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閑話 城下でデート①
ミカエル様は、約束通り城下に連れてきてくれた。目に映るものが物珍しくて、キョロキョロしてしまう。
王都を警備する騎士団の視察という名目で、城下に降りた。用意された豪商の娘に見えるような膝下丈のワンピースを着て、ミカエル様と離宮から馬に乗って移動だ。勿論、現代っ子の私は、乗ったことなどないから、ミカエル様と相乗り。騎乗したときの高さが・・・・、高い。高所恐怖症ではないけど、安定感が全くなくて怖い。私をひょいと横向きに乗せた後、すぐに後ろに騎乗したミカエル様のマントに入り込み、しがみついた。
「何をしているのだ?」
すっと腰に腕を廻し私の身体を支えてくれたが、それでもしがみつくのは止めない。
「いえ、あの、高いし安定感がなくて・・・・」
「まあいい。行くぞ」
ミカエル様のお蔭で、安定感は得られたので、ちょっとだけマントの隙間から外を覗くが、馬に慣れて、風を受けて気持ちいいとか、そういうレベルになるには時間がかかりそうだ。走り出してもまだ、しがみついている私に、頭上から噛み殺したような笑い声が聴こえてきて、むっとしたが、まあ、仕方ない。ミカエル様が楽しそうでなによりだ、フン!
王都は意外と広かった。馬でも城門からぱかぱかと30分程。ミカエル様の後ろには同じように騎乗した騎士がひとり付き従っている。この人は、最近離宮でも時々見かけるが、不用意に近づいてはこない。
詰め所に着くと、ミカエル様に縦抱きにされて移動する。出迎えのため待っていた騎士達がマントに収まっている私に驚いていた。そんなことより、たかだか30分という距離だったにも係わらず、私の下半身は限界だった。ミカエル様がひらりと馬から降り、私は、ほんの少しだけ馬上でひとり。それが仇となった。ミカエル様という支えを失った私は、ころっと後ろへ。
「はへ」
落ちる~!
と思った瞬間、ぐっと身体が前に引かれた。ぽすっと収まったのは、ミカエル様の腕の中。
「何をしているのだ・・・・」
呆れを含んだ声が聴こえて、私の足が床に降ろされた。無事に・・ではないけど、下馬し立たせてもらったが、足に力の入らない私は、踏ん張ってみてもプルプルして、そのまま座り込みそうだ。それに気づいたミカエル様に再び抱き上げられてしまった。
「世話の焼けることだ」
申し訳ない。
でも、現代人なんてこんなもんだ、と思いたい。
騎士達は、案内しながらも、こちらをチラチラと気にして視線を寄越してくるのが鬱陶しいし、ぞわぞわする。ミカエル様のマントに出来るだけ埋もれながら進むこと数分。目的の場所に着いたようだ。
コンコンコン
「団長、お連れしました」
「入れ」
「どうぞお入りください」
「案内ご苦労」
中には、でっぷりとしたつぶらな瞳の中年騎士と同じく、でっぷりとしたタレ目の二十代中盤くらいと思われる青年騎士がいた。他にもひょろりとした騎士がひとりと女性の騎士がふたり、壁に沿って立っている。
「殿下、お待ち申しておりました」
敬礼と共に迎え入れられた。
「キース、普段通りでかまわん。畏まられると気味が悪い」
中年騎士は、キースと言うらしい。抱っこされた私に気付き少し目を見張ったようだが、すぐに元の顔に戻った。
「失礼な奴だ。で、そちらが今日ご一緒するご令嬢か?」
ちらちらとこちらを伺っていた視線が、一斉に私を捉えた。ここで隠れては失礼になると思い、女性騎士に視線を定めた。男は、なるべく視界に入れたくない。ふたりとも美人さんだ。スラッとして、勝ち気そうな姉御肌の人とタレ目にほくろのがある妖艶な、という言葉がぴったりの人。
「ああ。男が苦手だから、あまり近づくな」
「・・・・それは、無理がないか?・・独占欲か?まあ、分からんでもないがな」
つぶらな瞳をぱちくりとさせながら、呆れ顔だ。
「違う!何故そうなる!本当にダメなんだ」
「いやいや、お前に抱き上げられている時点で無理があるだろう?お前が平気で男が苦手とか。男よりお前の方が怖いだろ?」
周りも、うんうん、と頷いている。
残念ながら、私はミカエル様よりも貴方達の方が怖い。
「残念ながら、本当ですよ、キース様。私がここ数日見ていた限り、絶対に男性には近づきませんし、殿下が傍におられないときは、常に周りを警戒しておいででした」
しゃべった。初めて声を聞いたよ。離宮でも近づいては来なかったから、そんなに観察されてるなんて知らなかった。
「・・・・なんて、残念な・・・・」
皆さん、可哀想な人を見る目で見ないでください。
「そう言うことだ。不用意に近づくなよ。で、今日の予定は?」
ミカエル様は、ソファーに私を降ろして、キース様と話し始めた。
「おいおい。その前に、こちらのご令嬢と挨拶くらいさせろ」
「必要ないだろう?」
声だけで、本当に必要ないと思っているのがわかった。
「あのなぁ・・・・。まあ、いい。お嬢さん、私は騎士団長のキースだ。今日の護衛を勤める。宜しくな」
団長さんは、ミカエル様を無視して私に向き直り、自己紹介してくれた。
私もするべき?名前は言ってもいいの?
