オメガの花魁

花園侑

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1話「白雪花魁」

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1話「白雪花魁」

 「白雪花魁……。」
 「今日も来てくれたんだ。嬉しいな。ほらおいでよ。」
 「来たよ。今夜もあなたに会えて嬉しいよ。じゃあ脱がすね。」
 白雪はこの遊郭で一番人気の花魁だ。可愛らしい顔に美しい黒髪。そして客を上手く誘惑するような言葉。白雪は毎晩たくさんの指名が入るため一日に何人もの客の相手をしている。
 「……気持ちよかった。また来てくれる?」
 白雪は今夜の客ににこりと微笑んだ。
 「当たり前。絶対白雪花魁と番になりたいから。今度はヒート中に来るからね。」
 「ふふっ。待ってるよ。」
 客が帰って部屋に一人残された白雪。先程とは違い苛立ったような口調で言った。
 「……気持ちよくなんて全く無い!ただただ気色悪いよ!番なんてもっと無理だ!!」
 先程まで客のものが入っており、中に全て客のものが放たれた。それを汚れ物を見るように必死に洗い流す。
 「……ぜんぜん取れないし。……こんなの、もう嫌。」
白雪の目には涙がたまっていき頬を一筋涙が伝っていった。

 それから数日後。
 「……っ!!」
 白雪は毎月くるヒートに苦しんでいた。ここの遊郭はオメガのみが集められている。客は番を求めるアルファの客が多い。ヒートはオメガ特有のものでヒート中は普段よりも高値がつきさらに客も増える。遊郭一人気の白雪もヒート中は普段よりもたくさんの客の相手をしなければならない。ここに来るアルファは皆白雪と番になることを望んでいる。
 「良かった。辛いだろう?すぐに楽にしてやるよ白雪。」
 「……お願い。はやく!」
 (……嘘。こんなの嫌だよ。)
 今夜も客に抱かれながら涙を流していた。客はそんな白雪の様子を見てさらに興奮するようだった。

 それからさらに数日後。
 「……っう。」
 白雪は突然の吐き気に顔をしかめる。腹と口元を抑え厠へと駆け込む。込み上げてくるものを全て吐き出し、しばらくすると吐き気は落ち着いた。そして白雪は嫌な予感がして顔を真っ青になる。
 「……もしかして。」
 白雪は腹の辺りを手のひらでさすった。

 「……妊娠してるね。このままだと接客できないから堕ろしてね。」
 楼主の言葉には絶句した。しかし白雪は従うしかなかった。
 「……はい。」

 遊郭で妊娠をするとすぐに中絶しなければならない。白雪は罪のない子供を殺すよう言われ涙を流した。それから水銀を飲んだり腹部を思いっきり圧迫した。自分では力が足りなかったため同僚に腹を圧迫してもらう。
 「……っ!!痛っ!!」
 「……っごめんなさい白雪さん。」
 「……私じゃなくてこの子供に言って。この子に罪はないんだ。」
 白雪は涙を流しながら訴えるように言った。

 そして翌日。白雪の身ごもった子供は亡くなってしまった。遊郭に来て初めてのことだったためこの出来事は白雪の心を深く傷つけた。

 「……ごめんなさい。ごめんなさい。」
 白雪は腹に手を当て目からは涙を流しながらずっと謝罪の言葉を呟いている。先日ヒート中に接客し妊娠してしまった。そして昨夜、その子供を殺めてしまった。白雪にとってこのような出来事ははじめてで心に大きな傷を作ってしまった。接客中は何とか笑顔を保っていたが部屋で一人の時はどうしても我慢出来ず泣いてしまう。罪悪感や悲しみが襲ってくるのだ。そんな時一人の客から指名が入る。すぐに涙を拭い接客の準備をする。
 「九条圭司です。」
 「来てくれてありがとう九条さん。君は来るのはじめてだよね。よろしくね。」
 「ああ。」
 しかし九条は部屋に入るなり白雪の様子を見ておかしいと感じた。
 (……笑顔を無理やり作っている。先程まで泣いていたようだ。頬には涙の跡があるし、目元もかなり腫れているな。)
 九条は聞いていいものか悩んだがどうしても白雪のことが気になり聞いてしまった。
 「……その、白雪さん。もしかしてなにかありましたか?つらそうに見えます。」
 突然そのようなことを言われ白雪は驚いてしまった。
 「え?どうして?私はなにもないよ。」
 やはり九条の目には白雪の笑顔はどこか引きつっているように見える。
 「あなたの表情がそう言っています。つらい、助けて欲しいと。俺で良ければ話聞きます。つらいなら全部話さなくていい。ただ少しは楽になるかと。」
 その言葉を聞いたおもわず白雪は涙を流す。それをすぐに拭う。
 (……彼、どうして。今までこんな客はいなかった。みんないつも私を犯すだけ犯して終わり。私はここでは商品なんだ。だけどこの人はなんか違う……。彼になら話しても……。)
 「実は……。」
 
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