女たちは言う。イケメン、美男子、美青年と。

でぃくし

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たかしの雑魚狩り日記④

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「ではまずは俺が行く、二人は観察していてくれ」
「うっす!」
「了か……えっ!?」

あたけが驚きの声を上げる中、たかしは茂みをかき分けて怪物たちの元へ近づいて行く。

だが、怪物たちはたかしを気にする様子もなく一心不乱に道路を駆け抜け続けている。

「おい!危ないぞ!」

あたけが慌てて声をかけるが、たかしは振り返ることなく片手を上げる。

そして、ふわりと重さを感じさせない身軽な動きで疾走中のフナムシの背中に飛び乗り、そのままフナムシの首筋に手を当てると軽々と頭を引き千切った。まるで殺人キャメルクラッチだ。

「すげえ!先輩マジぱねぇっす!」
「いや、なにやってんのあいつ!?」

フナムシはしばらく頭を失ったことに気付かなかったのか、そのまま激しく脚を動かしていたものの、やがてバランスを崩し、盛大に転がると後続のフナムシたちに何度もはね飛ばされボロボロの残骸へと変わり果ててしまった。

一方、たかしはその押し寄せる白い津波を物ともせず、悠然とした足取りであたけたちの元へと戻ってくる。

「ちゃんと観察できたか?」

「うっす!」
「いや見たけど!?」
「あいつら前しか見てないって感じだったろ」

たかしはあごに手を当ててそう呟く。

「そ、そう言われてもなあ……」

あたけは双眼鏡を握りしめたまま、林道をひたすら周回し続ける怪物たちを困惑した表情を見つめる。
しかし、たかしの言う通りこちらに襲い掛かってくるわけでもないなら、自分でもどうにかなりそうな気がしてきた。

たかしは思う。

(……俺たちはチームだからな)

自分が出て行けばこの化け物の群れもあっさり討伐できるだろうが、みんなの実戦経験を積む機会を奪うのは良くない。出来ることならまだ相手が弱いうちに、あたけたちだけでこの程度の怪物は対処できるようになってもらいたいのだ。

そして何よりも、あたけ自身も活躍したいと願っているはずだ。
たかしはあたけの目をまっすぐに見つめて語り掛ける。

「あたけ」
「な、なんだよ……」
「お前ならどうやって……」

「うっす!先輩、次はあたしが行くっす!」

「えっ!?」
「えっ」

「うりゃああぁっす!」

金属バットを手にストレッチをしていたありちゃんはもう我慢できないとばかりに叫び声を上げ、たかしとあたけが止める間もなく勢いよく飛び出していく。
彼女は楽しそうにフナムシと並走すると、あっという間に先頭集団に追いついてしまった。

フナムシたちは突然現れた乱入者に負けじとスピードを上げるが、ありちゃんはお構いなしといった様子で金属バットを振り回しながらその背中に飛び乗ると、
鹿を引きずり倒す狼の狩りのようにフナムシを地面に引き倒し、次々とその頭部を叩き潰していく。

「お、おい、たかし!あれ、大丈夫なのかよ!?」
「まあ……ありちゃんなら問題ないだろう」

なんという運動能力だろう。あたけは人狼の持つパワーとスピードに圧倒され、呆然とその光景を見守るしかなかった。

「うっす!うっす!」

ありちゃんは大声を上げながら、フナムシの頭部に金属バットを叩きつける。
フナムシの頭部は装甲ごと豆腐のように砕け散り、頭部を失った胴体は慣性に従って地面に叩きつけられ、後続のフナムシたちを巻き込み派手に転倒する。

しかし、そんな状況でもフナムシたちは脚は止まらず、なおもアスファルトの上を這いまわっていた。

「うおっし!みんな、まだまだ元気いっぱいっすね!」

ありちゃんはその後も次々にフナムシを撲殺し、道路上に残骸を広げていった。

たかしは思う。

(流石だ、ありちゃん)

ありちゃんは強大な力を持つ人狼でありガンドライドの幹部候補だ。
たかしには劣るものの、将来的には中央本部のエージェントとして申し分のない活躍を見せてくれるだろう。

何より彼女はいつでも陽気で、前向きで、一生懸命だ。
きっとどんな逆境にもめげずに戦いに身を投じ、これからも任務を全うしてくれるに違いない。

(でもまあ、今回はあたけの能力を確認したかったんだがな……)