どうしようかと、ミカエル様を見上げると、頷いてくれたので、自己紹介することにした。
「スミレと言います。今日は、よろしくお願いいたします」
「スミレ様、か。変わった名前だな」
「はあ・・・・」
まあ、そうだろうな。あまり迂闊なことを言わないうちに、終了したい。
「リディア、マルティナ、マルコス、来い。・・・・この3人も護衛として同行します。お前ら、挨拶しとけ」
「えっ、団長、俺は?紹介くらいして」
「お前は、留守番だろう。必要ない」
「スミレ様、俺は、第2騎士隊長のケント。よろしくね♪」
ここの人たちは上司の扱いが結構雑だ。団長さんを無視して挨拶してきた。
この人、苦手だ。チャラいし、面倒なタイプだ。それに、その容姿でかっこつけられてもちょっと反応に困る。腰を屈めて手まで出してきたけど、握手ですか?しませんよ。今は近くにミカエル様が居るから比較的落ち着いていられるけど、普段ならこの距離はアウトだ。
じっと無言でその手を見ているとミカエル様が払い除けてくれた。
「だから、不用意に近づくなと言ったであろうが」
「お前は引っ込んでろ」
「えー、将来美人確定なのに挨拶もしないなんて、あり得ないでしょう?お知り合いになれるチャンスは逃せませんよ。マルコス、護衛代われ」
「嫌ですよ。自分から、ご令嬢の護衛なんて面倒なことするくらいなら、留守番するって言ったんでしょうが」
こっちで男達がごちゃごちゃとやっている隙に、女性騎士のふたりが挨拶をしくれた。
「今日の護衛を勤めるリディアです。よろしくお願いいたします」
姉御肌タイプの人は、リディア。赤いストレートの髪に新緑の瞳を持つ。キリッとしてカッコいい。
「私は、マルティナ。よろしく」
妖艶なお姉さんは、マルティナ。綺麗なブロンドの髪にピンクの瞳で、騎士には見えない。お胸も立派だ。
「スミレです。座ったままですみません。初めて馬に乗ったので、足が・・・・。こんな美人のお姉さんの護衛なんて、光栄です。出来れば、仲良くしてください」
ペコンと頭を下げて挨拶して、にっこりと笑った。お姉さん達は、何故か困惑顔だ。なんで?
