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前の世界の真実
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翌日、私とハルクは少し緊張しながら、『聖なる力を宿す者』の名前をお父様に尋ねた。
「たしか、リリーナ、フ?」
「リリナフではありませんか?」
「ああ、そうだ。リリナフだ。よく分かったな?」
私とハルクは顔を見合わせた。ハルクは私を励ますように頷く。
「昨日、不思議な夢を見ました。切欠は、お父様の発した『聖なる力を宿す者』と言う言葉です。第1王子殿下をリリナフに近づけてはなりません。国が、この世界が乱れます」
戯れ言と一蹴されるのを覚悟の上で、リリナフの紡ぎ出す物語を語った。
「僕は、夜中に魘されるパールを起こして、話を聞きました。何故そんな夢を?と思いました。僕がいる限りパールが死ぬなんてことはあり得ませんし、パールがいないのに僕が学園に通えるとも到底思えません。ですが」
「分かっている。荒唐無稽な話だと言うことも、パールがそのような戯れ言を言うような娘ではないということもだ。早めに神殿に行くとしよう。パールの、あるいは2人の持つ適性に関わりがあるかもしれんからな」
お父様からは否定も肯定もされなかった。ただなるべく早く神殿に、ということで3日後に約束を取り付けてきた。通常なら1月ほど待つのだから、権力とお金の力は侮れない。
当日。天気は上々。雲ひとつない青空が広がっている。そんな中、私たち4人は、ハルクとザカルヴィア侯爵と侯爵夫人を伴って神殿にやって来た。
「お待ち申しておりました、ハザンテール公爵、ザカルヴィア侯爵」
足を踏み入れた神殿は、私の記憶そのまま清涼な空気を纏っている。そして、前回同様、神殿長自ら私たちを出迎えてくれた。すぐに控えの間に案内される。なんとなく神殿長がソワソワと落ち着かないように見えた。それを気にしてか、一息ついたところで、お父様が代表して口火を切った。
「無理を言ってすまなかったな。急ぎ、2人に授けられた適性と能力を確認したかったのだ」
「あの、そのことですが、昨晩、主神ハルシオンルー様からご神託を受けたのです。このような事態は初めてなのですが、ご子息とご息女、2人一緒に祈りを捧げるようにと」
「なんと!」
「それは、誠か?!」
「まあ!」
「なんということでしょう」
神殿長からの突然の爆弾発言に、お父様たちはこれ以上ないくらい驚いている。主神ハルシオンルー様からのご神託など早々あるものではない。個人に宛ててなど、尚更だろう。私とハルクは顔を見合わせた。なんだか、話が大きくなっている気がする。
「はい。ですので、早速お二方を祈りの間へご案内致しても宜しいでしょうか?」
「もちろんだよ」
「ハルシオンルー様も待ちかねておられるだろう」
直ぐさま、神殿長自ら案内された祈りの間でハルクと2人。並んで静かに祈りを捧げた。
「よく来たね。さあ、目を開けて」
頭の中に直接響くように声が聞こえた。そして、頭を優しく撫でる手がある。ゆっくりと目を開けた。隣には驚いた顔のハルクがいる。私も同じように驚いた顔をしているのだろう。
「ハルシオンルー様?」
ハルクが確信を持って尋ねた。
「そうだよ。君たちには大きな枷を背負わせてしまった」
ハルシオンルー様は、今にも泣きそうな顔をしている。
「時戻しのことを知っているのですか?」
「もちろん。私はこの世界を統べる神だからね。パーレンヴィアが固有スキルを発動してくれたお蔭で、この世界の崩壊が免れた。ハルクールが時戻しをしてくれたから、新しくこの世界を構築できる。この先1000年、大きな争いのない豊かな世界を与える予定だった。だが・・・・。君たちは知っているだろう?入り込んではいけない異物がこの世界にあることを」
知っているとは、私の見た夢のことを指しているのだろうか?異物とはリリナフのこと?それとも『聖なる力』のこと?
「フフ。パーレンヴィアは賢いなぁ」
「わたくし、何も口に出してはいませんのに」
「私はこれでも神だからね。君たちの心の声も聞こえる。でなければ、祈りなど聞くことは出来ないだろう?」
「確かに、そうですわね」
「話を戻そう。1度目の、時戻しの前の世界に出現した異物は、魅了の力。今の世界にある異物は、聖なる力。このどちらも私はこの世界に与えていない。魅了の力は、パーレンヴィアによって排除された。聖なる力も排除すべきものだ。でなければ、この世界は再び崩壊の危機に晒されるだろう」
驚いたなんて言葉では済まされない。この世界の崩壊とは、どういうことなのだろう。
「何故、いえ、どうやってハルシオンルー様の与えていない力がこの世界に?」
「そうだね」
ハルシオンルー様は、目を伏せた。何かあるのだろうか?
