130 / 134
第八話
魔王軍
しおりを挟む
戦場に一時の静寂が訪れても、戦が終わったわけではない。
王国軍は退却したが、それは敗走ではなく、再編のための撤退。
この事実を、誰よりも俺たちは理解していた。
砦に建てられた仮設の会議室。
戦後処理の本部として使われているその円卓には、各地の代表者、長老たちが集っていた。
鋼を打ったような重い空気のなか、開かれたのは戦後の次に向けた会議。
俺は円卓の正面に座っていた。
右隣には、バッサム長老。ドワーフとして、今回の武器全般を仕切ってくれている。
連合の政治を司る老将でもある。
かつて、魔王軍時代の幹部でもあったと言われているが、俺はその時のことを知らないが、今回の戦いでは指揮官としての姿を見せていたとノーラに聞いている。
左には、ルティア・シルヴァ=アストレア。エルフ族の長老であり、王国の暴挙に対して、エルフも参加してくれたことは嬉しく思う。
他にも、南の砂漠から来た獣人の酋長、鉄峰山のオーク代表、小人族。
そして、最も俺が世話になっている鬼人族のオン婆。
人種も種族も異なる者たちがこの場に顔を揃えていた。
「……さて」
ハッサム長老が口を開いた。
「連合は一度、地獄に沈んだが……エルドの帰還と、異形たちの力により、王国軍を退けることができた」
「まずは、それに感謝を」
円卓に並ぶ長老たちが、口々にうなずく。
だが、俺は無言でそれを受け流す。
感謝よりも、今は次を見なければならない。
「奴らは退却しただけ。牙はまだ折れておらぬ。王国は第二、第三の軍を編成しているだろう」
「むしろ今が危うい」
「勝利に酔って緩めば、王国の刃は容赦なく喉元を突く」
「まったくだ!」
俺の言葉に各々が頷いてくれる。
「毒という卑劣な戦法を持ち出してきた王国が、このまま退くと思ってはいない。今こそ、迎撃の備えを固めねばならん!」
「この戦いは、始まりに過ぎない。王国は次の段階に入る。毒に加え、より強大な兵器、あるいは他の方法を投入してくる可能性がある」
「兵器……?」
精霊族のミティア様が目を細めた。
「それにしても、おぬしの連れてきた三匹の異形はなんだ?」
「違う。あれは我が同志だ」
俺はきっぱりと言った。
「王国にもまた……異形がいる。双喉ヴァリス。その名を聞いたことがある者もいるだろう」
会議室が一瞬、ざわついた。
ヴァリスは、ヨンクにとって過去に災厄をもたらした存在。
「そのヴァリスが、今回の毒の元凶だ。そして、王国の王セディアスは異形だけでなく、かつて王国の初代王であった勇者の兵器を使うと思う」
言葉を止め、俺は視線を上げた。
「勇者の武器?!」
「ああ、だから俺は王国を滅ぼすまでこの戦いをやめるつもりない。我が妻の願いでもある」
ノーラの故郷として、これまでの非道な扱いでもこちらが矛を納めてきた。
だが、俺の嫁を悲しませ、彼女が承知したなら俺に迷いはない。
静寂が、広がった。
「……ならば、我々もそろそろ覚悟を示さねばならぬな」
ハッサム長老の言葉に、全員が立ち上がる。
俺だけが意味がわからなくて、戸惑いを感じる。
「エルド、いや。魔王エルド・ガレヴィ様。異形があなたと契約を結び。王国が古き契約を破棄した今。我々は連合としてではなく。魔王様配下の魔王軍として、高らかに宣言いたしたいと思います」
「ハッサム長老? 何を言っているんだ?」
「あなたは魔王様の眷属であり、同時に勇者の血を引く正当な王位継承者に間違いありません。そして我々はあなたが決意を固めるのを待っていた。魔王エルド様。どうか我々を配下として受け入れてください!」
普段の陽気なハッサム長老の言葉に、全員が片膝をついて俺に礼を尽くす。
意外だったのは、かつて王国側だったエルフの長老までそこに参列していたことだ。
「俺はお前たちに指示をするつもりはない。どこまで自分が先頭に立って戦う。ついてきてくれるか?」
「どこまでもあなたと共に!」
「なら、引き受けるよ。俺についてこい!」
「「「「「ハッ!!!」」」」
とんでもないことになったな。
王国軍は退却したが、それは敗走ではなく、再編のための撤退。
この事実を、誰よりも俺たちは理解していた。
砦に建てられた仮設の会議室。
戦後処理の本部として使われているその円卓には、各地の代表者、長老たちが集っていた。
