転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫

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先生のお手伝い

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「じゃあこれとこれを運んでおいてね」

「は、はい!」

訓練所を借りるために先生の好感度を上げるために重なって渡された荷物を運ぶ。
大きなダンボールを三つ積まれて、それなりの重さだ。
これも腕力を鍛えるためだと思えば重さも平気だ。

一瞬先生に指先が触れても、昨日のような事はなかった。

手伝いをするから先生が俺に敵意はないからなんだな。
誰が俺に敵意を向けているか分からないから、なるべく怖い人からは距離を取ろう。

グラグラと荷物が揺れながら、一歩一歩慎重に歩く。

前が見えない、横から前を見ようとすると大きく荷物が動いた。

右にずれた荷物を右に向かって歩くと、壁にぶつかって倒れた。
コツンと頭の上になにかが当たって頭を抱える。

「いたた…荷物は…」

派手に転んでしまい、壊れ物だったらどうしようかとダンボールを開けた。
中身は服が多くて、他の物のクッション代わりになっている。

いろいろと適当に詰め込んだのか、いろんなものが入っていた。

このマントが付いている服は何だろう?学園祭で使うのかな?
他にも怪しい黒魔術のような魔法陣が描かれた紙や、木の棒や丸い玉などがあった。

あまり見ると怒られそうだから、荷物を元に戻して頭に落ちてきたものを手に取った。

短いステッキがあり、星の大きな飾りが特徴的だ。
前世の頃、病院で女の子達が持っていた変身グッズみたいだ。

ゲームで魔法少女に変身するキャラクターなんていたのかな?

「ねぇ君」

「うわぁっ!?」

「ご、ごめんね…びっくりさせちゃって」

突然後ろから声を掛けられてビックリして後ろを振り返った。
優しく微笑む少年は、しゃがんで座り込む俺と同じ目線になった。

制服は旧制服ではなく、上層部の人達が着る制服を着ている。
下層部の俺に話しかける人がいる事にも驚いた。
しかも、彼は上級生でそれなりに有名な貴族だ。

見た感じ、俺にずっと向けられたどの敵意も違う。
だから、多分敵意はないと…思う…ゲーム通りなら…

一番大きなダンボールを手に取って持ち上げた。

「驚かせたお詫びに手伝うよ」

「そんな…そこまでさせられません!俺が手伝いで運んだものなので」

「そうなの?でも君の身長じゃ、まとめて運べるか不安だよ」

「今度は慎重に運ぶので、大丈夫です」

さっきはちょっとよろけたが、今度は無理に前を見ないで運ぼう。
運ぶ資料室の場所はこの先まっすぐ行けば良いから大丈夫。

人とぶつからない事だけを祈って、重ねたダンボールを持ち上げた。

軽く少年に頭を下げて、資料室に向かって歩き出した。
二つの足音が聞こえていて、横を見ると少年が付いて来ていた。

同じ道に用があるのかと思って、資料室の前で足を止めた。
横を見ると、少年も俺と同時に足を止めていた。

「えっと…」

「気にしないで、僕もここに用があるだけだから」

笑みを浮かべていて、俺もつられて少年に笑いかける。
資料室に用があるのか、彼も先生に頼まれたのかな。

そういう偶然もあるかと特に疑問に思わず、資料室のドアを少年に開けてもらった。

ダンボールを先生に言われた通りに資料室の隅の床に置いた。

後ろには、少年が興味津々で資料室の本を手に取ってパラパラと見ていた。

彼は、やっぱり似ている…会っていないゲームのキャラクターもまだまだいる。
セレナの恋愛対象はアルフリードだけではない。

彼はセレナの友人である、恋人候補の一人のイクサスという少年だ。
セレナだけではなく、誰にでも優しくてそのせいでいろんな誤解を生んでしまう。

学校で親衛隊がいるほどの人気で、今日まで関わりはないと思っていた。
ゲームでは俺はセレナに想いを寄せているから敵として会っていた。
その時も説得しようとしていて、戦いを好まなかった。

