女たちは言う。イケメン、美男子、美青年と。

でぃくし

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イケてる男の揺りかごと人狼の涙

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「でぃし!でぃし!」

肉と骨がぶつかる、というよりは岩石に鉄のハンマーを叩きつけるような乾いた金属音が響いて、あたけは背筋を震わせた。

ありちゃんの頭蓋骨は鋼鉄を砕いてなお余りあるほどの質量があり、しかも今の彼女の額にはライフル弾でも貫けない分厚い肉の楯が形作られていて、それがたかしの眉間や鼻面に目掛けて容赦無く叩き込まれているのだ。

「ありちゃん、それは反則……まあ今さらか」

あっさりと諦めたりしないのはいいことだ。

たかしは冷静にそう呟くと、ありちゃんが頭を振り下ろすタイミングに合わせ、彼女の鼻面にお返しとばかりに軽く頭突きを放つ。
その衝撃にありちゃんは首を大きく仰け反らせ、開いた口からは唾液がこぼれた。

「でぃっ!うぎゅっ!」

あたけは心配する。
少したかしがやり過ぎているように感じたからだ。

いや、たかしの方が一方的に酷い目に遭っていることはあたけにも分かるのだが、あたけには何だかありちゃんがいじめられてるようにも見えてしまったのだ。

「なあ、ちょっとやりすぎじゃ……」

ありちゃんの目に大粒の涙が浮かんでいる。
だが、それはあたけが心配するようなことではないのかもしれない。

ありちゃんの涙は痛みや悔しさだけのものではなかった。
それ以上に彼女は嬉しかったのだ。

(うっす!先輩、まじ最強っす!大好きっす!)

取っ組み合いはありちゃんの大好きな遊びの一つだ。

しかし、ありちゃんが大きくなるにつれその遊びに付き合って遊んでくれる者は少なくなり、彼女と同じ人狼でさえ、ありちゃんが成長するにつれついていけなくなっていった。

彼女の大好きなだったことは、いつの間にか周囲から弱いものいじめにしか見えないものとなっていて、彼女の心を傷つけていたのだ。

だが今、ありちゃんにはたかしがいる。
ありちゃんの体当たりを難なく受け止めて、あまつさえ逆に跳ね返してしまう地上最強の美青年。

彼女は今、たかしの美しさではなく、その強さによって癒やされていた。

「ありちゃん、泣き落としは相撲の技じゃないぞ」

いつの間にかたかしの腕は体を丸めて泣きじゃくるありちゃんを大切そうに抱えていて、まるで揺りかごのように彼女の大きな背中をゆらゆらと揺らしていた。

「ぐすっ……先輩はギャグも最強っす……」

たかしの腕の中でぐずぐずと鼻をすするありちゃん。

(いや、面白いか?)

いぶかしむあたけ。

「うす……先輩、またお相撲してくれますか?」
「ああ……もちろんだ。だけどあたけもトレーニングがあるからな、回数を控えるようにして欲しい」
「うっす!一日何回までっすか?」

「20回くらいまでかな」

「いや、妙に多いな!?」

白目を剥くあたけ。

たかしはありちゃんをそっと床に降ろすと、段ボールの山に埋もれていたあたけの手を取り引き寄せる。

「お前も頑丈になったな、流石は本物の吸血鬼だ」
「うぐ……相撲を見てて雪崩に巻き込まれる吸血鬼なんて聞いたことねーよ……」

痛みをこらえて立ち上がったあたけは服の汚れを払うと、周囲の惨状を見回しながら口を開く。

「な、なあ……たかしこの段ボールの中身どうすんだよ。転売するったってボリビアのワイナポトシだけに生息するヤマビスカチャ専用飼育キットとかターゲットが狭すぎるだろ」

「まあお前の顔写真でも貼り付けて売り出せばいいだろ(笑)」
「なんだよそれ(笑)」

活動資金はガンドライドから月々支給されてくるものの、いくらあっても困らない。
たかしはたかしで彼なりに、メンバー皆の生活を充実させるために、色々と金儲けの方法を考えているようだ。
もっともうまく行く兆しは今のところ見られないようだが。

「でもあたけ、これだけは約束してくれ」
「ん、なんだよ?」

たかしは真面目な顔になって言う。

「俺はお前に期待している。だから自信を持ってくれ、お前には俺が出来ないことが出来るんだ」
「うっす!あたけ先輩も今は全然っすけど、きっと最強になれるっす!あたしは知ってます!」

「そ、そう言われると……わかったよ」

二人の言葉にあたけはどこかくすぐったい気持ちになって、紫色に染まった髪の毛をかき上げながらへらへらと笑う。
それからも三人はトレーニングを続け、日が沈む頃にはあたけの体もすっかり疲労困憊になっていた。

そんな中、吸血鬼の力を高めるために伯父さんに教わった瞑想法を続けていたたかしが口を開く。
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