3 / 29
2
しおりを挟む
5歳の誕生日を家族でお祝いした数日後。やることもなく部屋でボーッとしていた。家族は殆んど私に構うことはない。というか、お母様とお祖母様はリルアイゼと弟のクルーガの世話に忙しいし、お父様とお祖父様は仕事で昼間は出掛けることが多い。家にいても執務室に籠って出てこない。お兄様は学園に通うため、王都に行ってしまった。誕生日に私のプレゼントまで用意されていたのが奇跡的なくらい家族との交流がない。
「・・えさま~?おねえさま?どこぉ?」
甘ったるい声が聞こえ、とたとたという軽い足音が部屋に近づいてくる。双子の妹リルアイゼだ。
「・・・・」
彼女が私を探すときはろくなことがない。私は自室の居間から隣のベッドルームへと踵を返した。
「シュシュ様。リルアイゼ様がお呼びですよ。お返事はどうされました?」
マリーの棘を含んだ呼び掛けを無視してベッドルームの扉を開こうとして・・・・。
バン!!!
マリーが鬼のような形相で私を睨みながら扉を叩いた。
「リルアイゼ様がお呼びですと申し上げました。聞こえませんでしたか?」
こいつ・・・・。そんなにリルアイゼがお気に入りなら私の侍女を辞めてリルアイゼのところにいけばいい。宰相の密偵なのは察しがついているが、この程度の奴を送り込むあたり、グランダ家が舐められているのか、この程度しかいないのか?お兄様あたりは密偵に気づいていそうだが、お父様たちはただの侍女だと思っていそうだ。どっちにしても5歳児にその対応はない。
「ハァ・・・・。だから、何?」
私は会いたくないのだ。
「まああああああ。淑女として、そのお返事はどうかと思います」
そんなやり取りをしている間に、ノックもなしに廊下へと続く扉が開いた。リルアイゼが部屋に乱入してきたのだ。
「やっぱりお部屋にいたのね、お姉様」
白いうさぎのぬいぐるみを片手に抱いて、満面の笑みで私を見た。後ろにはお母様とお祖母様を引き連れている。リルアイゼのこの行為を咎める者は誰もいない。
「リルアイゼ、ノックしてください」
「はう。ごめんなさい」
リルアイゼはうるうると泣きそうな顔を向けてきた。
「まあ。シュシュ!またそんな意地悪なことを言って!」
「いいの、お母様。リルがいけなかったのぉ」
ポロリと瑠璃の瞳から涙が零れ落ちた。なんともタイミングのいいことだ。
「リル。なんて優しい子なの」
お祖母様はリルアイゼを抱き締めた。私は毎回の茶番に辟易としながら黙ってそれを見つめるだけだ。こんな人達だから5歳児らしくない私の言動にも疑問を持たない。
「それで、どんなご用件でしょう?」
はっとリルアイゼはお祖母様の腕の中から顔をあげた。
「あのね!この子にお友達をあげたいの♪お姉様のところに茶色のうさぎちゃんがいるでしょう?この子、メルロって言うの。ステファンならメルロにピッタリでしょ♪」
「は?」
何を言ってるのか分からない。
「ステファンをメルロにちょうだい♪」
つまり、私の茶色のうさぎのぬいぐるみをあなたに差し出せってこと?
「嫌よ。お父様に新しいうさぎのぬいぐるみを買ってもらえばいいでしょう?」
「え?でもおうちにもうひとつあるのに買うなんてダメよ」
「まあまあ。リルはいい子ね。あるもので我慢するなんて、しっかりした子だわ」
え?それ、おかしいでしょ?私のぬいぐるみなのに。一緒に来ている侍女たちも感心しているけど、人の物を奪おうとしてるんだよ?