鋼を打ったような重い空気のなか、開かれたのは戦後の次に向けた会議。
俺は円卓の正面に座っていた。
右隣には、バッサム長老。ドワーフとして、今回の武器全般を仕切ってくれている。
連合の政治を司る老将でもある。
かつて、魔王軍時代の幹部でもあったと言われているが、俺はその時のことを知らないが、今回の戦いでは指揮官としての姿を見せていたとノーラに聞いている。
左には、ルティア・シルヴァ=アストレア。エルフ族の長老であり、王国の暴挙に対して、エルフも参加してくれたことは嬉しく思う。
他にも、南の砂漠から来た獣人の酋長、鉄峰山のオーク代表、小人族。
そして、最も俺が世話になっている鬼人族のオン婆。
人種も種族も異なる者たちがこの場に顔を揃えていた。
「……さて」
ハッサム長老が口を開いた。
「連合は一度、地獄に沈んだが……エルドの帰還と、異形たちの力により、王国軍を退けることができた」
「まずは、それに感謝を」
円卓に並ぶ長老たちが、口々にうなずく。
だが、俺は無言でそれを受け流す。
感謝よりも、今は次を見なければならない。
「奴らは退却しただけ。牙はまだ折れておらぬ。王国は第二、第三の軍を編成しているだろう」
「むしろ今が危うい」
「勝利に酔って緩めば、王国の刃は容赦なく喉元を突く」
「まったくだ!」
俺の言葉に各々が頷いてくれる。
「毒という卑劣な戦法を持ち出してきた王国が、このまま退くと思ってはいない。今こそ、迎撃の備えを固めねばならん!」
「この戦いは、始まりに過ぎない。王国は次の段階に入る。毒に加え、より強大な兵器、あるいは他の方法を投入してくる可能性がある」
「兵器……?」
精霊族のミティア様が目を細めた。
「それにしても、おぬしの連れてきた三匹の異形はなんだ?」
「違う。あれは我が同志だ」
俺はきっぱりと言った。
「王国にもまた……異形がいる。双喉ヴァリス。その名を聞いたことがある者もいるだろう」
会議室が一瞬、ざわついた。
ヴァリスは、ヨンクにとって過去に災厄をもたらした存在。
「そのヴァリスが、今回の毒の元凶だ。そして、王国の王セディアスは異形だけでなく、かつて王国の初代王であった勇者の兵器を使うと思う」
言葉を止め、俺は視線を上げた。
「勇者の武器?!」
「ああ、だから俺は王国を滅ぼすまでこの戦いをやめるつもりない。我が妻の願いでもある」
ノーラの故郷として、これまでの非道な扱いでもこちらが矛を納めてきた。
だが、俺の嫁を悲しませ、彼女が承知したなら俺に迷いはない。
静寂が、広がった。
「……ならば、我々もそろそろ覚悟を示さねばならぬな」
ハッサム長老の言葉に、全員が立ち上がる。
俺だけが意味がわからなくて、戸惑いを感じる。
「エルド、いや。魔王エルド・ガレヴィ様。異形があなたと契約を結び。王国が古き契約を破棄した今。我々は連合としてではなく。魔王様配下の魔王軍として、高らかに宣言いたしたいと思います」
「ハッサム長老? 何を言っているんだ?」
「あなたは魔王様の眷属であり、同時に勇者の血を引く正当な王位継承者に間違いありません。そして我々はあなたが決意を固めるのを待っていた。魔王エルド様。どうか我々を配下として受け入れてください!」
普段の陽気なハッサム長老の言葉に、全員が片膝をついて俺に礼を尽くす。
意外だったのは、かつて王国側だったエルフの長老までそこに参列していたことだ。
「俺はお前たちに指示をするつもりはない。どこまで自分が先頭に立って戦う。ついてきてくれるか?」
「どこまでもあなたと共に!」
「なら、引き受けるよ。俺についてこい!」
「「「「「ハッ!!!」」」」
とんでもないことになったな。
12
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている
夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。
ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。
無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。
クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる