番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子

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今までと違います?

今度は、侯爵家の令嬢だった。今までで一番高い爵位だ。そして、死に戻りの中で初めて兄が存在した。5歳離れた兄は私をとても可愛がってくれる。溺愛と言っても過言ではない。

「レイア、明日はお兄様と王宮だよ?ちゃんと用意しておいて」

「はい。アイリス様にお会いできますか?」

アイリス様は第1王子殿下の番だ。この国の公爵家のご令嬢であり、私よりも3歳年上で、殿下よりも2歳下になる。アイリス様はいつもニコニコとしていて優しくしてくださるから大好きだ。

「レイアはアイリス様が大好きだよね。お兄様とどっちが好きなのかな?」

「もちろん、お兄様ですわ」

ここは即答しておかねば、お兄様の機嫌が悪くなる。そうすると私はお兄様のご機嫌が直るまで、餌付けのごとくお菓子を口に運ばれたり、膝に乗せられてお兄様が満足するまで頬や髪にスリスリされたり、とにかくずっと構われ続けてヘトヘトになるのだ。そんなちょっぴり残念なお兄様にはちゃんと婚約者がいる。番ではないけれど、こちらが恥ずかしくなるほど仲が良い。

「ああ。レイアが可愛すぎる」

結局、お兄様に抱き締められスリスリされ続けて、紅茶が冷めてしまった。



翌日は、昼からお兄様と王宮へ行くべく、馬車に揺られている。私が王宮へ行くのはこれが初めてではない。お兄様は第1王子殿下の遊び相手という名の側近のひとりだから、私もお兄様によく連れて来られていたようだ。記憶ではそうなっている。今までの死に戻りでは、ウィリアム殿下の番を見つけるお茶会以外で王宮を訪れたことはなかった。明らかに違いが出始めている。これがどう影響するのか?今回こそは肉体の寿命まで生きてみたい。

王宮に到着すると、兄の友人であり第1王子殿下の側近のひとりであるクラウスが待っていてくれた。この人もこの死に戻りで初めて会うひとりだ。我が家に頻繁に来ては幼い頃から私と遊んでくれていたようだ。

「久しぶりだな、レイ」

クラウスはとっても強面で頑丈そうな身体の持ち主だ。私は小さい頃から見知っているからなんとも思わないが、ご令嬢からは凶悪な熊のようだと恐れられている。そんなクラウスは騎士を目指して日々鍛練しているから、ますます熊に磨きがかかっているのだが、本人は気付いているのだろうか?

「クラウス!」

私は両手を万歳してクラウスに抱っこをねだった。私はクラウスの抱っこが好きだったりする。お兄様たちよりも頭ひとつ分大きいクラウスの縦抱っこは安定感があり、目線が一気に高くなって景色が変わる。

「レイは相変わらず軽いな。ちゃんと食えよ?」

「食べてるよ!もう!女の子に体重の話しはダメよ、クラウス」

「はは。それはすまんな」

全く悪いと思っていない口調だ。

「レイアはもう少し淑女のお勉強がいるようだね?」

「え・・・・。だって、だって、クラウスに抱き上げてもらうと景色が違うんですもの!」

確かに、10歳の女の子はお父様やお兄様といった家族以外の男性に抱き上げられることなんてない。

「まあまあ、ローランド。レイはまだ10歳なんだし。番や婚約者がいるわけでもないんだから」

「そうそう。それに、お兄様がクラウスよりも大きくなってくれればいいのよ。そうしたらクラウスではなくて、お兄様にお願いするわ」

無理でしょうけど。

そんな他愛のない話ができるのもきっと今だけだ。私はもうすぐ11歳になる。第2王子殿下は14歳で番避けの装飾品を身に付け、婚約者もいる。第3王子殿下は11歳。きっと来年には番を探すためのお茶会が開かれるはずだ。

「ハァ」

思わず溜め息が出てしまった。

「どうした、レイ?」

「なんでもないよ」

心配そうに私を見るクラウスに笑顔を向けた。クラウスは見かけと違い、とても優しくて細やかな人なのだ。こんな人に想われるご令嬢は幸せだと思う。

「やっといらしたわね」

第1王子殿下の執務室を訪ねるとアイリス様が待ち構えていた。

「アイリス様♪」

私はいそいそとクラウスから降りると、アイリス様がかっさらうように私をぎゅっと抱き締めた。

「う~ん♪やっぱりレイアは可愛いわね」

アイリス様は見事なふんわりとした金髪に菫色の瞳をしたビスクドールのような容姿をしている。口さえ開かなければ、その儚げな様子に手を差し伸べたくなる。そう、話さなければ・・・・。

「全く遅いわよ!クラウス!ローランド!いつまで待たせるのよ!可愛いレイアとの時間が減るじゃない!」

アイリス様は決して物静かな方ではない。そして、私を可愛いと言う時点で審美眼も狂っていると思う。私は、確かに貴族だからある程度顔立ちは整っているけど、茶金の髪に茶色の瞳というどちらかというと十人並みの容姿だ。

「こら、アイリス。レイアを独り占めするのはよくないな。レイアは本当に可愛いな。俺の妹になって王宮で暮らそう?」

今度は、アイリス様から第1王子殿下に場所が変わった。第1王子殿下とアイリス様は番にもかかわらず、私に関してはお互いに嫉妬を全くしない。いや、違う意味でお互いに牽制し合ってはいるが・・・・。

「あら、素敵な提案ね!是非そうしなさいな」

「なぁっっっ!レイアは僕の妹です!何処にもやりません!」

次はお兄様か。ちょっと力加減が・・・・。く、苦しい。少し息が上がってきたところで天の助けが入った。クラウスがひょいっとお兄様の腕の中から私を抱き上げてくれたのだ。

「ありがとう、クラウス」

「ローランド、レイが窒息しそうだったぞ?」

「ごめんよ、レイア~」

今回の死に戻りは何故か周りに愛され過ぎている気がする。どうかこの幸せな時が少しでも長く続きますように。

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