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第五話
二災 双喉のヴァリス 4
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《side:双喉のヴァリス》
空が軋む。
風が震える。
地が悲鳴を上げるほどに、我らの吐息が世界を満たす。
『ふふふ……いい匂いがしますねェ。焼けた木々と、焦げた鉄と、怯えた人間の匂い』
『あー……うるさいな、嗅覚は一つだ、楽しみまで混ぜるなって』
ヨンクの街が眼下に広がっている。
小さな城壁、貧相な街並み、それでも人々は希望という愚かさを持って立ち上がる。
『愚かですねェ。どうして生き残ろうとするんでしょうね』
『そういうものさ。だから、僕たちが意味を教えてやるんだよ。なァ、終わりってやつをさ』
冷気と毒気を操り、世界の理に『穢れ』をもたらすもの。
人類に厄災を撒き散らすために生まれた者。
『どこから壊します? 人々が逃げようとするあの大通り……あぁ、愛おしいですねェ。私が凍らせて、潰して、震えさせて……』
『僕は見張りの塔がいい。あれは高い。崩れればよく響く。下敷きにされたやつらの骨がバラバラになる音……聞こえるぞ。ここを壊したら、もっと人がいるところに行って、たくさん人を殺すんだ』
我々、異なる欲求を抱きながら、一つの意志で動く。
それは破壊。ただ、それだけ。
『さあ、始めましょう。この地の虚構を、潰して、喰って、毒で塗り替えてしまいましょう』
『うん。で、そのあとさ、あいつはどうするんだろうな? あの僕らの邪魔をしていたやつ』
『知りません。けれど……私たちを止められると思っているなら、それこそ幻想ですよ。ゾルグは本当にいい働きをしてくれた。破壊の衝動で気を急くタイプですが、それがいい』
街の空に、毒霧が浮かび始める。
冷気と共に、あらゆる命を凍えさせ、震わせ、崩壊へと導く死の風。
それこそが、我らの贈り物だ。
『……そうだ。叫ばせましょう。泣かせましょう』
『あはは、女や子供は本当にいい声で泣くからね。お前、ちょっと趣味悪いぜ。最高って意味で』
『ふふふ、愛ですよ』
我らは笑う。
人々が滅びる光景を想像しながら、双喉の咆哮を響かせた。
それは、破滅の合図。
死が、始まる音だった。
最高に楽しい時間が始まる。
今まで、我々を妨げていた。あの忌まわしい門を壁を越えることができた。
ここからは我々の自由に厄災を振り撒くことができる。
たくさん壊しましょう。たくさん破壊しましょう。
我々は解き放たれたのです。
自由だ。ああ最高の瞬間だ。
全てを滅ぼして、全てを流してしまう。
『毒がいいか?』
『凍らす方がいいか?』
面白い。なんと脆くて弱いのか!
我々には近づくこともできない。これが人? 守られていなければ何もできないではないか。
『さぁ、次に行きますよ』
『ああ、十分に破壊できたから、もういいや』
街の建物を破壊して、田畑は火の手が上がり、人が生きていられないような環境になったことに満足した我々は次に向かう。
もっと、もっと破壊したい。
空が軋む。
風が震える。
地が悲鳴を上げるほどに、我らの吐息が世界を満たす。
『ふふふ……いい匂いがしますねェ。焼けた木々と、焦げた鉄と、怯えた人間の匂い』
『あー……うるさいな、嗅覚は一つだ、楽しみまで混ぜるなって』
ヨンクの街が眼下に広がっている。
小さな城壁、貧相な街並み、それでも人々は希望という愚かさを持って立ち上がる。
『愚かですねェ。どうして生き残ろうとするんでしょうね』
『そういうものさ。だから、僕たちが意味を教えてやるんだよ。なァ、終わりってやつをさ』
冷気と毒気を操り、世界の理に『穢れ』をもたらすもの。
人類に厄災を撒き散らすために生まれた者。
『どこから壊します? 人々が逃げようとするあの大通り……あぁ、愛おしいですねェ。私が凍らせて、潰して、震えさせて……』
『僕は見張りの塔がいい。あれは高い。崩れればよく響く。下敷きにされたやつらの骨がバラバラになる音……聞こえるぞ。ここを壊したら、もっと人がいるところに行って、たくさん人を殺すんだ』
我々、異なる欲求を抱きながら、一つの意志で動く。
それは破壊。ただ、それだけ。
『さあ、始めましょう。この地の虚構を、潰して、喰って、毒で塗り替えてしまいましょう』
『うん。で、そのあとさ、あいつはどうするんだろうな? あの僕らの邪魔をしていたやつ』
『知りません。けれど……私たちを止められると思っているなら、それこそ幻想ですよ。ゾルグは本当にいい働きをしてくれた。破壊の衝動で気を急くタイプですが、それがいい』
街の空に、毒霧が浮かび始める。
冷気と共に、あらゆる命を凍えさせ、震わせ、崩壊へと導く死の風。
それこそが、我らの贈り物だ。
『……そうだ。叫ばせましょう。泣かせましょう』
『あはは、女や子供は本当にいい声で泣くからね。お前、ちょっと趣味悪いぜ。最高って意味で』
『ふふふ、愛ですよ』
我らは笑う。
人々が滅びる光景を想像しながら、双喉の咆哮を響かせた。
それは、破滅の合図。
死が、始まる音だった。
最高に楽しい時間が始まる。
今まで、我々を妨げていた。あの忌まわしい門を壁を越えることができた。
ここからは我々の自由に厄災を振り撒くことができる。
たくさん壊しましょう。たくさん破壊しましょう。
我々は解き放たれたのです。
自由だ。ああ最高の瞬間だ。
全てを滅ぼして、全てを流してしまう。
『毒がいいか?』
『凍らす方がいいか?』
面白い。なんと脆くて弱いのか!
我々には近づくこともできない。これが人? 守られていなければ何もできないではないか。
『さぁ、次に行きますよ』
『ああ、十分に破壊できたから、もういいや』
街の建物を破壊して、田畑は火の手が上がり、人が生きていられないような環境になったことに満足した我々は次に向かう。
もっと、もっと破壊したい。
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