「スミレ、私が言えたものではないが、彼女達は余り美人という部類ではないのだ」
「知ってます。ですが、私の審美眼が狂っていると言われようが、私にとっては、ミカエル様もこのお姉さん達も美人さんなんです!好みなんて人それぞれでしょう?眺めてるだけで幸せです♪」
ミカエル様を除く全員が、ポカンと口を開けている。
「まじか・・・・」
「では、スミレ様は、殿下のお顔をご覧になったことがあると?」
「ありますよ。その辺の芸術作品も裸足で逃げるくらい神秘的でうつくモガモガ・・・・」
ミカエル様の大きな手が私の賛辞を遮った。
「スミレ、止めなさい」
「モガ」
こくこくと首を縦に振ると手が離れていった。そっとミカエル様を窺うとうっすらと耳が赤い気がする。どうやら、誉められなれていなくて、恥ずかしかったようだ。他の人たちは、信じられないと見開いている。
「あの!・・・・では、隊長のことは、どう見えているんでしょうか?」
なんで、隊長さん?どう見えてるか?うーん、本音は言えない。きっと、こっちではカッコいいとかハンサムという部類なんだろうな。でもねぇ・・・・。
「・・・・あー、出来るだけ・・・・近づかないで欲しい、かな?すみません」
当の隊長さんは、ショックを受けたような顔だけど、これだけは譲れません。
「えっと、そうじゃなくて、隊長は女性のファンが多いの。とってもモテるの。審美眼が狂ってるって言うけど、カッコいいって思うでしょ?!」
隊長さんも満更ではないようで、期待の眼差しを向けてくる。他の人たちも、ミカエル様までが私の言葉を待っている。どうしよう。
「・・・・えっと、愛嬌があるように見えなくもない・・・・ような?その、チャラさがなければ、もう少しましな・・・・、えっと・・・・カッコいい?と思う女性もいるなら、それはそれで・・・・いいというか・・・・」
どうしよう。言葉にすればするほど、墓穴を掘っているような・・・・。隊長さんもだんだんと複雑そうな顔になってきちゃったよ。
「ふ、はははは。残念だったな、ケント。しっかり振られてるぞ」
豪快な笑い声がしたかと思ったら、バンバンと隊長さんの背中を叩いている団長さんがいた。団長さんに感謝だ。これ以上のフォローは無理。ミカエル様も肩が揺れている。あれは、絶対に笑いを堪えている。助けてくれてもよかったと思うんだけど!
「チャラい・・・・。初めて言われた・・・・。チャラいのか、俺?」
あっ、そっちが気になりますか。しかも無自覚でしたか。充分、チャラいですよ?
「自己紹介は、終わっ「自分がまだです!」」
「マルコスと言います。よろしくお願い「よし!終わったな」・・・・」
不憫な人だ。
「さあ、ちゃっちゃと用を済ませるぞ。リディアとマルティナは、ここでスミレ様の護衛だ。ケントとジークは、俺と殿下の補佐、マルコスは、扉の外で見張りだ。他の騎士どもを近づけるなよ。行くぞ」
「「「「「は!」」」」」
男性が全員出ていった後、私達はおしゃべりに花を咲かせた。王都で流行っているものや手土産、お土産に良いもの、最近流行のドレスなど、話題には事欠かない。一番興味を引いたのは、この季節の果物。桃のようなものやマンゴーと思われるものが今の旬らしい。絶対に買う!
女の子との話しは楽しいな♪
王都を警備する騎士団の視察という名目で、城下に降りた。用意された豪商の娘に見えるような膝下丈のワンピースを着て、ミカエル様と離宮から馬に乗って移動だ。勿論、現代っ子の私は、乗ったことなどないから、ミカエル様と相乗り。騎乗したときの高さが・・・・、高い。高所恐怖症ではないけど、安定感が全くなくて怖い。私をひょいと横向きに乗せた後、すぐに後ろに騎乗したミカエル様のマントに入り込み、しがみついた。
「何をしているのだ?」
すっと腰に腕を廻し私の身体を支えてくれたが、それでもしがみつくのは止めない。
「いえ、あの、高いし安定感がなくて・・・・」
「まあいい。行くぞ」
ミカエル様のお蔭で、安定感は得られたので、ちょっとだけマントの隙間から外を覗くが、馬に慣れて、風を受けて気持ちいいとか、そういうレベルになるには時間がかかりそうだ。走り出してもまだ、しがみついている私に、頭上から噛み殺したような笑い声が聴こえてきて、むっとしたが、まあ、仕方ない。ミカエル様が楽しそうでなによりだ、フン!
王都は意外と広かった。馬でも城門からぱかぱかと30分程。ミカエル様の後ろには同じように騎乗した騎士がひとり付き従っている。この人は、最近離宮でも時々見かけるが、不用意に近づいてはこない。
詰め所に着くと、ミカエル様に縦抱きにされて移動する。出迎えのため待っていた騎士達がマントに収まっている私に驚いていた。そんなことより、たかだか30分という距離だったにも係わらず、私の下半身は限界だった。ミカエル様がひらりと馬から降り、私は、ほんの少しだけ馬上でひとり。それが仇となった。ミカエル様という支えを失った私は、ころっと後ろへ。
「はへ」
落ちる~!
