巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子

文字の大きさ
31 / 36

アダベルトの歓喜

しおりを挟む
「それで、俺だけに話してくれることがあるんだろう?」

陛下たちとの話し合いを終え、シーアーバンスの自宅に戻った途端、アダベルトに捕まった。確かにそう言う話だったけど、今、話す必要がある?さっきの話し合いで、非常に疲れてるんだけど。別の日にしてほしいなぁとアダベルトに視線で訴えた。

「忘れるだろう?」

ギクッとする。私を掴むアダベルトの手に少しだけ力が込められた。逃がすつもりはなさそうだ。

「ワスレルナンテ、ソンナ・・・は、ははははは」

ジトッとした視線を注がれる。

『サイカよ、諦めて話せ』

ヴィーグは溜め息混じりにそう言うと、お気に入りのラグに横になり目を閉じた。我関せず、という姿勢だ。仕方ないと諦めた私は、私だけのスキルを呼び出した。

「これ、見える?」

私の目の前には、パソコンが鎮座している。ヴィーグ以外に見せるのは初めてだから、どう説明したものか。

「・・・・なんだ、その妙ちくりんな物は?それは板なのか?なぜ、立てているんだ?サイカは板を出せるスキル持ちなのか?」

板を出すスキルって何?!そんなスキルがあるの?

「これ、板じゃないから!これで、魔法陣を創作したり描いたり出来るの。私のスキル!」

ともあれ、これを見ただけでは、理解できないだろう。実際、アダベルトの頭上にも????といくつもの?が並んでいる。

「まあ、見てて」

私は、無限鞄の魔法陣を画面に呼び出して、それを常備している布に描いた。まあ、ペンを当てるだけなんだけど。

「は?!」

それを見ているアダベルトの驚愕ぶりはスルーして、もうひとつ、灯りの魔法陣を魔石に刻む。

「待て待て待て待て。は?・・え?」

「はい、どうぞ」

私は、出来たてほやほやのそれらを困惑しているアダベルトの手に乗せてあげた。まじまじとそれらを凝視するアダベルト。ひっくり返したり、透かしてみたり、指でなぞってみたり。

「え?!なにがどうなって?」

「それが、私が神様からもらったスキル。魔法陣を簡単に複製できちゃうの。ヴィーグ以外には見えないけど、ここに今まで私が描いたり創ったりした魔法陣とか創作中の魔法陣なんかが記憶されてる」

「・・・・まじかぁ~。これならどれだけ複雑でも狂いなく描けるな」

『ただし、それに魔法陣を描き込むのは相当の腕と知識がないと無理だがな。我は未だにサイカがどうやってそれに描き込んでいるのかサッパリ分からん』

まあ、特殊な技術がいるからね。

「はぁ。他者には見えないっていうのは保険か?」

『まあな。神もサイカの気質はよく存じておる』

「先見の明のあるお方でよかったよ。これは、誰にも知られてはダメなやつだな」

若干の戸惑いと驚嘆、そして、大いなる呆れを含んだ視線を向けられた。器用なことをする。

「分かってる」

これは、さすがに私もヤバいと重々承知してるから、そんなに疑いに満ちた眼差しを向けないでもらいたい。

「本当に分かってるのか?これが知られれば、監禁軟禁待ったなしだぞ?もしくは、暗殺だ。俺は確実に葬られるだろうな」

「暗殺・・・・」

さすがにそこまでは考えなかった。

『それに、サイカは魔法陣創造の能力も持っておる。その貴重性は理解できるな?』

「マジかぁ・・・・。隠し通せなければ、隷属監禁暗殺待ったなしだな。どんなに複雑な魔法陣であっても、その能力があれば、難しくはない。加えて、そのスキルだ。戦争にはうってつけだな」

そんな大げさな・・・・とは、言えない私がいた。私を隷属出来るのなら、命令ひとつで、一国を滅ぼす魔法陣を創らせることも出来てしまうのだ。前の世界の戦争を参考にして、武器を応用すればいい。一歩間違えれば、この世界そのものがなくなるかもしれないけれど。

『そのようなこと我が許すはずがなかろう。サイカの寿命にかかわる』

「ヴィーグ」

その心強い言葉に感激して、私は、思わずヴィーグに抱きついた。その途端、バシン、バシンという音が響き始める。アダベルトの尻尾が不機嫌にソファーを叩き出したのだ。

「抱きつくなら、俺にしてほしいんだが」

両手を広げられても、ねぇ。自分からその中に収まりに行くなんて、難易度の高いこと、出来るわけない。恋愛初心者以下には厳しすぎる。離宮のお掃除が終わってから、今までとは打って変わって、アダベルトは、ぐいぐいと積極的に私との距離を物理的にも縮めてくるのだ。お義姉様方からの入れ知恵アドバイスなのだろうが、旅の間中、帰ってきてからも、その押せ押せ甘々なアダベルトに、私は既に瀕死の状態である。そんなアダベルトをスルーして、うりうりとヴィーグの首に顔を埋めた。

『はぁ。サイカに何を期待しておるのだ、お主は。色恋に疎いサイカにそのようなことをしても通じんぞ』

「ムッ。それもそうだな」

遺憾の意。いくら恋愛音痴の私でもさすがに分かるし!と、心の中で反論しつつもヴィーグのもふもふを堪能していたわけだが、ひょいっとアダベルトに抱えられてしまった。アダベルトによるイチャイチャタイムの始まりである。いつも旅行中より濃厚なそれに理性がゴリゴリと削られ、本能に絡め取られていく。なけなしの半身としての本能に。

「いい加減慣れような」

「はぅ」

無理です。本当に無理なんです。ぱたぱたと藻掻いてみるも、ガッチリと固定されていて、乗せられた膝の上から抜け出すことは叶わなかった。私の抵抗などないかのように旋毛のあたりからチュッチュッと聞こえてくる。尻尾がさわさわと腕を撫でた。いつもと何か違う。

「ひゃっあ」

ヒクヒクと無意識に反応する耳をハムッと咥えられた。初めてのことに背筋がぞわっと毛羽立つ。なにこれぇ・・・・。

『我は影に入る。半身との戯れは心身の安定に繋がる。此奴が暴走する前にそろそろ観念することだな。よく耐えた方だ』

「まっ、まって!!!」

ヴィーグは私の言葉を聞くことなく、無情にもスッと消えてしまった。

「ヴィーグのお許しも出たことだし、覚悟はいいな?」

よくない!よくないよぉ!まだ、まだ早いからぁ!!!

その気持ちのまま、クルッと勢いよく振り返った自分を殴ってやりたい。そこには、捕食者の顔をしたアタベルトがいた。笑顔のはずなのに、弧を描くように細められた目が身体を竦ませる。

「ひぇ」

本能的に身体がプルプルと震えだした。それを宥めるようにアタベルトのキスが降り注ぐ。

「怖くない怖くな~い」

嘘だ!絶対嘘だ!既に怖いから!

「あ、あのね。明日もお仕事だから、ね?」

「大丈夫だ。俺もサイカも受けている依頼はないだろう?暫く顔を見せなくてもいつものことだ」

日頃の行いが物を言う。度々、ギルドから足が遠のく私とその護衛お守りが少しの間行方をくらましても、誰も心配しない。なんてこった。そして、私は、アタベルトにそれはそれは美味しくいただかれたのだった。体調の整った10日後、ギルドにいたみんなから生温い視線をもらったのは、抹消してしまいたい出来事のひとつだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

蝋梅
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

処理中です...