ありちゃんに頭を叩き潰され、凄まじい勢いで回転しながら木々をなぎ倒していくフナムシの最期を見届けつつ、たかしは小さくため息をついた。

「うっす!うっす!」
「……よくやった。ありちゃん、偉いぞ」
「うっしゃあ!また先輩に褒められたっす!」

結局、フナムシたちはすべてありちゃんの手で片付けられ、あたけはその様子を眺めているだけに終わった。

⋱♱⋰ ⋱✮⋰ ⋱♱⋰ ⋱✮⋰ ⋱♱⋰ ⋱✮⋰ ⋱♱⋰

フナムシを掃討した後、撤収前に三人は椅子に腰かけて休憩を取っていた。疲れたというよりは皆、服の汚れがひどく、車に乗る前に少し着替えたかったからだ。

うまそうに喉を鳴らし、緑茶を流し込んでいるたかしにあたけが尋ねる。

「なあ、たかし」
「なんだ?」
「この化け物たちって結局どこからやってきてるんだ?まさかこの付近に裂け目が出来てるのか?」

「もしそうなら俺たちみたいな新人を派遣させるはずがない。そもそも日常生活を送ることが不可能になる。都市がまるごと封鎖されていてもおかしくない」
「そっか……それもそうだな……」

「ああいう雑魚はどこかのカルトやら魔術に手を出した連中が召喚しているらしい。そして手に負えなくなってきたら俺たちに任せるってところだろうな」
「召喚って何のために?」
「カルトの連中は何らかの強迫観念に駆られてそうしているらしいが実態はわからない。ただ、魔術師どもは呪物を作って売りつけるためにやってるそうだ」

「んなもん買うやついるのかよ……」
「まあな。だが、奴らは本気で信じ込んでるみたいだな。身を守るための強力な精霊を使役できるとか何とかと」
「なるほど……なあ、たかしはそういう話って詳しいのか?」

「いや、俺は全然詳しくない。すべて伯父さんの受け売りだ」
「そ、そうか……すげえんだな、お前の伯父さんって……」
「ああ、俺が強くなれたのもあの人のおかげだからな」

「いいよな……お前は、そんな親戚がいてさ……俺なんか親もいないしさ……」
「それは俺だって同じだ」
「……」
「伯父さんがいなくてもお前には妹や弟がいるだろ」

「いや、あいつらのせいでこれまでろくに自分の時間が無かったっていうか……」
「そうか……」

たかしはそう言ったきり黙ったまま、ペットボトルを傾けて残ったお茶を喉に流し込む。

「……」
「……」

「うっす!」
「うわっ!?」

いつの間にか隣に座っていたありちゃんが急に大声を上げたので、あたけは驚いて思わずのけ反った。

「ど、どうしたの?」
「あたけ先輩の作ってくれた料理、めちゃくちゃ美味いっす!」
「えっ!?」

あたけは慌ててありちゃんの手元を見る。
彼女の手にはあたけが調理に使っていた小さめのフライパンが握られており、その中身は空っぽになっていた。

「あっ!?ちょっ、それ、みんなの……」

「うっす!ごちになりました!これは先輩の手作りっすか!?」
「あ、うん、一応……アヒージョっていう料理だったんだけど……」

「あたけ先輩、これ、マジでヤバいくらいうまいっす!最高っす!」

満面の笑みを浮かべるありちゃんを前に、あたけは照れくさそうに頬を掻いた。

「あたけ。見晴らしがよく、かつ敵からは視認されにくいポイントを事前に調査し、キャンプを設営するなど、今回の活躍も見事なものだった」
「そ、そうかな……」

「うっす!そうっすよ!あたけ先輩が作ってくれた料理がなかったら、今頃あたしは飢え死にしてたっす!」
「まあ、料理っていうか缶詰の中身に火を通しただけだけどな……ありちゃんがそう言ってくれて嬉しいよ」
「うっす!うっす!」

「謙遜する必要はない。俺たちはチームだ。あたけは十分に貢献してくれた」
「そっか……」

あたけは嬉しそうに笑うと、再び頬を掻いたのであった。

それから数日の後、たかしたちは再び裂け目の怪物と遭遇することになる。

目撃情報によればまたもや節足動物系の、つまりたかしにとっては取るに足らない雑魚が相手になるわけだが、それでも油断はできない。

怪物はいつだって怪物だからだ。
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