俺の嫁が可愛すぎるので、とりあえず隣国を滅ぼすことにした。

イコ

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第八話

魔王軍

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 戦場に一時の静寂が訪れても、戦が終わったわけではない。

 王国軍は退却したが、それは敗走ではなく、再編のための撤退。

 この事実を、誰よりも俺たちは理解していた。

 砦に建てられた仮設の会議室。

 戦後処理の本部として使われているその円卓には、各地の代表者、長老たちが集っていた。

 鋼を打ったような重い空気のなか、開かれたのは戦後の次に向けた会議。

 俺は円卓の正面に座っていた。

 右隣には、バッサム長老。ドワーフとして、今回の武器全般を仕切ってくれている。

 連合の政治を司る老将でもある。

 かつて、魔王軍時代の幹部でもあったと言われているが、俺はその時のことを知らないが、今回の戦いでは指揮官としての姿を見せていたとノーラに聞いている。

 左には、ルティア・シルヴァ=アストレア。エルフ族の長老であり、王国の暴挙に対して、エルフも参加してくれたことは嬉しく思う。

 他にも、南の砂漠から来た獣人の酋長、鉄峰山のオーク代表、小人族。

 そして、最も俺が世話になっている鬼人族のオン婆。

 人種も種族も異なる者たちがこの場に顔を揃えていた。

「……さて」

 ハッサム長老が口を開いた。

「連合は一度、地獄に沈んだが……エルドの帰還と、異形たちの力により、王国軍を退けることができた」
「まずは、それに感謝を」

 円卓に並ぶ長老たちが、口々にうなずく。

 だが、俺は無言でそれを受け流す。

 感謝よりも、今は次を見なければならない。

「奴らは退却しただけ。牙はまだ折れておらぬ。王国は第二、第三の軍を編成しているだろう」
「むしろ今が危うい」
「勝利に酔って緩めば、王国の刃は容赦なく喉元を突く」
「まったくだ!」

 俺の言葉に各々が頷いてくれる。

「毒という卑劣な戦法を持ち出してきた王国が、このまま退くと思ってはいない。今こそ、迎撃の備えを固めねばならん!」
「この戦いは、始まりに過ぎない。王国は次の段階に入る。毒に加え、より強大な兵器、あるいは他の方法を投入してくる可能性がある」
「兵器……?」

 精霊族のミティア様が目を細めた。

「それにしても、おぬしの連れてきた三匹の異形はなんだ?」
「違う。あれは我が同志だ」

 俺はきっぱりと言った。

「王国にもまた……異形がいる。双喉ヴァリス。その名を聞いたことがある者もいるだろう」

 会議室が一瞬、ざわついた。

 ヴァリスは、ヨンクにとって過去に災厄をもたらした存在。

「そのヴァリスが、今回の毒の元凶だ。そして、王国の王セディアスは異形だけでなく、かつて王国の初代王であった勇者の兵器を使うと思う」

 言葉を止め、俺は視線を上げた。

「勇者の武器?!」
「ああ、だから俺は王国を滅ぼすまでこの戦いをやめるつもりない。我が妻の願いでもある」

 ノーラの故郷として、これまでの非道な扱いでもこちらが矛を納めてきた。

 だが、俺の嫁を悲しませ、彼女が承知したなら俺に迷いはない。

 静寂が、広がった。

「……ならば、我々もそろそろ覚悟を示さねばならぬな」

 ハッサム長老の言葉に、全員が立ち上がる。

 俺だけが意味がわからなくて、戸惑いを感じる。

「エルド、いや。魔王エルド・ガレヴィ様。異形があなたと契約を結び。王国が古き契約を破棄した今。我々は連合としてではなく。魔王様配下の魔王軍として、高らかに宣言いたしたいと思います」
「ハッサム長老? 何を言っているんだ?」
「あなたは魔王様の眷属であり、同時に勇者の血を引く正当な王位継承者に間違いありません。そして我々はあなたが決意を固めるのを待っていた。魔王エルド様。どうか我々を配下として受け入れてください!」

 普段の陽気なハッサム長老の言葉に、全員が片膝をついて俺に礼を尽くす。

 意外だったのは、かつて王国側だったエルフの長老までそこに参列していたことだ。

「俺はお前たちに指示をするつもりはない。どこまで自分が先頭に立って戦う。ついてきてくれるか?」
「どこまでもあなたと共に!」
「なら、引き受けるよ。俺についてこい!」
「「「「「ハッ!!!」」」」

 とんでもないことになったな。
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