転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫

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一人の男性にずっと恋している少女は焦りを感じていた。

こちらに振り向いてくれないのは分かっている。
あの方はいろんな人に好かれていて、簡単にこちらを向いてくれるとは思っていない。

でも、誰のものにならないから焦りは感じていなかった。

それなのに、アルフリード様に近付く虫が許せなかった。
ちょっと副団長に気に入られたからって、なんで新人をメイド長に任命するのよ。

アルフリード様は全くメイドに関して触れていないから、それだけは救い。

あの方まで興味を示したら発狂する自信がある。
今ですらメイド長としてあの女がアルフリード様と話す機会が多いのに…
貴族に拾われた事以外は変わらないのに、何故こんな差が出来るのか。

学校が終わり、アルフリード様に会えるのがメイドの仕事としての唯一の楽しみだった。
声を掛ける事が出来なくても、いつか目が合ったらいいなと思っている。

一言も話した事がないわけではない、短い言葉だけど脈なしだとは思っていない。
でも、あの女がいたらいつまで経っても近付く事が出来ない。

メイドを辞めさせるために陰でいじめていたが、メンタルが鋼なのか空振りだった。

どうにかしてあの女を遠ざける事は出来ないかと、同じ想いを抱くメイドやクラスの同級生達と話していた。
正直あの女がどうなろうがどうでもいいけど、自分が犯罪者になりたくない。
自分が犯罪者になったらアルフリード様に近付くどころかさらに遠ざかってしまう。

理想は勝手にどっか行ってほしいと思うが、待っていたら取り返しがつかなくなる。

仕事以外でアルフリード様が興味を示してはいないが、何故こんなに焦る気持ちがあるんだろう。
理由は分からないが、日に日に焦る気持ちが強くなる。

街で見かけた愚息のユートは変な事をして歩いていた。
何をしているのか全く分からないが、人生楽しそうで羨ましい。

それ以外に特に用がないからユートを無視して歩いた。
今日は友人の一人に家に呼ばれていて、寄り道した。

メガネを掛けている勉強が得意の下層部の女の子。
彼女もアルフリード様に憧れているが、近付く事は出来ないと最初から諦めている。

そして、それと同時にあの女の事もよく思っていない。

幸せな女を見るのが許せないみたいだ、私が幸せになっても恨まないでよ。

家の前に到着して、軽くノックをすると友人の少女が顔を出してきた。

両親は仕事で家を離れていて、今は友人しかいない。

初めて家にお邪魔すると、真っ暗な部屋がそこにあった。
窓もなくて、壁も床も真っ黒で床に丸いなにかが描かれていた。

人が住んでいるとは思えないほどに生活感がない。

「何してるの?この部屋で」

「悪魔召喚!」

「あ、悪魔?」

「人外様に憧れがあるの、人間と人外との禁断の愛は燃えるわ」

「そう…」

「アルフリード様も人外っぽい美しい容姿だから愛でるべき相手よ!」

友人は早口で熱弁していて、部屋の本棚から本を一冊手に取った。

悪魔召喚、魔物は外の世界にいると聞いた事があるが実物は見た事がない。
本当に悪魔なんているのかこの目で見るまで信じられない。

悪魔に興味がないのに、何故ここに呼んだのか理解出来ない。
こんな事なら仕事を一日休むんじゃなかった、そうしている間にあの女が急接近してると思うと…

イライラして足を軽く動かしていて、帰ろうと思った。

友人に背を向けると後ろから「出来た!」という明るい声が聞こえた。
何をしているのか分からないが、どうせ怪しい事でしょ。

「それ、私に関係ある?」

「セレナをどうにかしたいんでしょ?リーナは」

「出来るの?」

「召喚した事ないけど、願いを叶える悪魔がいるのよ」

胡散臭い事を言っているけど、せっかく休んだんだし…少しは付き合うかな。
願いを叶える悪魔に少し興味があった、本当にそんな悪魔がいるなら…

不発でも、やっぱりねで終わるから何も損はない。

そう思っていたら、友人に突然包丁を握らされた。
悪魔召喚には召喚する人間の新鮮な血が必要らしい。

痛い思いをするのは嫌だけど、親指の先でいいと言うから小さく傷を作った。
ぷくっと丸い血が出て、友人の指示で魔法陣と友人が呼ぶものに親指を押し当てた。

友人はなにかをブツブツ呟いていて、もう指を離して大丈夫かと思い魔法陣から離れた。

その瞬間、魔法陣は黒く光り私を丸ごと包み込んだ。








いつの間にか意識がなくなり、急に意識が戻ってきた。
いつの間に倒れていたのか、上半身をゆっくり起こす。

「へぇ、可愛い女の子だ」

「まさか人間が召喚出来るとは」

勝手に話している声が聞こえて、耳を押さえながら顔を上げた。

目の前にいたのは茶髪の巻いているロン毛の男とチビの男がいた。

ジロジロ見られていて、たとえ顔が良くても不愉快でしかない。

周りを見渡すと部屋の中には見えない、別の空間に飛ばされたような変な感覚がする。
ロン毛のチャラチャラした男に手を差し伸ばされて、思いっきり振り払った。
どんなに顔が良くてもアルフリード様の足元には及ばない。

軟派な男はこの世で一番嫌いで睨みつけるが「生意気なところも可愛いね」と言われた。
この男に何を言っても何も響かないみたいで、会話するのも疲れた。

帰りたいのに、さっきまでいた友人は何処にもいなかった。

「お前ら、召喚した人間の願いを叶えるためにここに呼んだんだろ」

「へいへい、うるさい奴が来た」

もう一人現れて、頭にツノが生えた目つきの悪い男が現れた。

もしかして、悪魔?じゃあ今この場にいるコイツらも?

友人の言っている事は本当だった?一気に緊張が走る。

軟派な男は私に向かって「君の願いは?」と聞いてきた。
私の願い、そんな事…一つしかない…アルフリードに近付く女を全て排除する事。
あの女だけじゃダメ、他の女が来たら意味がない。

お願い事を口にすると、一瞬だけ悪魔らしい凶悪な顔に変わった。
すぐに顔は元に戻ったが、薄気味悪い雰囲気は残る。

「恋が絡む嫉妬はなかなかいいスパイスだな」

「じゃあ報酬は君の魂でいいね」

「は!?私が死んだら意味ないじゃない!アルフリード様に近付く女の魂でいいでしょ!」

「そうは言っても契約したのは君だからな」

わざとらしいため息を吐いても、そこだけは譲れない。
自分の命を捧げてまで排除したいわけではない。

嫌ならいい、自分でまた何とかする方法を探すから。

悪魔達に背を向けて行こうとしたら、後ろにも人がいるなんて思わず驚いた。

鋭い瞳で見られて、そのあまりの美しさと怖さに指先一つ動かせないほど固まる。

誰かが「白竜様!何故ここに!?」と驚いていた。
悪魔の親玉かなにかかしら、雰囲気が一気に緊張に変わる。

男は口を開き、後ろにいる悪魔達から戸惑いの声が聞こえた。

「自分を犠牲にしたくないないなら、俺と契約しろ」

「貴方と?なにが変わるわけ?」

「依頼内容は変わらない、ただ…身内の魂を売れるのなら」

「……身内、両親の魂を犠牲にしろって言うの?」

「この契約は若い魂でないと意味がない…お前に
身内を捧げる覚悟はあるか」

若い私以外の身内の魂、弟のユートを生贄にしろって事?

ユート…ユートなら…私の中の悪魔が囁いてくる。

目の前の眼帯の男は、私の答えをジッと見つめていた。

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