と思った瞬間、ぐっと身体が前に引かれた。ぽすっと収まったのは、ミカエル様の腕の中。
「何をしているのだ・・・・」
呆れを含んだ声が聴こえて、私の足が床に降ろされた。無事に・・ではないけど、下馬し立たせてもらったが、足に力の入らない私は、踏ん張ってみてもプルプルして、そのまま座り込みそうだ。それに気づいたミカエル様に再び抱き上げられてしまった。
「世話の焼けることだ」
申し訳ない。
でも、現代人なんてこんなもんだ、と思いたい。
騎士達は、案内しながらも、こちらをチラチラと気にして視線を寄越してくるのが鬱陶しいし、ぞわぞわする。ミカエル様のマントに出来るだけ埋もれながら進むこと数分。目的の場所に着いたようだ。
コンコンコン
「団長、お連れしました」
「入れ」
「どうぞお入りください」
「案内ご苦労」
中には、でっぷりとしたつぶらな瞳の中年騎士と同じく、でっぷりとしたタレ目の二十代中盤くらいと思われる青年騎士がいた。他にもひょろりとした騎士がひとりと女性の騎士がふたり、壁に沿って立っている。
「殿下、お待ち申しておりました」
敬礼と共に迎え入れられた。
「キース、普段通りでかまわん。畏まられると気味が悪い」
中年騎士は、キースと言うらしい。抱っこされた私に気付き少し目を見張ったようだが、すぐに元の顔に戻った。
「失礼な奴だ。で、そちらが今日ご一緒するご令嬢か?」
ちらちらとこちらを伺っていた視線が、一斉に私を捉えた。ここで隠れては失礼になると思い、女性騎士に視線を定めた。男は、なるべく視界に入れたくない。ふたりとも美人さんだ。スラッとして、勝ち気そうな姉御肌の人とタレ目にほくろのがある妖艶な、という言葉がぴったりの人。
「ああ。男が苦手だから、あまり近づくな」
「・・・・それは、無理がないか?・・独占欲か?まあ、分からんでもないがな」
つぶらな瞳をぱちくりとさせながら、呆れ顔だ。
「違う!何故そうなる!本当にダメなんだ」
「いやいや、お前に抱き上げられている時点で無理があるだろう?お前が平気で男が苦手とか。男よりお前の方が怖いだろ?」
周りも、うんうん、と頷いている。
残念ながら、私はミカエル様よりも貴方達の方が怖い。
「残念ながら、本当ですよ、キース様。私がここ数日見ていた限り、絶対に男性には近づきませんし、殿下が傍におられないときは、常に周りを警戒しておいででした」
しゃべった。初めて声を聞いたよ。離宮でも近づいては来なかったから、そんなに観察されてるなんて知らなかった。
「・・・・なんて、残念な・・・・」
皆さん、可哀想な人を見る目で見ないでください。
「そう言うことだ。不用意に近づくなよ。で、今日の予定は?」
ミカエル様は、ソファーに私を降ろして、キース様と話し始めた。
「おいおい。その前に、こちらのご令嬢と挨拶くらいさせろ」
「必要ないだろう?」
声だけで、本当に必要ないと思っているのがわかった。
「あのなぁ・・・・。まあ、いい。お嬢さん、私は騎士団長のキースだ。今日の護衛を勤める。宜しくな」
団長さんは、ミカエル様を無視して私に向き直り、自己紹介してくれた。
私もするべき?名前は言ってもいいの?
どうしようかと、ミカエル様を見上げると、頷いてくれたので、自己紹介することにした。
「スミレと言います。今日は、よろしくお願いいたします」
「スミレ様、か。変わった名前だな」
「はあ・・・・」
まあ、そうだろうな。あまり迂闊なことを言わないうちに、終了したい。
「リディア、マルティナ、マルコス、来い。・・・・この3人も護衛として同行します。お前ら、挨拶しとけ」
「えっ、団長、俺は?紹介くらいして」
「お前は、留守番だろう。必要ない」
「スミレ様、俺は、第2騎士隊長のケント。よろしくね♪」
ここの人たちは上司の扱いが結構雑だ。団長さんを無視して挨拶してきた。
この人、苦手だ。チャラいし、面倒なタイプだ。それに、その容姿でかっこつけられてもちょっと反応に困る。腰を屈めて手まで出してきたけど、握手ですか?しませんよ。今は近くにミカエル様が居るから比較的落ち着いていられるけど、普段ならこの距離はアウトだ。
じっと無言でその手を見ているとミカエル様が払い除けてくれた。
「だから、不用意に近づくなと言ったであろうが」
「お前は引っ込んでろ」
「えー、将来美人確定なのに挨拶もしないなんて、あり得ないでしょう?お知り合いになれるチャンスは逃せませんよ。マルコス、護衛代われ」
「嫌ですよ。自分から、ご令嬢の護衛なんて面倒なことするくらいなら、留守番するって言ったんでしょうが」
こっちで男達がごちゃごちゃとやっている隙に、女性騎士のふたりが挨拶をしくれた。
「今日の護衛を勤めるリディアです。よろしくお願いいたします」
姉御肌タイプの人は、リディア。赤いストレートの髪に新緑の瞳を持つ。キリッとしてカッコいい。
「私は、マルティナ。よろしく」
妖艶なお姉さんは、マルティナ。綺麗なブロンドの髪にピンクの瞳で、騎士には見えない。お胸も立派だ。
「スミレです。座ったままですみません。初めて馬に乗ったので、足が・・・・。こんな美人のお姉さんの護衛なんて、光栄です。出来れば、仲良くしてください」
ペコンと頭を下げて挨拶して、にっこりと笑った。お姉さん達は、何故か困惑顔だ。なんで?