「・・・・私はね、愛に満ちあふれた穏やかな世界が好きなんだ。だって、美しいだろう?人々に困難を与えるのは、それを乗り越えようと魂が研鑽し、世界を輝かせてくれるからだ。だが、戦争は別だ。あれは、行き過ぎた欲が引き起こすもの。私の世界を荒廃させ、何も生み出すことなく疲弊させる。魅了の力など、欲の塊だ。この穏やかな世界には必要ない。本来なら直ぐさま排除せねばならぬものだ。だが、創造神も私もこの世界の魔道具を使えば、私の引いた青写真から大きく逸脱はせず、世界の崩壊は免れると判断した。対抗手段さえ在るなら脅威とはなり得ない。既に在るものを無理に排除すればそこに歪みが生じる。そのリスクを取るより、あの者がこの世界から去れば、魅了の力も排除される。だから待つことにしたのだ。もっとも、結果として、パーレンヴィアにもハルクールにも固有スキルを使わせてしまったけどね」
ハルシオンルー様は、ハルクの質問には答えず、この世界の在り様を口にした。
「僕たちに与えられた固有スキルは、保険だったのですね?」
「そうだ。君たちは、互いに《対を為す者》だから意味がある。万が一の時には、パーレンヴィアなら必ず使うと知っていたからね。そして、ハルクールがそれを黙って見ていることはないだろう?それに、誰も魅了にかからなければ、私の引いた青写真のままに世界は進んでいくはずだった。だが」
「魅了の力に囚われた者がでてしまった」
ハルシオンルー様の言葉を引き継いだハルクに、ハルシオンルー様はゆっくりと深く頷いた。
「あの者たちの魅了が解けないまま時が進むと、パーレンヴィア、君はあの場でオスナールの指示によってギラハルムの手にかかってしまうんだよ。そして、多くの国を巻き込んだ戦争に発展し、魔物の大暴走が引き起こされる。やがて世界は崩壊する」
あの世界の崩壊の道筋を頭の中で再現されて、私たちは絶句した。
それは、想像を絶するほどの凄惨さだった。
「たしか、リリーナ、フ?」
「リリナフではありませんか?」
「ああ、そうだ。リリナフだ。よく分かったな?」
私とハルクは顔を見合わせた。ハルクは私を励ますように頷く。
「昨日、不思議な夢を見ました。切欠は、お父様の発した『聖なる力を宿す者』と言う言葉です。第1王子殿下をリリナフに近づけてはなりません。国が、この世界が乱れます」
戯れ言と一蹴されるのを覚悟の上で、リリナフの紡ぎ出す物語を語った。
「僕は、夜中に魘されるパールを起こして、話を聞きました。何故そんな夢を?と思いました。僕がいる限りパールが死ぬなんてことはあり得ませんし、パールがいないのに僕が学園に通えるとも到底思えません。ですが」
「分かっている。荒唐無稽な話だと言うことも、パールがそのような戯れ言を言うような娘ではないということもだ。早めに神殿に行くとしよう。パールの、あるいは2人の持つ適性に関わりがあるかもしれんからな」
お父様からは否定も肯定もされなかった。ただなるべく早く神殿に、ということで3日後に約束を取り付けてきた。通常なら1月ほど待つのだから、権力とお金の力は侮れない。
当日。天気は上々。雲ひとつない青空が広がっている。そんな中、私たち4人は、ハルクとザカルヴィア侯爵と侯爵夫人を伴って神殿にやって来た。
「お待ち申しておりました、ハザンテール公爵、ザカルヴィア侯爵」
足を踏み入れた神殿は、私の記憶そのまま清涼な空気を纏っている。そして、前回同様、神殿長自ら私たちを出迎えてくれた。すぐに控えの間に案内される。なんとなく神殿長がソワソワと落ち着かないように見えた。それを気にしてか、一息ついたところで、お父様が代表して口火を切った。
「無理を言ってすまなかったな。急ぎ、2人に授けられた適性と能力を確認したかったのだ」
「あの、そのことですが、昨晩、主神ハルシオンルー様からご神託を受けたのです。このような事態は初めてなのですが、ご子息とご息女、2人一緒に祈りを捧げるようにと」
「なんと!」
「それは、誠か?!」
「まあ!」
「なんということでしょう」
神殿長からの突然の爆弾発言に、お父様たちはこれ以上ないくらい驚いている。主神ハルシオンルー様からのご神託など早々あるものではない。個人に宛ててなど、尚更だろう。私とハルクは顔を見合わせた。なんだか、話が大きくなっている気がする。
