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十人目の教頭先生
しおりを挟む「あーあ!もうお終いだよ!夢も希望もありゃしない!」
「まあまあ……ミニスカはだめだったから、次はロンスカを探しに行こうぜ」
束の間の勝利に安堵するシンイチたち……だがそれは罠であった。
まさに悪魔が油断を誘うために仕組んだかのような、あまりにも残酷な罠であった……。
腐臭と血の匂いが漂う中、ボロボロになったプレハブ小屋の出入り口で様子をうかがっていたシンイチたちの耳に、かすかな物音が聞こえてくる。
「なんだ?」
シンイチがそう呟いた瞬間、プレハブ小屋の天井がめりめりと崩れ落ちてきたではないか!
「うわあぁあぁっ!?」
「うおおおおっ!?」
「みんな逃げてー」
慌てて外に飛び出したシンイチたちを待っていたのは、途轍もなく美しい容姿を持った女子校生ゾンビであった。
シンイチの姿を認めると、彼女はくすりと笑いながら長い黒髪をかき上げる。その仕草の一つ一つになんともいえない艶めかしさがあり、シンイチたちは思わず見惚れてしまっていた。
うっすらと静脈の浮いた肌は真珠のように滑らかで白く、目は切れ長でまつげは長い。口の端はわずかに裂けてはいるものの……それでも彼女が美しいことに変わりはなかった。
「君は……」
シンイチが問いかけようとしたその時、友人の男が飛び出していく。
「うっ、うわあぁあ!かかかかわいいぃい!??!え、えエッチなことさせてくだしゃ!!」
「だから落ち着けって……」
だが悲しいかな、友人の男の思いはゾンビの彼女には届かなかった。いや……届いたところで意味はないかもしれないけど。
「ァハッ……」
女子校生ゾンビは嘲るかのような笑みを浮かべると、ぴょんぴょんと跳ねるように走り始める。どうやら彼女は校舎へと向かっているようだ。
しかしどう見たって、彼女は『普通』のゾンビではあり得ない。
優ちゃんのようにはっきりとした意思があるのは明らかだ。
そして彼女は時折こちらを振り返ると、捕まえてご覧なさいとばかりにくるりと回り微笑んでみせる。その姿はまるで旅人を惑わす妖精のようであった。
「シンイチ!あの子は俺を見て笑ってくれたぞ!脈ありだ!疾きこと風の如し!」
そして友人の男は校舎へ走っていく女子校生ゾンビを追いかけて行ってしまったではないか!なんと無謀な童貞であろうか!
今なら誰にも邪魔されることなく、あの子と『いいこと』ができると思っているのだろうか?
「落ち着けって!お前に必要なのは静かなること林の如くだ!」
「あの子すっごくかわいかったねー」
シンイチたちも慌てて後を追うが、友人の男の足は校舎の入り口の前で止まっていた。いや止めざるを得なくなってしまったのだ。
「シンイチ!変なおっさんたちがこっちに向かってくる!ここは女子校なのに!」
「落ち着け。教頭先生か何かがゾンビになったんじゃないか?」
「10人くらいいるぞ!どんな学校だよ!」
シンイチたちは完全に言葉を失う。だがそれも無理はない。想像を絶するようなおっさんたちがにこやかに笑いながらこちらへ向かって歩いてくるのだ。
「やあみんな!教頭先生だよ!」
やって来たのは頭頂部が禿げあがった教頭先生たちであった。
パンツ一丁でよろよろと歩く様子は言い逃れ出来ないほどゾンビであったが、シンイチたちが驚いたのはその教頭先生のゾンビが10体もいて、おまけにどいつもこいつも見分けがつかないくらい瓜二つだということだった。
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