俺の嫁が可愛すぎるので、とりあえず隣国を滅ぼすことにした。

イコ

文字の大きさ
80 / 134
第五話

二災 双喉のヴァリス 4

しおりを挟む
《side:双喉のヴァリス》

 空が軋む。

 風が震える。

 地が悲鳴を上げるほどに、我らの吐息が世界を満たす。

『ふふふ……いい匂いがしますねェ。焼けた木々と、焦げた鉄と、怯えた人間の匂い』
『あー……うるさいな、嗅覚は一つだ、楽しみまで混ぜるなって』

 ヨンクの街が眼下に広がっている。

 小さな城壁、貧相な街並み、それでも人々は希望という愚かさを持って立ち上がる。

『愚かですねェ。どうして生き残ろうとするんでしょうね』
『そういうものさ。だから、僕たちが意味を教えてやるんだよ。なァ、終わりってやつをさ』

 冷気と毒気を操り、世界の理に『穢れ』をもたらすもの。

 人類に厄災を撒き散らすために生まれた者。

『どこから壊します? 人々が逃げようとするあの大通り……あぁ、愛おしいですねェ。私が凍らせて、潰して、震えさせて……』
『僕は見張りの塔がいい。あれは高い。崩れればよく響く。下敷きにされたやつらの骨がバラバラになる音……聞こえるぞ。ここを壊したら、もっと人がいるところに行って、たくさん人を殺すんだ』

 我々、異なる欲求を抱きながら、一つの意志で動く。

 それは破壊。ただ、それだけ。

『さあ、始めましょう。この地の虚構を、潰して、喰って、毒で塗り替えてしまいましょう』
『うん。で、そのあとさ、あいつはどうするんだろうな? あの僕らの邪魔をしていたやつ』
『知りません。けれど……私たちを止められると思っているなら、それこそ幻想ですよ。ゾルグは本当にいい働きをしてくれた。破壊の衝動で気を急くタイプですが、それがいい』

 街の空に、毒霧が浮かび始める。

 冷気と共に、あらゆる命を凍えさせ、震わせ、崩壊へと導く死の風。

 それこそが、我らの贈り物だ。

『……そうだ。叫ばせましょう。泣かせましょう』
『あはは、女や子供は本当にいい声で泣くからね。お前、ちょっと趣味悪いぜ。最高って意味で』
『ふふふ、愛ですよ』

 我らは笑う。

 人々が滅びる光景を想像しながら、双喉の咆哮を響かせた。

 それは、破滅の合図。

 死が、始まる音だった。

 最高に楽しい時間が始まる。

 今まで、我々を妨げていた。あの忌まわしい門を壁を越えることができた。

 ここからは我々の自由に厄災を振り撒くことができる。

 たくさん壊しましょう。たくさん破壊しましょう。

 我々は解き放たれたのです。

 自由だ。ああ最高の瞬間だ。

 全てを滅ぼして、全てを流してしまう。

『毒がいいか?』
『凍らす方がいいか?』

 面白い。なんと脆くて弱いのか!

 我々には近づくこともできない。これが人? 守られていなければ何もできないではないか。

『さぁ、次に行きますよ』
『ああ、十分に破壊できたから、もういいや』

 街の建物を破壊して、田畑は火の手が上がり、人が生きていられないような環境になったことに満足した我々は次に向かう。

 もっと、もっと破壊したい。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...