お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

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第一章

若かりし狂王の本音

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《sideブライド・スレイヤー・ハーケンス》

 我は生まれながらの強者であった。

 歳を重ねるごとに気づくのだ。我は他者とは違う。あまりにも強く優秀であり、他を凌駕するだけの力を持っている。

 誰かが我を狂人の皇子ブライド・スレイヤー・ハーケンスなどという者がいるが、狂人、変人、奇人、良いではないか。

 他者とは違った能力を持ち、それを如何なく発揮する。

 平凡でつまらない者たちよりも面白い人生を生きている。素晴らしいことだ。

 確かに我は幼少期から他者を圧倒するカリスマ性と、絶対強者としてのオーラを発揮していた。

 あれは十歳の時だったか? 我は帝国軍の訓練場を訪れた。

 そこで、帝国最強の騎士と呼ばれる剣聖と戦った。

 流石の我も最初は勝つことができなかった。だが、面白かった。負けるということは、相手を打ち負かした際の喜びは、勝ってしまった時の何倍も楽しい。

 だからこそ、毎日のように大人たちに混じって訓練に明け暮れた。

 十五歳になった時、再び剣を交えることになった。

「全力を出さないならば、貴様の命の価値はない」

 そう告げて、本気で戦わせた。結果は、我の勝利であった。

 五年の歳月をかけて、我は帝国最強の剣聖に剣で勝った。なんと心地よく甘美なことか。

 戦いの後、訓練場の全員が跪き、畏怖と称賛を込めて「皇帝の剣」と口にしてきた。

 帝国では、あるしきたりがある。

「皇子が成人の儀で王獣を討伐する」

 古い伝統だが、面白い。

 我は十五歳の成人の儀で、王獣を討伐しなければならない。

 最近では形式だけで、我が兄上殿は騎士達精鋭の軍隊が討伐に向かって弱った王獣にとどめを刺した。

 獰猛な魔獣を制圧したと言っていた。

 だが、我は一人で十分だ。

 獅子型の王獣を倒して帰還して、王獣の心臓を父上へ差しあげたのだ。

「この心臓を捧げ、我が父上への忠誠を証明します」

 皇帝や貴族たちは喜んでくれていたが、一部の者たちからは「何故そこまで冷徹で残酷なのか」と恐れられたものだ。

 我と同等の魔獣と仕留めている者などいないであろう。我以上となれば、ドラゴンしか有り得ぬのだからな。


 年齢を重ねる。剣術だけでなく、戦略戦術、魔術にのめりこんでいった我は単に冷酷に恐怖だけで人を統治するだけではダメだということに気づいた。

「帝国は弱き者によって腐敗しつつある。力や能力ある者たちによって正さなければならない」

 我、思想を持ち、自らが帝国の象徴として導かねばならぬ。

 そう、この世は弱肉強食、強い者が生き、弱い物は虐げられる。だが、弱い者であっても能力がある者は存在する。

 それを埋もれさせるのは勿体無いのではないか?

 我にそう思わせる出来事があった。

「おい、小僧。貴様の名前はなんという?」
「アイク」

 それは我が武勇を高めるため、魔物との戦いを繰り広げながら、各地を回っている時のことであった。

 歳は我に近く、田舎の農村にいた子供があろうことか、我の剣を弾いて見せたのだ。

「アイクか、貴様は剣の才能がある。我が貴様を見出してやろう! 我の元に来い」
「あんたについていけば腹一杯飯を食えるのか?」
「ああ、約束しよう」
「ならついていく」

 アイクはメキメキと剣術の腕を上達させた。我が五年かかって倒した剣聖を一年で倒してしまった。

 もちろん成長したからだということもあるが才能の差を感じる。つまりは、人はそれぞれに秀でた才能があり、全てに優れた我が、一芸でも才能がある者を率いたならどうなる? 大陸統一も夢ではないのだ。

 だからこそ、我は才能があるという者達がいれば、自ら足を運ぶようになった。

 アイクを護衛につけて、多くの配下を手に入れた。

 そんなある日だ。公爵家の変人について噂を聞いたのは……。

「我が弟は、属性魔法の才能はありませんでしたが、素晴らしい研究者であり、変人ですよ」

 楽しそうに変人について語ったのは、フライ・エルトールの兄である。エリック・エルトールだった。奴は公爵家の次期当主であり、是非とも我が陣営にスカウトしたい人物だった。

 スカウトに向かった際に、弟自慢をして、ならば連れてこいと言ったが、我と同じ歳であり、学園で会うから楽しみにしていろという。

 では、実際にあったフライ・エルトールとはどのような人物なのか?

 答えは、面白い……だ。

 我は入学式の時から、威圧を放ち続けている。ある程度の強者や、魔力量を有している者ならば耐えられる程度の威圧。

 それに対して、ミルティ王国のアイスは文句をつけてきた。気分を悪くした者が多くいたと。

 当たり前だ。我は強者をふるいに掛けていたのだ。

 さらに、アイスが因縁をつけてきた野次馬には、入学式以上の威圧を放った。それはもう殺気であり、我の殺気を受けて、平気な顔をしていられるものはアイクぐらいだと思っていた。

 実際にアイスは、顔を曇らせて言葉を途中で切って立ち去っていく。

 つまらない。

 そう思っていると、一人の生徒が平気な顔をして我を見ていた。

「うん? 貴様、何を見ている」

 連れている女達も、冷や汗をかいているが、意識を保てていることに感嘆する。

「お初にお目にかかります。ブライド・スレイヤー・ハーケンス様。帝国公爵家フライ・エルトールにございます」
「むっ、なるほど。貴様が、公爵家の変人か」
「変人?」

 こやつはエリックが自慢していた変人か、我が挑発をしても、ニッコリと微笑みを浮かべている不気味なやつだ。

 不意に女がフライを頼るような素振りを見せた。これはいい。この女を使ってフライを怒らせてみよう。

「それにしてもどちらの女も上玉であるな。魔力量も相当に多い」

 我は、フライの服の袖を掴んだ女に手を伸ばそうとした。

 しかし、次の瞬間、バシッ?!

 我の手は払いのけられていた。見えなかった。威圧に平気な顔をしただけではない。こやつは我やアイクと同じか、それ以上の戦力を持っている。

「申し訳ない。彼女は兄の婚約者なのです。手を出さないでいただきたい」
「ほう、くくく、そうかそうか。フライ、お前に問おう。我の下に着く気はないか?」

 才ある者を我は愛する。フライは才能があり、またそれを自分で理解している。面白い男だ。

「ないですね。僕は誰の下にもつきません」
「くくく、ますます面白いぞ! いつか、お前を従わせてやる。ではな」

 学園生活はつまらないと思っていたが、面白い男に出会えた。

 今までのやり取りを、もう一人、見ている者がいた。

 其奴のことは後日スカウトするとしよう。

 今日は気分がいい。久しぶりに、アイクと共に狩りにでも行きたい気分だ。
 
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