「リルアイゼ様。こちらでよろしいですか?」
マリーは私の許可もなくベッドルームからぬいぐるみを持ってきてリルアイゼに渡している。
「マリー!勝手に何してるの?!」
私の言葉を無視し、リルアイゼに優しげな笑みを向けている。
「よかったわね、リル。マリーもご苦労様」
「ありがとう、マリー」
「さあ、お茶にしましょう。マリーもいらっしゃい」
「はい。大奥様」
用は済んだとばかりに騒々しい一団は私の部屋を去り、私はひとり部屋に残された。出ていく寸前、リルアイゼは誰にも見られないように勝ち誇ったような笑みを私に向けた。
そして、これ以降、リルアイゼは嫌がらせのように私の持ち物を当然のように奪っていくようになった。髪飾りなどの小物は当たり前のように、服、色違いの可愛い靴もサイズが同じだからと、「おねえさまよりも私の方が似合うわ。だから、貸して♪」と言って持っていくが返ってきたことはない。元々、デザインも色も何もかもリルアイゼが選んで作られた服や靴だから、リルアイゼに似合うのは当たり前だ。さすがに私の着る服が尽きたときには、お母様がリルアイゼの持つ服を私に与えた。元は私のなんだけどね。お母様いわく「気に入らないなんて我が儘ばかり言ってリルアイゼに押し付けるからこうなるのよ!」だそうだ。リルアイゼが小声で「ざまぁみろ」と囁いたのには誰も気づかなかった。
「・・えさま~?おねえさま?どこぉ?」
甘ったるい声が聞こえ、とたとたという軽い足音が部屋に近づいてくる。双子の妹リルアイゼだ。
「・・・・」
彼女が私を探すときはろくなことがない。私は自室の居間から隣のベッドルームへと踵を返した。
「シュシュ様。リルアイゼ様がお呼びですよ。お返事はどうされました?」
マリーの棘を含んだ呼び掛けを無視してベッドルームの扉を開こうとして・・・・。
バン!!!
マリーが鬼のような形相で私を睨みながら扉を叩いた。
「リルアイゼ様がお呼びですと申し上げました。聞こえませんでしたか?」
こいつ・・・・。そんなにリルアイゼがお気に入りなら私の侍女を辞めてリルアイゼのところにいけばいい。宰相の密偵なのは察しがついているが、この程度の奴を送り込むあたり、グランダ家が舐められているのか、この程度しかいないのか?お兄様あたりは密偵に気づいていそうだが、お父様たちはただの侍女だと思っていそうだ。どっちにしても5歳児にその対応はない。
「ハァ・・・・。だから、何?」
私は会いたくないのだ。
「まああああああ。淑女として、そのお返事はどうかと思います」
そんなやり取りをしている間に、ノックもなしに廊下へと続く扉が開いた。リルアイゼが部屋に乱入してきたのだ。
「やっぱりお部屋にいたのね、お姉様」
白いうさぎのぬいぐるみを片手に抱いて、満面の笑みで私を見た。後ろにはお母様とお祖母様を引き連れている。リルアイゼのこの行為を咎める者は誰もいない。
「リルアイゼ、ノックしてください」
「はう。ごめんなさい」
リルアイゼはうるうると泣きそうな顔を向けてきた。
「まあ。シュシュ!またそんな意地悪なことを言って!」
「いいの、お母様。リルがいけなかったのぉ」
ポロリと瑠璃の瞳から涙が零れ落ちた。なんともタイミングのいいことだ。
「リル。なんて優しい子なの」
お祖母様はリルアイゼを抱き締めた。私は毎回の茶番に辟易としながら黙ってそれを見つめるだけだ。こんな人達だから5歳児らしくない私の言動にも疑問を持たない。
「それで、どんなご用件でしょう?」
はっとリルアイゼはお祖母様の腕の中から顔をあげた。
「あのね!この子にお友達をあげたいの♪お姉様のところに茶色のうさぎちゃんがいるでしょう?この子、メルロって言うの。ステファンならメルロにピッタリでしょ♪」
「は?」
何を言ってるのか分からない。
「ステファンをメルロにちょうだい♪」
つまり、私の茶色のうさぎのぬいぐるみをあなたに差し出せってこと?
