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第1章 超イケメン、死す!

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 俺の名前は龍尖寺魔堕斗りゅうせんじまおと。21歳。イケメンだ。

 普通、自己紹介するときは職業などを紹介するものだが、俺の場合は「イケメン」と言っておけば、それで事足りる。なぜなら、マジでイケメンなのだ!  
 
 世の中の普通の男は、たいてい自分をイケメンだと思っている。だが、俺はそのような普通のイケメンを凌駕しているのだ。

 もし数十億の自称イケメンが俺を見たら、今まで自分をイケメンだと自惚れていたことを恥じることだろう。だが、それは許そう。なぜなら、俺はそのような下々の民の勘違いでさえ受け入れて許すことができる無限の寛大さを併せ持つ最高のイケメンだからだ。

 ただ、イケメンも苦労が絶えない。

 俺に初めてカノジョができたのは1歳になるかならないかの頃だった。それ以来、女に困ったことはない。いや、もう女がいて当然なのだ。

 今まで5桁の数の女と付き合ってきた。別れてもすぐに新しい女が転がり込んでくる。なぜなら、俺は神さえ認めるイケメンだからだ。

 神さえ己を恥じ入るほどのイケメンの俺が、近所のコンビニへ買い物へ行くだけで、いつも数千人の女から声をかけられる。その度に、俺をめぐって数千人の女たちが争いを始める。それがまた鬱陶しくて仕方がない。
 
 そういえば、まだ俺の職業を話していなかったな。俺の職業は、無職だ。女が貢いでくれるから働く必要がない。ちなみに平均年収は69億円だ。「金は必要ない」といつも言っているのに、女たちはすぐに俺の口座に現金を振り込んでくる。

 ある国の王女は50億円を振り込んできた。さすがにそれだけ振り込まれたら無視するわけにはいかない。付き合うつもりはなかったが、6時間だけカノジョにしてやったよ。

 世界の民たちが認める最高のイケメンに生まれて、俺は感謝している。神にではない。俺に、だ。

 下々の民の中には、まったくモテない男がいるらしい。正直、俺はそんな男が羨ましい。俺は女を見飽きるほど、抱き飽きるほどにモテる。女を抱くことに、一時的にせよ、飽きることがないモテない男が羨ましい。そんなに女が欲しければ、俺にひれ伏して願えば、俺の女を3000人ほどくれてやるのに。たった3000人ばかりで申し訳ないが。

 とにかく、俺はイケメンだ。3時間に1回は、女とやっている。食欲、性欲、金銭欲、権力欲、そういった欲望はすべて女が俺の元に運んで満たしてくれる。たまには女がいない一時間を過ごしてみたいものだ。

 願わくば、来世は女がいない世界に生まれ変わらんことを!


 そういえば、ある日、ふと考えたことがある。

 女にモテることが人生そのものになっている俺の前世は、いったいどのようなものだったのだろうか? これだけは、いくら思い出そうとしても思い出せない。だが、予想はできる。

 当然、俺の前世は、大帝国の主である皇帝に違いない。

 絶大な権力を手にした偉大な皇帝であった俺は、世界中から集めた美女たちを後宮に住まわせていたに違いない。

 まったく、輪廻転生も女だらけだ。まるで、女という名の快楽の絨毯の上を歩き続けているようだ。この宇宙の瞬きすべてが俺の女の数と言っても過言ではない。

 そんな超イケメンな俺に、ある日、意外な出来事が起きた。


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