幸せの在処

紅子

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それぞれの行く先

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~ヴィンザルク~

「ここは、どこだ?」

俺は、今、見覚えのない部屋にいる。キラキラした光が降り注いでのち、瞬きの間に場所が変わっていた。お祖父様を引き摺りおろし、王となるために王城の門前にいたはずだ。ここは、俺の部屋ほどではないが、質のいい家具が備え付けられている。あれ。ここは、俺の部屋だ。待て、違う。俺は・・・・。頭が混乱した。自分の中に2つの記憶が存在するのだ。

「本当に世界が再構築したというのか?なら、ここは?パラディアスではないのか?」

主神は、ハルシオンルー様から女神ルシアンテーナ様に変わったと言っていたではないか!だから、ハルシオンルー様の言う再構築などあり得ないと高をくくっていたというのに。あの女の言うことが嘘だったということか?!

「くそっ!騙された!」

俺は、テーブルにある紅茶を煽った。

「グハッ!」

毒!!!そうだ。ここは、継承権を巡る争いが激しくて、第3王子である俺も継承権を持つ者として、常に命を狙われているんだった。俺は慌てて常備している解毒薬を口に含んだ。

「ぢぐ、しょ・・・・う」

気の休まる場所などここにはない。王位を継ぐか消されるか。これが本当の継承争いなのだと、こんなことを望んだわけじゃないと思うも、後の祭り。パラディアスを追放された俺は、ここで生き抜くしかないが、生き残れる気は微塵もしなかった。







お祖父様・・・・父上・・・・・・母・上・・・・・・・・・兄上・・・・・・・・・・・・たす、けて。




~ルークシュベート~

ここは、何処だ?私は、ムスカルと共に居たはずだ。

ゆっくりと視線を巡らす。どうやら、何処かのお屋敷。貴賓室のようだ。格調高い調度品がそれを示している。

「ああ。世界が再構築されたのだな。私は、あの世界パラディアスから放り出されたわけだ」

しかも、たったひとりで。この部屋にムスカルはいない。それが答えだろう。

「フフ。フハハハ」

嗤いがこみ上げてくる。あまりの滑稽さに涙が溢れそうになった時。バタバタと慌ただしい足音が聞こえて、この部屋の扉が乱暴に開かれた。

「ルーク!やっぱり、ここに居たか」

「は?へ?え?カル?え?どうして?」

あまりの驚きに涙は秒で引っ込んだ。混乱する私をムスカルは力強く抱き締めた。

「ルーク。もうひとつ、記憶があるだろう?俺は君の見合い相手だ」

そう言われると、別の記憶が顔を出した。私は、キャンフレール公爵家のひとり息子。婿を探して、ここリッテンバーグ侯爵家の次男からの釣書に応じたのだった。両親は、今、別室でリッテンバーグ侯爵夫妻と話をしている。

「本当に?本当にこんな都合のいいことが起こっていいのかな?女性のいない世界なんて夢じゃないのかな?」

「ハルシオンルー様に感謝しなくてはな」

「そうか。パーレンヴィア嬢の言う通りだったね。望みの叶う世界に来ることが出来た。あの時、パーレンヴィア嬢の言葉を信じてよかった。私は、絶望のあまり、貴方を道連れにするところだった」

「誰に憚ることなく、これからもずっと一緒に居られる」

「うん。うん。カルは、この世界でも私を選んでくれるの?」

「当然だ。ルーク以外いらない!ルークは?ルークは、婿を選べる立場になったけど、それでも俺を選んでくれるのか?」

「私には、カルしかいないよ。愛してるんだ」

「俺も、俺も愛してる!」

私は、ムスカルに縋り付いて泣いた。ムスカルも号泣している。あの世界パラディアスでは、隠さなければならなかった私たちの関係。幸せだったが、いつも不安だった。バレはしないかと、気を張っていた。それは、ムスカルも同じだろう。あの世界パラディアスで同性愛は不浄・不毛の関係。受け入れたパーレンヴィア嬢が特殊だったんだ。暫くして、漸く現状を受け入れて涙が止まった頃、廊下が少し騒がしくなった。

「まあまあまあ。こんなに仲良くなって!」

「え?」「あっ」

母上の言葉に自分たちの状態を顧みた。ムスカルの膝の上に居る私。無意識だった。あっちの世界パラディアスでは、これが家の中に居るときの常だったから。慌てて降りようとするも、ムスカルに阻まれた。ちょっとムッとして顔を向けると、これ以上ないほど甘く優しく微笑まれて、どうしていいか。真っ赤になった顔をムスカルの胸に押しつけるしかなかった。

