忘れられた姫と猫皇子

kotori

文字の大きさ
25 / 71

アビ

しおりを挟む


 フェリは夢を見ていた。
 
 真っ暗の誰もいない部屋。

 窓から月のあかりが差し込むと、窓辺は少し明るいけれど、部屋の奥はもっともっと暗くなる。

 フェリのベッドの上は闇に沈んでいる。

 そこへぽうっと灯りが灯った。
 オレンジ色の優しい瞬き。
 フェリが傍によると灯りはフェリの周りをくるくる回った。

 フェリはいつの間にかお人形を抱いていた。小さい頃持っていたお人形だ。オレンジ色のドレスの小さな女の子。

 そうだ、大好きでいつも一緒だった。
 いつの間にか、回りの人達がいなくなってしまって、館で一人だけになっても、そのお人形だけは一緒だった。

 話しかけてくれる人が誰もいなくても、話しかける相手が誰もいなくても、その人形がいてくれたので、フェリはおしゃべりすることができた。一緒に絵本を読んだり、勉強をしたり、歌も歌った。

 不思議なことに、人形はフェリの話を分かっていて、時々は返事をくれているような気もした。

 あまりにどこへ行くにも持ち歩いていたので、しまいにはぼろぼろになってしまった。

 いなくなってしまったのは、いつだっただろう。
 あの時は随分泣いたっけ。

 そうだ。
 さっきの瞬きは、フェリがキラキラと呼んでいた光だ。
 キラキラと初めて会ったのは、泣きながら人形を館中探し回っていたときかもしれない。
 夢の中で、あの人形はきれいなままだった。
 オレンジ色のドレスも、お揃いのリボンも、金色の髪も……。
 そう、あの人形の名前は……。

 
 ……フェリは目を開けた。

 自分のベッドの上だった。

 ……あれ?
 窓から明るい日差しが差し込んでいる。
 まだ明るいのにどうして寝ているんだろう……。

 フェリが起き上がろうとすると、

「フェリ!」

 明るく澄んだ声とともに、矢のような光がフェリの胸へと飛んできた。
 驚いたフェリが短い悲鳴をあげると、

「わたし、フェリ! わたし!」

 柔らかな声が聞こえた。

「え? え?」
 フェリの前に小さな光の球が浮かび上がる。

「……ア、アビ?」

 それはちょうど今、夢に見ていた人形だった。
 オレンジ色のドレス、赤茶の髪、榛色の目……。

「アビっ!!」

 フェリはすごい勢いで起き上がった。

「アビ? ほんとに? アビなの?」
 小さい頃の記憶の通り、大好きなアビだった……。けど……。
「あれ? アビ、ちょっと違う? 動いてる……、動いてるね……」
 ていうか、飛んでる???
 フェリはあんぐり口を開けた。
 せ、せ背中に羽が……。

 アビは金色の小さな羽を羽ばたかせながら、フェリの前でくるりくるりと回転して見せた。

「わたしはね、元々エイディーン様からこぼれた光なの。前はこの人形の中でフェリと遊んでたのよ。
 人形が無くなってからは、ただの光にしかなれなかったけど、さっきエイディーン様がいらして、たくさん光を置いていってくれたので、こうして形になれたの」

 わあああ。

 フェリはアビに会って、小さな子供の頃のような気持ちになった。

「アビ、アビアビアビー。会いたかったよー。どうしていなくなっちゃったの?
 探したんだよー」
 フェリはうわああああん、と泣きながらアビを昔のように抱きしめた。

「ごめんね、フェリ」
 アビはフェリの顔に小さな頭を寄せた。

「うん、うん、うん」
 フェリはやっぱり子供の頃のように、頭をこくこくさせた。

 とそこに、もっと大きな手がフェリの頭を撫でた。グリッグだった。
「よかったな」
 グリッグは優しそうな顔でそう言うと、そのあとすっと真顔に戻った。

「でな、フェリ、感動の再会の所悪いが、どうも、お客が来たようだぞ……」
 そう言いながら、グリッグはフェリの前に手鏡を持ってきた。
 フェリが覗き込むと、不思議なことにフェリの顔は映らず、きれいな女の人が二人見えた。

 今、庭を通って玄関へ向かっている。フェリ、これは知ってる人か?」
「……うう……ん」
 フェリは首をかしげた。
 
 知らない……と思う。けど、なんとなく見たことがあるような……。
 と、意外なことにランディが口を開いた。

「──知ってる」

 グリッグが驚いて振り返る。

「その、水色のドレスに茶髪ブルネットの方、ロセター伯爵令嬢だ」
「へええ、伯爵令嬢」
 グリッグが 驚いた。

「その後ろは知らん」
「そうか……、しかし伯爵令嬢がなぜ?……」
 グリッグは首を傾げ、フェリを見た。
「まー、とりあえず会ってみるか」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された没落寸前の公爵令嬢ですが、なぜか隣国の最強皇帝陛下に溺愛されて、辺境領地で幸せなスローライフを始めることになりました

六角
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、王立アカデミーの卒業パーティーで、長年の婚約者であった王太子から突然の婚約破棄を突きつけられる。 「アリアンナ! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」 彼の腕には、可憐な男爵令嬢が寄り添っていた。 アリアンナにありもしない罪を着せ、嘲笑う元婚約者と取り巻きたち。 時を同じくして、実家の公爵家にも謀反の嫌疑がかけられ、栄華を誇った家は没落寸前の危機に陥ってしまう。 すべてを失い、絶望の淵に立たされたアリアンナ。 そんな彼女の前に、一人の男が静かに歩み寄る。 その人物は、戦場では『鬼神』、政務では『氷帝』と国内外に恐れられる、隣国の若き最強皇帝――ゼオンハルト・フォン・アドラーだった。 誰もがアリアンナの終わりを確信し、固唾をのんで見守る中、絶対君主であるはずの皇帝が、おもむろに彼女の前に跪いた。 「――ようやくお会いできました、私の愛しい人。どうか、この私と結婚していただけませんか?」 「…………え?」 予想外すぎる言葉に、アリアンナは思考が停止する。 なぜ、落ちぶれた私を? そもそも、お会いしたこともないはずでは……? 戸惑うアリアンナを意にも介さず、皇帝陛下の猛烈な求愛が始まる。 冷酷非情な仮面の下に隠された素顔は、アリアンナにだけは蜂蜜のように甘く、とろけるような眼差しを向けてくる独占欲の塊だった。 彼から与えられたのは、豊かな自然に囲まれた美しい辺境の領地。 美味しいものを食べ、可愛いもふもふに癒やされ、温かい領民たちと心を通わせる――。 そんな穏やかな日々の中で、アリアンナは凍てついていた心を少しずつ溶かしていく。 しかし、彼がひた隠す〝重大な秘密〟と、時折見せる切なげな表情の理由とは……? これは、どん底から這い上がる令嬢が、最強皇帝の重すぎるほどの愛に包まれながら、自分だけの居場所を見つけ、幸せなスローライフを築き上げていく、逆転シンデレラストーリー。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

追放聖女35歳、拾われ王妃になりました

真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。 自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。 ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。 とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。 彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。 聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて?? 大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。 ●他作品とは特に世界観のつながりはありません。 ●『小説家になろう』に先行して掲載しております。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...