「嫌よ。お父様に新しいうさぎのぬいぐるみを買ってもらえばいいでしょう?」
「え?でもおうちにもうひとつあるのに買うなんてダメよ」
「まあまあ。リルはいい子ね。あるもので我慢するなんて、しっかりした子だわ」
え?それ、おかしいでしょ?私のぬいぐるみなのに。一緒に来ている侍女たちも感心しているけど、人の物を奪おうとしてるんだよ?
「リルアイゼ様。こちらでよろしいですか?」
マリーは私の許可もなくベッドルームからぬいぐるみを持ってきてリルアイゼに渡している。
「マリー!勝手に何してるの?!」
私の言葉を無視し、リルアイゼに優しげな笑みを向けている。
「よかったわね、リル。マリーもご苦労様」
「ありがとう、マリー」
「さあ、お茶にしましょう。マリーもいらっしゃい」
「はい。大奥様」
用は済んだとばかりに騒々しい一団は私の部屋を去り、私はひとり部屋に残された。出ていく寸前、リルアイゼは誰にも見られないように勝ち誇ったような笑みを私に向けた。
そして、これ以降、リルアイゼは嫌がらせのように私の持ち物を当然のように奪っていくようになった。髪飾りなどの小物は当たり前のように、服、色違いの可愛い靴もサイズが同じだからと、「おねえさまよりも私の方が似合うわ。だから、貸して♪」と言って持っていくが返ってきたことはない。元々、デザインも色も何もかもリルアイゼが選んで作られた服や靴だから、リルアイゼに似合うのは当たり前だ。さすがに私の着る服が尽きたときには、お母様がリルアイゼの持つ服を私に与えた。元は私のなんだけどね。お母様いわく「気に入らないなんて我が儘ばかり言ってリルアイゼに押し付けるからこうなるのよ!」だそうだ。リルアイゼが小声で「ざまぁみろ」と囁いたのには誰も気づかなかった。
540
あなたにおすすめの小説
妹は謝らない
青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。
手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。
気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。
「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。
わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。
「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう?
小説家になろうにも投稿しています。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
元カノが復縁したそうにこちらを見ているので、彼の幸せのために身を引こうとしたら意外と溺愛されていました
おりの まるる
恋愛
カーネリアは、大好きな魔法師団の副師団長であるリオンへ告白すること2回、元カノが忘れられないと振られること2回、玉砕覚悟で3回目の告白をした。
3回目の告白の返事は「友達としてなら付き合ってもいい」と言われ3年の月日を過ごした。
もう付き合うとかできないかもと諦めかけた時、ついに付き合うことがてきるように。
喜んだのもつかの間、初めてのデートで、彼を以前捨てた恋人アイオラが再びリオンの前に訪れて……。
大好きな彼の幸せを願って、身を引こうとするのだが。
わたしの婚約者なんですけどね!
キムラましゅろう
恋愛
わたしの婚約者は王宮精霊騎士団所属の精霊騎士。
この度、第二王女殿下付きの騎士を拝命して誉れ高き近衛騎士に
昇進した。
でもそれにより、婚約期間の延長を彼の家から
告げられて……!
どうせ待つなら彼の側でとわたしは内緒で精霊魔術師団に
入団した。
そんなわたしが日々目にするのは彼を含めたイケメン騎士たちを
我がもの顔で侍らかす王女殿下の姿ばかり……。
彼はわたしの婚約者なんですけどね!
いつもながらの完全ご都合主義、
ノーリアリティのお話です。
少々(?)イライラ事例が発生します。血圧の上昇が心配な方は回れ右をお願いいたします。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?
百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」
あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。
で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。
そんな話ある?
「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」
たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。
あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね?
でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する?
「君の妹と、君の婚約者がね」
「そう。薄情でしょう?」
「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」
「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」
イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。
あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。
====================
(他「エブリスタ」様に投稿)
【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。
白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。
ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。
ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。
それは大人になった今でも変わらなかった。
そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。
そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。
彼の子を宿してーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる