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1日目

第7話 一日目:晩酌:ワイン編@ホテル

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 花火を見終え、ケーキもチューハイも空になったあと、私と親友は晩酌をした。
 
 三百七十五ミリリットルのワインボトルが三本と、水産店やチーズ屋で購入した数々のおつまみ。

 ワインは、ハスカップのプレミアムスイートワイン、白ワイン「余市」、白ワイン「完熟ナイヤガラ2020」だ。
 ちなみに、私が白ワインの甘口が一番好きなので、どれも甘いものを選んだ。

 「ハスカップワイン」は、薄い紅色をしていて見ているだけで楽しい。ラベルもおしゃれで美意識の高いOLになった気分だ。

 さて開けようじゃないかとしたときに、蓋がコルクであることに気付いた。私たちはフロントでワインオープナーを借りて、開けようとするのだが……

「え、これどうやって開けるん」
「うわあ……こんなワインオープナーで開けたことないよ私……」

 フロントが貸してくれたものは、釘みたいなところがグルグルになっているだけの、原始的なワインオープナーだった。
 とりあえずコルクにグルグルを突き刺して、引っ張ってみた。開かない。硬い。

 親友にボトルを持ってもらい、私がオープナーを引っ張るが、私がバカ力すぎて親友が椅子から浮き上がっている。
 開かなさすぎるのがツボに入り、私たちはゲラゲラ笑った。笑っていたら力なんて入らないので、さらに抜けなくなって爆笑する。泥沼だ。一生抜けないぞこれ。

 どのくらい経っただろうか。コルクが抜けたときには、私たちは笑いすぎてぐったりしていた。

 「ハスカップワイン」を一口飲むと、フルーティーな味わいが口の中に広がる。ほぼジュースだ。甘くておいしい。ほぼジュース。いくらでも飲める。

 あっという間に一本目が空になったので、次は「余市」をグラスに注ぎ、顔に近づけ香りを確かめる(幸いなことに、「余市」はキャップだったので簡単に開いた)。
 驚いた。白ブドウの香りそのままだ。こんなに〝ザ・白ブドウ!〟な香りを漂わせている白ワインは初めてだ。
 飲みやすそうな香りだったが、飲んでまた驚いた。
 甘口は甘口なのだが、ちゃんと〝酒〟の重みがある。
 見た目は爽やか大学生なのに、実は夜に暗殺業をしていた、くらいの衝撃だ。香りと味のギャップに恋に落ちそうだ。

 この二本を飲んだ時点で、酒に弱い私はベロベロに酔っていた――ほぼ「余市」のせいなのだが。
 楽しい。親友にウザ絡みをしながらげらげら笑う。なんだこの幸せな時間は。永遠に続け。

 だが、せっかくだから残りの白ワインも飲もうじゃないかということになり、最後の「完熟ナイヤガラ2020」も開けることにした。
 これの香りは普通の白ワインだったが、味は「余市」よりも甘くて飲みやすい。気付いたら空になっていた。
 
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