お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

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第三章

覚悟の説得!

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《side セシリア・ローズ・アーリントン》

 決して後悔をしない生き方を私は選んでみせる。

 そう心に誓いながら、私は学園都市にやってきた。

 それは、今この場でも変わらない。

 フライ・エルトール様の屋敷の扉をくぐった。

 アーリントン公国の未来のため、そして私自身の想いを叶えるため、ここに来ることを決めました。

 クラウン・バトルロワイヤルのパートナーとして、フライ様を説得すること。それが私の目的です。

 ですが、胸の奥で静かに高鳴る鼓動は別の感情も含んでいます。

 それが何であるかは、自分でも分かっているのです。けれど、それを表に出すわけにはいきません。

 今の私は、アーリントン公国の公女として、フライ様の力を借りるためにここにいるのですから、クラウン・バトルロワイヤルは、他国の勇者たちが競い合う場でもあります。

 そこで力を示すことで、公国はここにあると他国に示すことができるのです。

 メイドに案内されて客間に通されると、紅茶が差し出されました。優雅に香る紅茶の湯気を見つめながら、私は深呼吸をします。

「大丈夫、私はできるわ……」

 そう自分に言い聞かせた直後、客間の扉が静かに開きました。

「エリザベート様?」
「よくぞおいでくださいました。セシリア様」
「どうしてあなたが?」
「当然です。我々ユーハイム家と、エリトール家は家族のようなものですから、フライ様が来るまでの相手はわたくしがさせていただきますわ」

 彼女は、エリック様の婚約者だというのに、フライ様との関係を何かと邪魔してくるので、少しだけ苦手に思っています。

 お茶会でも彼女と私はライバルのような関係になってしまう。

 目立つ花は二輪あると目移りしてしまうのです。

「それで? どういうつもりでこちらに? 事と次第によっては、フライ様にお会いする前にお帰りいただくかもしれません」
「……クラウン・バトルロワイヤルで、フライ様が活躍するお姿を見たくはありませんか?」
「なっ!? 見たいですわ!」

 私は一手目に最も彼女が望むであろう言葉を投げかけた。

「しかし、フライ様はあまり表に出ることを良しとしておりません。残念ながら、活躍を見ることはできませんわ」
「ですから、我々が協力するのはいかがでしょうか?」
「協力? どうするのです?」
「決まっています、私がフライ様をパートナーとして、口説きます。その援護射撃をエリザベート様にお願いしたいのです」

 無策でここにやってきたわけじゃない。フライ様は、自分と関わりにない他人に対しては無関心な方です。

 ですが、自分が大切にされている方々、特にエリザベート様、アイリーン様の言葉はちゃんと聞いてこられました。

 つまりは、将(フライ様)を射抜くためには、馬(エリザベート様)を味方に向けるのが最善手なのだ。

「分かりました。あなたの言動や動向を見させていただきます」
「お任せください」

 第一関門は突破した。

 次は、フライ様本人を説得しなければならない。

 しばらく談笑していると、現れたのは、紛れもなく私が待ち望んだフライ・エルトール様です。

「お待たせしました、公女セシリア嬢」

 彼の穏やかな声に、私は微笑みを浮かべながら立ち上がる。

「それで、今日はどのようなご用件で?」

 フライ様の言葉に、私は視線を向けます。

「実は……フライ様にお願いがあって参りました。クラウン・バトルロワイヤルで私のパートナーとなっていただきたいのです」

 その言葉に、フライ様が少しだけ驚いたような表情を見せた。そして、その隣でエリザベート様がわずかに目を細めた。

「それは素晴らしい目標ですが、僕は……そのような舞台に立つのは得意ではないんです。それに、あなたには他にも相応しいパートナーがいるのでは?」
「いえ、フライ様でなくてはなりません」

 私は即座に否定し、真っ直ぐにフライ様を見つめました。ここは折れてはいけません。押して、押して、押しまくるのです!

「お恥ずかしい話を聞いていただけますか?」
「ええ、差し支えがなければ」
「では、失礼します。実は、学園都市に入学した理由として、私はお婿さんを探しにきました」

 彼が驚いたようにこちらを見つめます

「私は、本当にあなたと共に戦いたいのです。あなたの力が必要です。どうか、私にその機会をください」

 その場の空気がピンと張り詰める。エリザベート様の視線が冷たく私を見つめる中、私は決して目を逸らさなかった。

「セシリア嬢……」

 フライ様が困惑した様子で言葉を紡ぐ。それを見て、私はさらに言葉を重ねた。

「フライ様、私はあなたをただの戦力として見ているわけではありません。あなたの人柄、その力強さ、そして何より……あなたがどんな時でも周りの人々を笑顔にする、その魅力を私は信じています」

 その言葉に、フライ様の瞳が少しだけ揺れ動いた。

「それほどまでに僕に期待を……?」
「ええ、フライ様。私はあなたと共に勝利を掴みたい。そして、出来れば未来を共に歩きたいと思っております」

 どさくさに紛れて、告白に近い言葉を選んでしまいました。ですが、フライ様が素敵だからいけないのです。

 ただ、エリザベート様の反応は意外でした。エリック様の婚約者なのに、まるで、フライ様の婚約者のように嫉妬を向けてこられました。

「もしかしたら何かあるのかもしないわね。情報は公国の命とも言えるわ。しっかりと調べないと」

 屋敷を出て、深呼吸をします。

「これでよかった……」

 なんとかフライ様に協力を取り付けることができました。

 その理由は、エリザベート様が参加するなら、守らなくちゃいけないからだそうです。

 悔しさがありますが、それでもチャンスを頂けたので、必ずフライ様とお近づきになりたいです!!

「私の覚悟は止まりませんから、覚悟してくださいね。フライ様!」

 私はもう一度、エルトール家の屋敷を振り返って一礼しました。
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