忘れられた姫と猫皇子

kotori

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お客様 4

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 グリッグの姿がゆらりと揺れて、鳥になった。
 そのまま窓際に止まる。
 ランドルはフェリシアの椅子の下へ潜った。
 
 新しい足音は、なんの遠慮もなくバダバタと近づき……、扉が乱暴に開かれた。
 
 ずかずかと入ってきたのは、いつだったか厨房にいた奴らだ。
 
 フェリシアは驚いて立ち上がった。驚くだろう、こいつらは最近滅多にフェリシアの前に顔を出さなかったのだから。
 
 入って来た執事と家庭教師──笑わせる──の女はフェリシアには目もくれず衣装部屋へと入っていく。
 そこには、グリッグが、フェリシアのために用意したドレスや髪飾りなんかが並んでいるのだが、二人はそこら中を荒らしはじめた。

 ランドルが覗くと、引き出しをひっくり返し、戸棚を開けては、中を探っている。
 しかし、不思議なことにドレスの並ぶ一角、綺麗な宝飾品が置いてある引き出し、そこは目に入らないようで近づかない。

 グリッグの仕業だろう。グリッグは窓のところから動かず眺めているが、あの飛ぶ人形が二人の頭の上を飛び回り笑っていた。

「くそっ、どこに隠してあるんだ!」
 そう叫ぶと二人はフェリシアの前にやって来た。
「おい、新しいドレスがあっただろ、あれはどこに隠してあるんだ!」
 フェリシアを怒鳴りつける。

 フェリシアは青ざめながらも、
「そこにあるでしょ、見えないの?」
 と答えた。

「ふざけないでっ!」
 女の方が青筋を立て、フェリシアを打とうとした。と、人形が光りながら飛んできてその手にぶつかった。
 女は悲鳴をあげ自分の手を押えた。何が自分の手を打ったのか、辺りを見回す。

 執事が、フェリシアの腕をグッと掴んだ。
「わかった、もうこれでいい。このドレスを脱げ。これを持っていく」
 フェリシアが驚いてその手を振りほどこうとした。しかし執事は力を緩めず、フェリシアのドレスに手をかけた。
 ボタンが弾け飛ぶ。

 ランドルは自分でも分からない怒りに駆られて、飛び出した。

 そのまま床を蹴る。鋭い爪が、執事の顔面を引き裂いた。そのまま、そいつとフェリシアの間に着地する。

 執事は顔面から血を滴らせ呆然としていた。

 そこへふわっと風が来た。

 青い鳥の姿のグリッグが、頭上で羽ばたいている。
 その風を受けた途端、執事の顔面の傷が、女の打たれた手が、見る間に赤く腫れ上がっていった。
 悲鳴をあげて、二人は体を折り曲げた。特に執事は恐ろしい叫びをあげて顔を押えている。

 よほど痛むのか、執事は呆然とするフェリシアを残し、よろめきながらドアへ向かった。女も後に続く。
 二人はそのまま呻きながら部屋を出ていった。それを追おうとしたランドルを止めるかのように、グリッグが舞い降りた。

「俺が確かめてくる」
 そしてまた飛び立つグリッグを、ランドルはまだ体中の毛を逆立てながら見送った。

 猛烈な怒りで目がくらみそうだった。
 前にあいつらを見た時とは比べ物にならないほど、腹が立って仕方がない。

 部屋へとって返すと、ランドルはそのままフェリシアの膝の上へとん、と飛び乗った。
 フェリシアの顔を見ると、膨れていた体が少し落ち着く。

「大丈夫か?」
 そう訊くとフェリシアの顔がパッと赤らんだ。

「怪我はないか?」
 フェリシアは赤い顔をしたまま、こくりと頷いた。

 ──可愛いな。

 ランドルはフェリシアの肩の上に飛び乗った。
 フェリシアが短い悲鳴をあげる。

「ほんとに大丈夫か?」
 ランドルが重ねて訊くと、フェリシアは慌てたように両手を振り回した。

「あの、あの、ランディ、私着替えてくるから」
 気づくとさっきボタンが飛んだ服は破けて肩があらわになっていた。
 ランドルの体の毛が再び逆立った。慌ててフェリシアから飛び降りる。

「ちょ、ちょっと待っててね」
 そしてフェリシアは衣装部屋に駆け込み、気づけばまたランドルはイライラと自分の掌を舐めていた。

 やがて別のドレスを着て戻ったフェリシアは嬉しそうに言った。

「あの、あの、ランディ、私思い出したことがあるんだけど……」
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