今も危なっかしい俺が放っておけなかったんだな。

「ドア開けてくれてありがとうございます」

「このくらい当然だよ、でも今度から小さな箱を運ぶんだよ」

彼から見て、俺ってどんだけひ弱に見えているんだろう。
俺の力と彼は全く関係ないけど、なんか悔しいな。

アルくん守るための道はかなり遠くて、小さくため息を吐いた。

資料室を出るとイクサスも一緒に出てきて、やっぱり俺が危なっかしいから付いて来たんだと思った。
俺はもう一度先生の頼み事を聞こうと思っているから彼とはここでお別れだ。

「結局いろいろ手伝っていただいてありがとうございました」と頭を下げて、まだ教室に先生がいる事を祈って教室に向かった。

次は学校の裏庭の掃除を頼まれて、ほうきを持って裏庭に向かった。

今日はこれが終わったら帰るつもりで、落ち葉を一ヶ所に集める。

可笑しいな、なんでイクサスがまだ俺の近くにいるんだろう。
何も言わないけど、もしかして俺になにか用なのかな。

「俺にもしかして用があるんですか?」

「うーん、君と仲良くしたいなって思っただけ」

「…な、仲良く?」

「とりあえず自己紹介かな、僕はイクサス・ヴィータ…三年生だよ」

「ユート・カインスです…一年生です」

「よろしくね、ユート」

俺に手を伸ばして、恐る恐るそれを握ると両手で握られた。
びっくりする俺の腕をブンブン振っていて、ちょっと痛かった。

でも、アルくんのペンダントは反応していないから悪い人ではない。

友達が出来たって思っていいのかな、ゲームでも攻略キャラクターの中でユートに唯一敵意はなかったキャラクターだ。

ちりとりを持ってくれて、落ち葉をほうきで入れた。

なんで俺と友達になりたいのか、裏庭の花に水をあげていた時花を見つめるイクサスに聞いてみた。

敵意はなくても、ゲームで二人は友人ではなかった。
俺達の関係はアルくんと同じでなかったものだ。

俺とアルくんが元恋人でも彼とは前世の繋がりもない。
純粋になんで俺と友達になりたいんだろうなと気になった。

「イクサス先輩はどうして俺と友達になりたかったんですか?」

「呼び捨てと敬語でいいよ」

「いくら友人でもそれは無理です!」

「頭が硬いんだねユートは」

グサリと鋭く心に突き刺さって、苦笑いしか出来なかった。
頭が硬いのかな、でも初対面から砕けた話し方は俺にはハードルが高い。

イクサスは気にしていないのか、話してくれた。

昨日の俺を見て、特殊能力を持った面白い子がいると思われたそうだ。
そして偶然荷物を運ぶ俺と出会い、友達になりたいと思ってくれた。

そうだったんだ、特殊能力というかアルくんの力なんだけどね。

俺とアルくんの秘密の関係を誰かに話す気はないから「そうなんですか」しか言えなかった。

俺自身、自分で言うのもアレだけど面白い人間ではない。

一緒にいてがっかりしてしまうんじゃないかと不安でイクサスを見る。
さっきまで普通の距離だったのに、鼻先がくっつきそうなほど至近距離にいてびっくりして尻餅を付いた。

「ごめんね、また驚かせちゃった」

「…だ、大丈夫です」

イクサスは俺に手を差し伸ばして、それを握った。

さすがに今のは失礼だった、せっかく友達になってくれたのに…

勢いよく引っ張られて、前によろけてイクサスに抱きしめられる格好になった。
すぐに身体を離して「また助けてくれてありがとうございます」と早口で話して、掃除道具を抱えてイクサスに背を向けた。

今の俺の顔を見たら誤解されそうなほど真っ青になっていた。
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