勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ

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始まり

王子ブラフ

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 第五王子という立場は、非常に微妙なものだった。

 上には4人の兄と5人の姉がいる。王国という小さな枠組みの中で、王位継承権は10番目。

 王が作ったハーレムは、女性たちの権力争いの場であり、王妃の子として生を受けた私は、第一王子であるセリフォス兄上がいなければ何度殺されていたかわからない。

 歳の離れたセリフォス兄上は聡明で、素晴らしい方だ。

「ブラフ、いいか。お前は賢くあろうとするな。道化を演じていなさい。このハーレムから脱出するためだ」

 ハーレムは常に死と隣り合わせだった。

 女性たちは権力や力を競い合い、王の寵愛を受けるために常に牽制し合っている。正室である母上ですら例外ではなく、母上は第一王子であるセリフォス兄上を溺愛しており、私のことなど見向きもしなかった。

 醜い争いを見続けるうちに、どうすれば生き延びられるのか、自分で感じ取るようになっていった。セリフォス兄上から教わった通り、私は賢い人間を演じることをやめ、他の王族や貴族よりも劣る存在として、阿呆を装うようになった。

 だが、影では兄上から魔法や剣術、勉強を教わり、教師たちにも疑われることのない状況を作り上げた。

 セリフォス兄上がなぜそこまで私にしてくれるのか、疑問に思ったことがある。

「我が王になった暁には、お前に側近として手腕を振るってほしいからだ」
「セリフォス兄上の側で?」
「ああ、そのために力をつけさせたい。他にも王になった際に役立つ友人や、信用できる者を集めている。我はその準備をしているのだ」

 セリフォス兄上はとても聡明だ。他者のことを考え、誰よりも先を見据えている。兄上が王になれば、この国はもっと良くなるだろう。

「だから、お前には領地を与え、領主として成功してほしい。その実績を持って、我がもとに戻ってこい」
「わかりました、セリフォス兄上」

 セリフォス兄上から学んだ勉強を頑張るうちに、私は他の王族たちよりも経営や軍略に長けていることに気づいた。

 だが、残念なことに私が得意としている魔法は、この国では不遇とされる具現化魔法と鑑定魔法だ。

 具現化魔法は、存在しないものを魔力で具現化できる。しかし、魔力消費が激しく、具現化している間も魔力が必要なため、無駄の多い魔法とされている。

 だから、第二王子であるユリウス兄上には…。

「本当にブラフは無能だな。使える魔法が具現化魔法とは。それに鑑定など、鑑定石があれば誰でもできるだろう? なんの意味もない」

 私は知謀に長けていたが、剣術や魔法の才能は他の兄弟姉妹たちに及ばず、本当の阿呆だった。

 だからこそ、誰よりも軽んじられ、殺されることはなかった。

 そして23歳の誕生日を迎えた日、父上から「王位継承権を放棄するなら領地をやろう」と申し出を受けた。

 これは、かつてセリフォス兄上が言っていた領地のことだ。

 兄上に視線を送ると、首を縦に振った。それを確認し、礼儀作法に則り、父上に頭を下げて申し出を受けた。

「謹んでお受けいたします。ブラフは、王位継承権を返納し、領主として務めます」
「うむ。懸命な判断だ。ブラフは聡明なのかもしれぬ。王子の座を失う貴様に家名をやろう。『グシャ』でどうだ?」

 それは父上からの皮肉であり、他の兄弟姉妹たちの笑い声が響いた。

「王から家名をいただけるなど、末代までの誇りです。ありがとうございます」
「ふむ、貴様は本当に……。いや、何も言うまい。近々、勇者召喚を行う。もし不要な存在が混じっていれば、連れていくことを許そう」
「ありがたき幸せ」

 こうして、私は王位継承権を失う代わりに、領地と『グシャ』という家名をいただいた。

「おい、ブラフ」
「ユリウス兄上? どうされました?」
「くくく、お前があまりにも間抜けだから教えてやろうと思ってな。お前はセリフォス兄上に騙されているんだよ」
「騙されている?」
「この国では男子の方が王位継承権が高い。お前が男子である以上、王位継承権は第五位だ。しかも王妃の息子であるお前は、他の男子たちよりも後ろ盾が強い。お前は十位だと思っていたようだが、それはセリフォス兄上がお前を排除するための策略だったんだ」

 ユリウス兄上の言葉を聞き、セリフォス兄上に視線を送ると、兄上は冷たい眼差しで私を見ていた。

 その眼差しは、身がすくむほどの威圧を含んでいて、私を無言で排除しようとしているようだった。

「さようなら、愚かな弟よ。精々、田舎の地方貴族として頑張るんだな」

 ユリウス兄上は高笑いをしながら去っていった。

 私は何も言えないまま、勇者召喚の日を迎えた。

 その日、私はこの城を去ることが決まっている。勇者が私のもとへ来るはずがない。そんな絶望を感じながら儀式に参加していると、勇者に巻き込まれた異世界人であるトオル・コガネイという人物がいた。

 どこか、自分と同じような境遇を感じた。仲間のいない孤独な人間。そう思うと、放っておけなくなり、声をかけてしまった。

 まさか、それが私の運命を大きく変えることになるとは、思いもしなかった。
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