なので、きちんと話し合えば、分かり合えると思います。それに農作がとても得意です。それはあなた方にもありがたいことじゃないでしょうか?」
「それが本当なら、そうですが…………」
ゾーラ自身も土地を占拠したところを謝る。
風兎人たちは戸惑い、歓迎されている雰囲気はなかった。
交渉するなんて調子の良いことを言ったが、これ以上、何を言えばいいかと考える。
そこにピュノちゃんが、
「あのね。ゾーラさんは私たちの食料を増やしてくれていたよ。前よりもたくさんカブジン(オレンジ色の野菜のこと)が出来てた。大丈夫、悪い人じゃないよ」
ピュノちゃんがゾーラを擁護したので、大人たちも真正面から拒絶することは出来なかった。
ぎこちないが、互いに少しだけ歩み寄る。
「大丈夫なのか?」とリザが言う。
「誰だって初めは探り探りだよ。リザだって、初めて俺と会った時は警戒していたじゃないか」
「それはあんな森の中でいきなり人に会ったからだ。今回は違う。加害者と被害者だ。マイナスから始める」
「マイナスから始まったから、どうだというんじゃ」
アイラが口を挟んだ。
「おぬしらと儂の出会いなど、とんでもないマイナスじゃった。それが今ではこうやって共に旅をしておる。関係など、取り返しのつかんことをせん限りはどうにかなるもんじゃよ」
「全員がアイラみたいになれないし、ハヤテみたいに寛大じゃない。……けど、色々な種族が分かり合えるのは事実だ。この村もそうなればいいな」
リザの言葉に俺は「そうだね」と返した。
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