「スミレ、私が言えたものではないが、彼女達は余り美人という部類ではないのだ」
「知ってます。ですが、私の審美眼が狂っていると言われようが、私にとっては、ミカエル様もこのお姉さん達も美人さんなんです!好みなんて人それぞれでしょう?眺めてるだけで幸せです♪」
ミカエル様を除く全員が、ポカンと口を開けている。
「まじか・・・・」
「では、スミレ様は、殿下のお顔をご覧になったことがあると?」
「ありますよ。その辺の芸術作品も裸足で逃げるくらい神秘的でうつくモガモガ・・・・」
ミカエル様の大きな手が私の賛辞を遮った。
「スミレ、止めなさい」
「モガ」
こくこくと首を縦に振ると手が離れていった。そっとミカエル様を窺うとうっすらと耳が赤い気がする。どうやら、誉められなれていなくて、恥ずかしかったようだ。他の人たちは、信じられないと見開いている。
「あの!・・・・では、隊長のことは、どう見えているんでしょうか?」
なんで、隊長さん?どう見えてるか?うーん、本音は言えない。きっと、こっちではカッコいいとかハンサムという部類なんだろうな。でもねぇ・・・・。
「・・・・あー、出来るだけ・・・・近づかないで欲しい、かな?すみません」
当の隊長さんは、ショックを受けたような顔だけど、これだけは譲れません。
「えっと、そうじゃなくて、隊長は女性のファンが多いの。とってもモテるの。審美眼が狂ってるって言うけど、カッコいいって思うでしょ?!」
隊長さんも満更ではないようで、期待の眼差しを向けてくる。他の人たちも、ミカエル様までが私の言葉を待っている。どうしよう。
「・・・・えっと、愛嬌があるように見えなくもない・・・・ような?その、チャラさがなければ、もう少しましな・・・・、えっと・・・・カッコいい?と思う女性もいるなら、それはそれで・・・・いいというか・・・・」
どうしよう。言葉にすればするほど、墓穴を掘っているような・・・・。隊長さんもだんだんと複雑そうな顔になってきちゃったよ。
「ふ、はははは。残念だったな、ケント。しっかり振られてるぞ」
豪快な笑い声がしたかと思ったら、バンバンと隊長さんの背中を叩いている団長さんがいた。団長さんに感謝だ。これ以上のフォローは無理。ミカエル様も肩が揺れている。あれは、絶対に笑いを堪えている。助けてくれてもよかったと思うんだけど!
「チャラい・・・・。初めて言われた・・・・。チャラいのか、俺?」
あっ、そっちが気になりますか。しかも無自覚でしたか。充分、チャラいですよ?
「自己紹介は、終わっ「自分がまだです!」」
「マルコスと言います。よろしくお願い「よし!終わったな」・・・・」
不憫な人だ。
「さあ、ちゃっちゃと用を済ませるぞ。リディアとマルティナは、ここでスミレ様の護衛だ。ケントとジークは、俺と殿下の補佐、マルコスは、扉の外で見張りだ。他の騎士どもを近づけるなよ。行くぞ」
「「「「「は!」」」」」
男性が全員出ていった後、私達はおしゃべりに花を咲かせた。王都で流行っているものや手土産、お土産に良いもの、最近流行のドレスなど、話題には事欠かない。一番興味を引いたのは、この季節の果物。桃のようなものやマンゴーと思われるものが今の旬らしい。絶対に買う!
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