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結婚式は厳かにそして盛大に執り行われた。ふたりとも王都の時より幸せそうだ。ここでも、プルメアお姉様のドレスは大好評。既に注文が殺到しているが、更に凄いことになりそうだ。今のところ、シルクをムラなくグラデーションに仕上げる技術は、我が家とハワード辺境伯家の共同出資した工房でしか作れない。お兄様も閣下もウハウハに違いない。指輪の交換ももちろん行った。こっちは、ライオネル侯爵家に注文が殺到しているとガイウスが言っていた。女性陣に5年・10年・20年の結婚記念日に夫から贈られる指輪も素敵♪と入れ知恵しておいた。閣下の奥様は目を輝かせていたから、近いうちに注文が入るだろう。
続いて、お兄様の領主の就任式だが、これは、領内の顔役に周知させることが主な目的だから、普通はこんなにも大々的には行わない。今回は特別だ。お兄様の挨拶とお父様からの激励で恙無く終えた。
さあ、いよいよ、料理のお披露目を致しましょう!一昨日から料理長が頑張った。私は責任者なだけで、料理を開発したのは料理長だ。というか、私のこんなの食べたいに、試行錯誤した料理長の頑張りでここまで出来たのだから、その認識で間違ってない。
神殿から我が家に移動したお客様は、目に入ってくる料理に釘付け。食べなれた料理と場所を分けたのも効果抜群のようだ。お兄様にレシピの譲渡を持ちかける者、料理長の交換を要求する者など様々いたが、ハワード辺境伯閣下の取り成しもありお兄様は上手く退けている。この頃にはお兄様はお父様よりもおじさまを頼り懇意にしていた。遠くの父より近くの義父。リルアイゼを選んだお父様は自業自得と言える。
盛大なパーティーを終えた翌日、両親は、リルアイゼが心配だから朝食を終え次第帰ると言い出した。いつからこんなにも常識のない人間になったのだろう。貴族としては当然ながら、人間としても、息子のために遠くから泊まりで来てくれたお客様のお見送りはするものだろう。何故自分の息子の慶事に水を差すようなことを言い出すのか?呆れた顔のお兄様よりも早く、クルーガが言葉を発した。
「父上は間違っています!」
はっきりと父親を批難したのだ。
「クルーガ、何を言い出すのだ?」
突然のクルーガの反抗的な態度にお父様は困惑している。だが、この場合、クルーガが正しい。
「兄上のお祝いに来てくださったお客様をお見送りするのは、リル姉様よりも大切です」
「クルーガは、リルを大切ではないと言うのか?」
「違います!いつもリル姉様が一番ではないだけです」
もしかしたら、この子もリルアイゼと比べられたり、後回しにされたのかもしれないと思い至った。
「リルは今日も朝から王宮でしょう。もうとっくに出掛けてますよ。帰りたいと言うなら止めませんが」
「いや、そうだな。お客様をお見送りしてから戻ることにする」
お父様はばつの悪そうな顔を、お母様はクルーガを見つめて悲しそうな顔をしている。
「僕はここに残ります。授けの儀で剣士の能力を戴きました。他にもありますが、今はそれを伸ばしたい。王都にいては強くなれません。ここで、私兵団に入って鍛えて、兄上を支えられる人間になりたい」
クルーガはとても聡明な子だった。ちゃんと自分の将来を見据えることが出来ている。凄い。私は相変わらず茅の外だけど、陰から応援してるよ♪
「何故、何故そんなことを言うの?お母様とっても寂しいわ。あなたはまだ10歳なのよ。もう少ししてからでも遅くはないのよ?一緒にリルの待つ家に帰りましょう?」
「なら、母上が僕と一緒に領地で暮らせばいいよ。リル姉様は父上もいるし侍女たちもいます。ほとんど王宮から帰ってこないリル姉様のために王都にいる必要はないと思います」
意外な事実が発覚した。両親もクルーガもリルアイゼのために王都で暮らしてるのに、その本人は王宮に入り浸りか!
「あの子が帰ってきたときに寂しい思いをさせたくないの。ね?いい子だから、お母様と一緒に帰りましょう?」
そんな理由でクルーガが納得するはずもなく、現当主のお兄様が許可してしまえば、どうすることもできず。結局、渋々ながらお客様をお見送りした両親は、ふたりだけ王都に帰っていった。
クルーガが増えた我が家で変わったことと言えば、家庭教師がやって来たこと。時々、お兄様から教わっていた私も、これを機にその家庭教師から教わるようになり、自由時間が減ったことなどが挙げられる。そして、ひとつ判明したこと。以前お兄様が私に課したテスト問題は、学園卒業レベルから始まり学者や研究者の一部が解けるレベルだったと言うこと。それをほぼ解いてしまった私の学力は、お兄様にはバレバレなわけで。「学園のレベルを把握しておきなさい」というお兄様の謎の言葉の意味を早々に理解した。ガイウスに続き、お兄様にも色々とバレていそうだ。そもそも、あのふたりは悪友な訳で・・・・。隠しきれていない自分に溜め息が出てくる。
もう、修正は効かないよね?