「決まりだな」

「そうね。これ以上の良縁はないわ」

両親を説得するまでもなく、私は、ムスカルと婚約し、半年後には婚姻を結ぶことになった。本当に、ハルシオンルー様とパーレンヴィア嬢には感謝しても仕切れない。あちらも幸せですようにとここの神様にムスカルと2人祈りを捧げた。




~リリナフ~

「どういうこと?」

キラキラした光が降り注いで、気が付いたらここに居た。大きな門の前。奥には立派な建物が聳え立つ。私を除けるように、同じ服を着た男女が門を潜っていく。よく見ると私も同じ服を身に着けていた。

「うっそ~。知らない間に死んで、また転生しちゃったとか?」

有り得るぅ。ぽけっと考え込んでいると、後ろから誰かに突き飛ばされた。

「あら、ごめんあそばせ。そんなど真ん中に突っ立ってらっしゃるから、ちょっと脇にどいてもらおうと思いましたのよ?」

「ちょっと!いっつ!」

突き飛ばされて足を捻ったようだ。

「あらあら、まあまあ。足を捻ったのかしら?殿下、医務室まで運んで差し上げてはいかが?」

殿下?

「無理だって分かってて言ってるよね?!」

私を突き飛ばしたご令嬢の背後には、目が潰れそうな程麗しい美青年が立っていた。やだ~。素敵ぃ~。

「折角の出会いでしたのに」

「そんな出会いなくていいよ。私が君一筋なの、分かっているよね?変な女性を私に押しつけないでくれるかなぁ。どんな罰ゲーム!」

なんなんだ、この茶番は?!いくら素敵な王子様でも、私を蔑ろにする人はお断りだし!ムッとしながら、このバカバカしいこのやりとりを見ているうちに、私は、2つの記憶があることに気が付いた。今の私は、男爵令嬢で、この学園には婿探しに来たと。うん。やっぱり転生決定。そうか。死んじゃったか。折角、バルトルトやグレーネンを唆してあの国から連れ出してもらったのに。きっと、グレゴールが邪魔したから死んじゃったんだ!まっ、終わったことは考えても仕方ないよね。それより、この世界でも楽しく贅沢出来るようにしなくちゃ。

「おふたりとも、遅れますよ。こんな穢らわしい女・・・・・・など放っておいていきましょう」

その日から私は、頑張った。可愛げのある女の子を演じて、爵位の低い令息に然り気無く声をかけた。いきなり高位の貴族に声をかけるのは悪手だと知っているから、そんな愚は犯さない。

「ジェルリー様。ご機嫌よう」

「・・・・・・名前で呼ばないでくれ!」

ただ挨拶しただけなのに、みんな私を見ると逃げていく。なんで?!どうしてよぉ!

「あの方、気付いてらっしゃらないのかしら?」

「まさか?!」

気付かないって何を?

「知らない?など、そんなことはないですわよね?」

「皆さま、わたくしたちに出来るのは、見守ることだけですわ」

「おっしゃるとおりですわね」

だから、何がよ!イライラするったらありゃしない。学園に通う男の子だけじゃなくて、街にいる屋台のおっさんにも避けられる始末。流石の私も凹んで、長期の休みは寮から実家に帰省した。

「!!!あなた!あなた!!!」

「どうし・・・・。リリナフ!なんて、なんて髪色になってしまったんだ?!」

「は?髪色?」

「ピンクだなんて。よく外を歩けたものだわ」

「ピンクの何が悪いのよ!」

「あなた、本気で言ってるの?」

お母様は愕然としている。

「ええ?」

「その髪色はな、男を漁っていますという証なんだぞ?!」

「えっ?!そんなことしてないし!」

してないしてない。ちょっと、声をかけてるだけ、転生してからは。前世では、それなりにやることやってたけど、産まれる前のことだし、関係ないよね?

「いいや。髪色は嘘がつけない。いいか。その髪色が、赤やオレンジに変わるまで家から出ることは許さん!」

結局私は、髪色がピンクから変わることはなく、世間体を気にした両親から、隣国の相応しい場所高級娼館に売り飛ばされた。が、私には、その素質があったようで、チヤホヤされて気分は上々。自分の店を持つまでになった。ちょっと、方向性は変わったけど、これもありでしょ?!






 ~END~













 最後までお読みいただき、ありがとうございました\(^o^)/
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