「はい。ですので、早速お二方を祈りの間へご案内致しても宜しいでしょうか?」
「もちろんだよ」
「ハルシオンルー様も待ちかねておられるだろう」
直ぐさま、神殿長自ら案内された祈りの間でハルクと2人。並んで静かに祈りを捧げた。
「よく来たね。さあ、目を開けて」
頭の中に直接響くように声が聞こえた。そして、頭を優しく撫でる手がある。ゆっくりと目を開けた。隣には驚いた顔のハルクがいる。私も同じように驚いた顔をしているのだろう。
「ハルシオンルー様?」
ハルクが確信を持って尋ねた。
「そうだよ。君たちには大きな枷を背負わせてしまった」
ハルシオンルー様は、今にも泣きそうな顔をしている。
「時戻しのことを知っているのですか?」
「もちろん。私はこの世界を統べる神だからね。パーレンヴィアが固有スキルを発動してくれたお蔭で、この世界の崩壊が免れた。ハルクールが時戻しをしてくれたから、新しくこの世界を構築できる。この先1000年、大きな争いのない豊かな世界を与える予定だった。だが・・・・。君たちは知っているだろう?入り込んではいけない異物がこの世界にあることを」
知っているとは、私の見た夢のことを指しているのだろうか?異物とはリリナフのこと?それとも『聖なる力』のこと?
「フフ。パーレンヴィアは賢いなぁ」
「わたくし、何も口に出してはいませんのに」
「私はこれでも神だからね。君たちの心の声も聞こえる。でなければ、祈りなど聞くことは出来ないだろう?」
「確かに、そうですわね」
「話を戻そう。1度目の、時戻しの前の世界に出現した異物は、魅了の力。今の世界にある異物は、聖なる力。このどちらも私はこの世界に与えていない。魅了の力は、パーレンヴィアによって排除された。聖なる力も排除すべきものだ。でなければ、この世界は再び崩壊の危機に晒されるだろう」
驚いたなんて言葉では済まされない。この世界の崩壊とは、どういうことなのだろう。
「何故、いえ、どうやってハルシオンルー様の与えていない力がこの世界に?」
「そうだね」
ハルシオンルー様は、目を伏せた。何かあるのだろうか?
「・・・・私はね、愛に満ちあふれた穏やかな世界が好きなんだ。だって、美しいだろう?人々に困難を与えるのは、それを乗り越えようと魂が研鑽し、世界を輝かせてくれるからだ。だが、戦争は別だ。あれは、行き過ぎた欲が引き起こすもの。私の世界を荒廃させ、何も生み出すことなく疲弊させる。魅了の力など、欲の塊だ。この穏やかな世界には必要ない。本来なら直ぐさま排除せねばならぬものだ。だが、創造神も私もこの世界の魔道具を使えば、私の引いた青写真から大きく逸脱はせず、世界の崩壊は免れると判断した。対抗手段さえ在るなら脅威とはなり得ない。既に在るものを無理に排除すればそこに歪みが生じる。そのリスクを取るより、あの者がこの世界から去れば、魅了の力も排除される。だから待つことにしたのだ。もっとも、結果として、パーレンヴィアにもハルクールにも固有スキルを使わせてしまったけどね」
ハルシオンルー様は、ハルクの質問には答えず、この世界の在り様を口にした。
「僕たちに与えられた固有スキルは、保険だったのですね?」
「そうだ。君たちは、互いに《対を為す者》だから意味がある。万が一の時には、パーレンヴィアなら必ず使うと知っていたからね。そして、ハルクールがそれを黙って見ていることはないだろう?それに、誰も魅了にかからなければ、私の引いた青写真のままに世界は進んでいくはずだった。だが」
「魅了の力に囚われた者がでてしまった」
ハルシオンルー様の言葉を引き継いだハルクに、ハルシオンルー様はゆっくりと深く頷いた。
「あの者たちの魅了が解けないまま時が進むと、パーレンヴィア、君はあの場でオスナールの指示によってギラハルムの手にかかってしまうんだよ。そして、多くの国を巻き込んだ戦争に発展し、魔物の大暴走が引き起こされる。やがて世界は崩壊する」
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