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第二章 ヒミツキチで……
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「ハハッ……ビックリした?この前ばーちゃん家片付けに行った時に見つけたんだ 母さんが昔着てたセーラー……と、このアタマのはイモコのをコッソリ失敬して来たんだ ドウダ、似合うだろう?オレ、オンナに見えない?クスッ」
「……」
「なんで黙ってる……見惚れてるのか?……ナンか言えよ……逆に恥ずかしくなるだろ?」
「……似合うか……だと?」
「うん!」
「バカか!気持ち悪いくらい、ハマリやがって!一体ナニやってんだよ!」
「アッハッハッハッハッ コレ見つけてすぐ思い付いたんだ ね、ね、外行こうよ!デートしよ!」
「はァ?正気か?誰かに会ったらどうする!それに雨!」
「そんなの〝カノジョ〟だよって、言えばいいだろ 大丈夫バレないって!」
「バカか!」
「こんな雨ぐらいで!行こうよナナミちゃんのカレシーッ! ……行って、調子に乗ってる雨のヤローを一緒にたたんじゃお?」
外に出ると結構な降り具合。そんなのもお構いなしでやっぱり……
「傘も差さないで来たのか!」
「こんなの走れば平気でしょ」
笑う虹生の隣で、俺は思わず首を振った。
虹生はもう頭からずぶ濡れ状態だ。雨に濡れる事は嫌じゃないんだな なのに―
「俺の傘には入って来るんだな」
「手、繋ごうか……旺クン……」
「頼むからヤメロ気持ち悪過ぎる」
「も~ノリ悪いなあ 別にオンナになりたいわけでも、憧れてるわけでもないからね、一応言っておくけど」
「で……満足したわけ?」
「ハハッ予想以上! ってか、やり過ぎだった?」
「ったく、そこまでやるか?ホンッとバカだな!」
「いいじゃんタマにはこんなシゲキがあったってさ……ね!後で写真撮ろ!オレ、オマエの彼女に成り切るから!」
「~……そんな恰好で、どこに行く気してんだか」
「あそこ行こうよ久々に!ホラ!」
「ぇえ!何でまた……」
虹生が言った〝あそこ〟というのは、昔よく秘密基地を作ったりして遊んだ林の事だ。
名前の知らない小さな川が流れ、そのまま生えっ放しにされてる雑木林。
手本にならない大人が不純の切れっ端を捨てに来る場所でもあって、その散乱された風景は幼い冒険心をあざ笑っているようだった。
そんな所に作る〝秘密基地〟もっとも相応しい充て名だと思う。
俺たちはそんな、親には決して言えないような物を見つけ出しては面白がったり大人の世界をけなしたり、そして胸をドキドキさせたり汚れた世界にしか見えない物に妙な魅力を感じていたのは事実だった。
虹生がなぜここを訪れたくなったのかは、分からない。
こんな天気の日は特に、そんな気にはならない。
それをあえて選んだのは彼らしいと言えば、彼らしいとも思えるが。
近頃の天気のせいで、少し林の中を歩いただけで地面の緩みを感じた。
伸びっ放しの雑草は触れてしまった所を濡らし、傘の意味を感じなくなった俺は傘を閉じた。
「……」
「なんで黙ってる……見惚れてるのか?……ナンか言えよ……逆に恥ずかしくなるだろ?」
「……似合うか……だと?」
「うん!」
「バカか!気持ち悪いくらい、ハマリやがって!一体ナニやってんだよ!」
「アッハッハッハッハッ コレ見つけてすぐ思い付いたんだ ね、ね、外行こうよ!デートしよ!」
「はァ?正気か?誰かに会ったらどうする!それに雨!」
「そんなの〝カノジョ〟だよって、言えばいいだろ 大丈夫バレないって!」
「バカか!」
「こんな雨ぐらいで!行こうよナナミちゃんのカレシーッ! ……行って、調子に乗ってる雨のヤローを一緒にたたんじゃお?」
外に出ると結構な降り具合。そんなのもお構いなしでやっぱり……
「傘も差さないで来たのか!」
「こんなの走れば平気でしょ」
笑う虹生の隣で、俺は思わず首を振った。
虹生はもう頭からずぶ濡れ状態だ。雨に濡れる事は嫌じゃないんだな なのに―
「俺の傘には入って来るんだな」
「手、繋ごうか……旺クン……」
「頼むからヤメロ気持ち悪過ぎる」
「も~ノリ悪いなあ 別にオンナになりたいわけでも、憧れてるわけでもないからね、一応言っておくけど」
「で……満足したわけ?」
「ハハッ予想以上! ってか、やり過ぎだった?」
「ったく、そこまでやるか?ホンッとバカだな!」
「いいじゃんタマにはこんなシゲキがあったってさ……ね!後で写真撮ろ!オレ、オマエの彼女に成り切るから!」
「~……そんな恰好で、どこに行く気してんだか」
「あそこ行こうよ久々に!ホラ!」
「ぇえ!何でまた……」
虹生が言った〝あそこ〟というのは、昔よく秘密基地を作ったりして遊んだ林の事だ。
名前の知らない小さな川が流れ、そのまま生えっ放しにされてる雑木林。
手本にならない大人が不純の切れっ端を捨てに来る場所でもあって、その散乱された風景は幼い冒険心をあざ笑っているようだった。
そんな所に作る〝秘密基地〟もっとも相応しい充て名だと思う。
俺たちはそんな、親には決して言えないような物を見つけ出しては面白がったり大人の世界をけなしたり、そして胸をドキドキさせたり汚れた世界にしか見えない物に妙な魅力を感じていたのは事実だった。
虹生がなぜここを訪れたくなったのかは、分からない。
こんな天気の日は特に、そんな気にはならない。
それをあえて選んだのは彼らしいと言えば、彼らしいとも思えるが。
近頃の天気のせいで、少し林の中を歩いただけで地面の緩みを感じた。
伸びっ放しの雑草は触れてしまった所を濡らし、傘の意味を感じなくなった俺は傘を閉じた。
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