続いて、お兄様の領主の就任式だが、これは、領内の顔役に周知させることが主な目的だから、普通はこんなにも大々的には行わない。今回は特別だ。お兄様の挨拶とお父様からの激励で恙無く終えた。
さあ、いよいよ、料理のお披露目を致しましょう!一昨日から料理長が頑張った。私は責任者なだけで、料理を開発したのは料理長だ。というか、私のこんなの食べたいに、試行錯誤した料理長の頑張りでここまで出来たのだから、その認識で間違ってない。
神殿から我が家に移動したお客様は、目に入ってくる料理に釘付け。食べなれた料理と場所を分けたのも効果抜群のようだ。お兄様にレシピの譲渡を持ちかける者、料理長の交換を要求する者など様々いたが、ハワード辺境伯閣下の取り成しもありお兄様は上手く退けている。この頃にはお兄様はお父様よりもおじさまを頼り懇意にしていた。遠くの父より近くの義父。リルアイゼを選んだお父様は自業自得と言える。
盛大なパーティーを終えた翌日、両親は、リルアイゼが心配だから朝食を終え次第帰ると言い出した。いつからこんなにも常識のない人間になったのだろう。貴族としては当然ながら、人間としても、息子のために遠くから泊まりで来てくれたお客様のお見送りはするものだろう。何故自分の息子の慶事に水を差すようなことを言い出すのか?呆れた顔のお兄様よりも早く、クルーガが言葉を発した。
「父上は間違っています!」
はっきりと父親を批難したのだ。
「クルーガ、何を言い出すのだ?」
突然のクルーガの反抗的な態度にお父様は困惑している。だが、この場合、クルーガが正しい。
「兄上のお祝いに来てくださったお客様をお見送りするのは、リル姉様よりも大切です」
「クルーガは、リルを大切ではないと言うのか?」
「違います!いつもリル姉様が一番ではないだけです」
もしかしたら、この子もリルアイゼと比べられたり、後回しにされたのかもしれないと思い至った。
「リルは今日も朝から王宮でしょう。もうとっくに出掛けてますよ。帰りたいと言うなら止めませんが」
「いや、そうだな。お客様をお見送りしてから戻ることにする」
お父様はばつの悪そうな顔を、お母様はクルーガを見つめて悲しそうな顔をしている。
「僕はここに残ります。授けの儀で剣士の能力を戴きました。他にもありますが、今はそれを伸ばしたい。王都にいては強くなれません。ここで、私兵団に入って鍛えて、兄上を支えられる人間になりたい」
クルーガはとても聡明な子だった。ちゃんと自分の将来を見据えることが出来ている。凄い。私は相変わらず茅の外だけど、陰から応援してるよ♪
「何故、何故そんなことを言うの?お母様とっても寂しいわ。あなたはまだ10歳なのよ。もう少ししてからでも遅くはないのよ?一緒にリルの待つ家に帰りましょう?」
「なら、母上が僕と一緒に領地で暮らせばいいよ。リル姉様は父上もいるし侍女たちもいます。ほとんど王宮から帰ってこないリル姉様のために王都にいる必要はないと思います」
意外な事実が発覚した。両親もクルーガもリルアイゼのために王都で暮らしてるのに、その本人は王宮に入り浸りか!
「あの子が帰ってきたときに寂しい思いをさせたくないの。ね?いい子だから、お母様と一緒に帰りましょう?」
そんな理由でクルーガが納得するはずもなく、現当主のお兄様が許可してしまえば、どうすることもできず。結局、渋々ながらお客様をお見送りした両親は、ふたりだけ王都に帰っていった。
クルーガが増えた我が家で変わったことと言えば、家庭教師がやって来たこと。時々、お兄様から教わっていた私も、これを機にその家庭教師から教わるようになり、自由時間が減ったことなどが挙げられる。そして、ひとつ判明したこと。以前お兄様が私に課したテスト問題は、学園卒業レベルから始まり学者や研究者の一部が解けるレベルだったと言うこと。それをほぼ解いてしまった私の学力は、お兄様にはバレバレなわけで。「学園のレベルを把握しておきなさい」というお兄様の謎の言葉の意味を早々に理解した。ガイウスに続き、お兄様にも色々とバレていそうだ。そもそも、あのふたりは悪友な訳で・・・・。隠しきれていない自分に溜め息が出てくる。
もう、修正は効かないよね?
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