山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子

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山賊、狼狽える

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暫くして食堂で別れたファビアーノが俺の執務室にやって来た。客間に通し、後ろに控えようとするランツに書類を片づけておくように指示を出して追い出した。

「誰にも聞かれたくない」

そう言うだけで、ファビアーノは盗聴防止の結界を張ってくれた。

「まあ、今朝のフィリアの様子からなんとなく分かりますが、何がありました?」

「それなんだが・・・・」

俺は、昨日の夜のことをどう話すべきか、言葉が続かない。口を引き結び、言葉を探す。顔が熱い。

「プププ、フィリアに襲われでもしましたか?」

「なっ!・・・・!」

ファビアーノの発言にガタッと椅子を蹴倒すように立ち上がった。と同時に動揺し過ぎて目が泳いでしまう。

なぜ分かった?!

いろいろ衝撃的すぎて言葉が出てこない。昨日はいつものようにフィーを枕元に寝かせ、俺も丸くなるフィーを撫でつつ眠ったはずなんだ。なのに・・・・。口許を温かなものが這う感覚で目を覚ました。真っ白な毛が目に入って口を開けたら・・・・。いや、それ以上は言えん。

「昨日のフィリアは魔力が相当不足していましたからね。専用の魔力ジュースも今は持ち合わせがない。間近にある魔力を求めるのは仕方ありません。お蔭でフィリアは元気ですよ?」

「分かっていたなら、教えておいてくれ」

ハァ。わざとだな。

「教えたところで回避できませんよ。回避できたとして、弱ったフィリアに貴方から・・・・与えるなんて難易度の高いことできますか?」

「ゥグウ・・・・」

出来ないだろうな。いや、襲われるくらいなら、男として・・・・。いや、だが・・・・。

「それにしても、余程相性がよかったようですね?ダメモトだったんですけどね。本来なら我々魔女と人の魔力は似て非なるもの。いくら魔力譲渡をしたとしてもあれほど回復はしないのですが・・・・」

「そうなのか?なら、魔女の姿に戻ることは?」

「まずあり得ません」

だが、あれは・・・・。あの頭を掴む細い腕と押し付けられた柔らかさは本物だ。それに・・・・。

「フィーの魔女の姿はどんなだ?」

ファビアーノは眉をピクリと跳ね上げた。

「何故、そのようなことを?」

いつもとは違うファビアーノの鋭くこちらを牽制するような口調は、俺に、こいつも魔女だということを思い出させた。

「いや、・・・・その、夕べ、フィーが魔力を補給している時に、魔女の姿になったんだ。髪は長くて、灯りがないからはっきりとは分からなかったが、色はたぶん白銀色。瞳の色は分からない。身長は160cmないくらいの・・・・その、線は細いが、出る所は出た感じの・・・・」

しどろもどろなのは分かっているが、あの柔らかくて不思議と安らげる香りを思い出すと落ち着かない。ファビアーノにからかわれると分かっていても、堪らず片手で顔を覆った。

「は?元の姿に戻った?本当に?」

からかわれると思っていたファビアーノの反応がおかしい。どうやらフィーが魔女の姿になったことに驚いているようだ。顔を覆う手をはずし、ファビアーノを見ると、呆気にとられて呆然と俺を見ている。なかなか珍しい状況だ。

「あ、ああ。満足した後、暫く魔女の姿で眠っていたから間違いない。10分程で元の子ネコに戻ったがな」

「・・・・。確かにフィリアは、細身で小柄の割に胸はしっかりありますし、髪は白銀です。フフフ、良いことを聞きました。早速、師匠に報告せねば。この事は他言無用です。例え、国王陛下であっても。いいですね?」

「分かった」

その後、ファビアーノは見たことがないくらい上機嫌に俺の執務室を出ていった。午後からは第3王子の起こした騒動の話し合いだ。魔法で操られていたなんて、遠い過去に1度あったか?というほど稀な事案だ。どう決着をつけるのがいいのか?はっきり言って気が重い。

ああ、フィーを撫でたい。あのもふもふに癒されたい。

「団長。凶悪な顔してないで、さっさと書類を片付けてください」

む。
凶悪な顔とは心外だ。ただ、フィーの毛並みを思い出していただけなのに・・・・。

「ですから、その人を殺しそうな顔を止めてください」

「お前なぁ。そんな顔はしていない」

「・・・・」

なんだ、その沈黙は!

ギロッとランツを睨むと、またまた書類を出しに来た新人が「ひぃ!」と扉に張り付いた。

「・・・・。団長、新人を脅かさないように。顔を上げないでください。書類以外見ない!」

酷い言われようだが、怯えさせたことは事実だ。釈然としないが、仕方ない。

「悪かったな・・・・」

俺は、おとなしく書類に目を通すことに専念した。
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