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1日目

第8話 一日目:晩酌:つまみ編@ホテル

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 私たちは、白ワインを飲んでいる間、新千歳空港で調達したつまみをつまんでいた。
 佐藤水産の鮭のルイベ漬け、北海道十勝ペケレ、白カビチーズ「ベルネージュ」、そして北海合鴨の生ハム。どうだ、どれもうまそうだろう。

 佐藤水産の鮭のルイベ漬けとは、北海道産の天然鮭といくらを「鮭醤油」が入ったタレに漬け込んだ珍味であり、親友のイチオシ商品だ。
 しっかり漬け込まれたのが分かる香りに涎が止まらん。
 私は、こま切れになった鮭の中でも大きめのものを選って、口の中に放り込んだ。

 うまい……。漬け特有のねっとりとした触感がたまらん。肉厚でむちむちしてやがる。醤油の味が沁み込んでいる重厚な鮭の味に、イクラをプチッと弾けさせて流れ出る液体のアクセントが素晴らしい。ベースドラムとハイハットのような夫婦感。

「うめぇ……」
「でしょー? ふふん」

 隣で親友がドヤ顔をしている。実は彼女は北海道出身なのだ。北海道の食べ物を褒められると、彼女も嬉しいらしい。そりゃそうだ。私がもし北海道出身だったとしても、そんな顔をする。

 次に、北海道十勝ペケレ。これはヤギ乳百%で作られている、ハードタイプのチーズだ。色は粉雪のように白く、表面だけがほんのり黄みががっている。
 ほろほろと崩れる触感に、ヤギ乳特有のほんのちょっとの苦みがうまい。一生食べていたい。
 あと表面の少し硬い部分が、特別感がありよりおいしく感じた。アイスやヨーグルトの蓋に付着しているアレの特別感に似ている。あそこが一番おいしいだろう、そういう感じだ。

 続いて白カビチーズ「ベルネージュ」も一口。
 白カビチーズが大好きな私だが、今までスーパーで売っているものしか食べたことがなかったので、余計に衝撃を受けた。
 余計な臭みがなく、さっぱりとして食べやすいのに、ちゃんと唯一無二の長所を伝える自己主張がある。こいつ絶対就活で無双できるだろ。

 そして最後に北海合鴨の生ハムだ。生ハムは豚や鶏くらいしか食べたことがないので、私も親友もワクワクしながら口に入れた。

「んおっ」
「んっ!」

 私と親友の時が止まった。
 なんだこれ。なんだこれ!!

 合鴨の旨みが凝縮されている。あのうまい脂がよりうまくなっている。それに……なんだかスパイシーな味がするぞ。味付けをしているのだろうか。

「やばいこれおいしい」

 親友も私も大興奮。今日買ったおつまみはどれも美味しかったが、合鴨の生ハムは群を抜いていた。

 北海合鴨の生ハムは、北海合鴨に白カビをまとわせて熟成させた生ハムだ。口どけの良い熟成された脂と深い旨みは、北海合鴨ならではらしい。

 一切れで、スーパーで買う生ハム五枚分の満足感。値段は少々高いので買う時は悩んだが、この味と満足感では納得だ。

 私と親友は、夜中の三時半を回るまで、最高のワインとつまみで晩酌をしながら話に花を咲かせていた。
 こうして北海道旅行一日目が終わった。自分でも思う。食べすぎだろ。
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