何も知らないけれど。

瀬戸 朱音

文字の大きさ
1 / 1

しおりを挟む
出会いは高校の入学式、ほとんど同じ中学の子がいなく、オドオドしながら正門をくぐりました。誘導されるがままに、教室につき、指定され席に座ると、後から声がしたんです。
「えっと、君!俺の友達になってよ!」
「!?」
驚いて声が出ず、目を丸くしていると
「俺、クラスに同中いなくてさー、ともかく前の席の君!友達になってくんない??」
  私とあまり変わらないような人だったので、コクンと頷いた。彼は顔が良く、いわゆるイケメンのような感じで、見ての通りフレンドリーだ。
  入学式が始まって、堅苦しい中彼と目が合うと、彼はニコッと笑いピースサインを出した。なんとなく緊張もとけて、入学式が終わったあと彼と話しているうちに少しづつ好きになっていたのかもしれない。
  数週間後、話の流れで「好きだなぁー。」と口がすべってしまうと、彼は赤面して「俺も。」と応えた。それから、妙な距離が続いたが、女子の友達の後押しで、晴れて彼と付き合うことになった。付き合うといっても何をしていいのかわからず、いつも通り友達のような関係に戻っていった。だが、付き合う前よりは彼といる時間が増えて、彼の知らない事も知れた。例えば、彼は虫が苦手。彼は辛い物が苦手。彼はすぐ顔を赤くする。そんな小さな発見が楽しかった。ある程度するとデート的なこともするようになった。まぁ、私が一方的に振り回してるだけなんだけどね。
  そして一年くらいした頃から変な噂が広まりはじめた。彼はいじられキャラだったこともあっていろいろ山もあったけど、これは聞き捨てならない噂だった。それは、彼が浮気している。というものだった。最初はそんなことないよ。なんて、変な自信を持ってたけど、後々友達が写メを送ってきて
「これあんたの彼氏だよね」
って訪ねてきた。その写真には彼と学年で1番可愛いと言われ、男子に大人気の女の子が笑顔で一緒に歩いていてる写真だった。さすがに無視が出来なくなり、彼に聞くと
「そんな訳ないじゃん。それに、あの子には彼氏がいるし、俺と付き合う理由は一つもないだろ?」
  信じたい気持ちもあったが、「浮気」という言葉に対しての怒りのほうが強かった。イライラしながら、その次の日の放課後、彼女のクラスに行った。彼女に「少し話がある。」と言って自分の教室に戻った。ほとんどの生徒が帰宅して、校庭から運動部の声が響くころ、カバンを持って彼女のクラスに入ると、彼女は窓際で座っていた。
「ちょっと遅くない?私を待たせるなんて…」
  最後の方は聞き取れなかった。そろそろイライラはピークで、彼女に言った。
「なんで、私の彼氏に手を出したの。」
「あら、誰が手を出したですって?あっちから近づいて来たから相手してやってたのよ。」
  いつもの彼女の可愛らしい太陽のような笑顔は、真っ黒な笑みに変わっていた。私は拳を固く握りながら、まだ我慢と囁いた。
「そうやって、いろんな人の気持ちを踏みにじって何が楽しいの…。」
「そう?楽しいじゃない。あの絶望している顔を見るのは。」
「あんた最低だ。私の彼氏の心まで…」
  なぜか、涙が流れてきた。
「あなたも、彼に心を踏みにじられたのよ?悪いのは私だけじゃないわ。」
  彼女はクスクスと笑いながら言った。言ってることは正しい。何も言い返せず、我慢していたはずの拳を振るおうとした時、急にブレーキのようにグッと腕が止まった。うしろを見ると彼が私の腕を握っていた。
「遅くなってごめんね。俺は、お前以外見えてないから。誤解させちゃってごめん。」 
後からギュッと温かい彼の腕に包まれた。涙が止まらなくなり、足の力が一気になくなった。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!あんたは私を好きなんじゃないの?」
彼女が驚きながら彼に聞いた。
「君はなんかの勘違いをしているみたいだね。俺はこいつがいる限りずっと一途なんで。そんなに好かれたいんだったらその性格から直さないとね。」
「なっ!?」
  彼は私を抱きかかえて教室をでた。安心と、嬉しさで力が抜けきってしまった。
  目が覚めると保健室のベッドで寝ていた。隣には彼がいて、おはようと微笑んだ。なんだか、信じてあげられなかった私は馬鹿だななんて思い、そして、幸せ者だと思えた。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

婚約破棄は既に済んでいます

姫乃 ひな
恋愛
婚約者に婚約破棄を言われてしまいました。 私にはどうすることもできません。何故なら既に両家の当主で婚約破棄についての話し合いは済んでおりますから… ※説明不足の部分がありますが実際の会話のテンポ感を感じながら読んでいただけると嬉しいです。 ※初心者のため手探りで始めています。よろしくお願いします。

【完結】狡い人

ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。 レイラは、狡い。 レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。 双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。 口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。 そこには、人それぞれの『狡さ』があった。 そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。 恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。 2人の違いは、一体なんだったのか?

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

処理中です...