転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫

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アルとユート

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「家に帰してください」

「帰すとでも?」

金髪のアルくんは俺の言葉に目を細めて怒っていても、手を出す事はしない。

普通だったら高価そうな指輪を狙うのが自然だ。
彼の目的が分からない、俺を手に入れるってどういう事?
俺はずっとアルくんのものなのに…

他の人達はいなくなり、俺と金髪のアルくんしかここにはいない。
一人で逃げる事が出来ない、出口が何処にも見えない。

金髪のアルくんに出してもらう事しか出来ない。

指輪に触れて、外にいるアルくんと連絡取れないのかな。
彼とアルくんが繋がっていても、俺がここにいるのは知らないはずだ。
このままだと心配掛けてしまう、もう離れたくないのに…

「俺はもうアルくんのものだから、今更俺を手に入れても何も変わりませんよ」

「……」

「だから俺を家に…」

その時、金髪のアルくんは俺の顎を掴んで上げられた。
鼻がくっつくほどの至近距離で、目が離せないほど見つめ合う。

ゆっくりと確かめるように口を開いて「なら、俺に抱かれるか?」と言った。

その言葉に固まると、鼻で笑われて顎を掴む手を離された。

からかわれたんだと分かり、顔が真っ赤になって恥ずかしかった。

びっくりした、本気か冗談か分からない顔をするから…

彼もアルくんだけど、そういう行為は俺の知っているアルくんとしたい。
俺はまだ、目の前のアルくんの事を何も知らない。

「安心しろ、まだその時ではない」

「…それって」

「俺はアルフリードを殺して、完全な神竜となる…アルフリードは一人でいい」

金髪のアルくんは何処かに行こうと歩き出した。
俺は手を掴んで、金髪のアルくんの歩みを止めた。

手が震えるが、しっかりと握り…行かせないつもりだった。

彼がアルくんと同じ存在でも、アルくんを殺す事は絶対に許さない。
でも、目の前のアルくんと戦う事も出来ない…俺は彼をここに居てもらう事しか出来ない。

俺の手を振り払う事なく、ただ俺をジッと見つめていた。
何も言っていないのに物凄い圧を感じる、油断していたら押し潰されそうだ。

これが、神竜なのか…今の俺はライオンの前にいる草食動物のようだ。

「あ、の!」

「なんだ」

「俺と、お話しましょう!」

「…話?」

想像もしていなかった言葉だったからか、アルくんは言葉に詰まっていた。

俺もつい言ってしまったが、何を話せばいいんだろう。

好きな食べ物とか、趣味とか?…なんか、お見合いみたいだな。

彼は何処までアルくんと繋がってるのかな、それが知りたい。
アルくんはジッと俺を見ていて、なにが目的か探ろうとしているように思えた。

一番はアルくんのところに行かせないためだけど、彼がアルくんなら俺の考えなんてお見通しなんだろうな。

それでも金髪のアルくんは俺の隣に座って「話ってなんだ?」と言っていた。
俺も座り直して、金髪のアルくんについて聞きたい事を口にした。

アルくん関連はほとんど教えてくれなかったが、自分がどうしてここにいるのか…俺の事を教えてくれた。

「俺は生まれた時から一人だった、ずっと探していたんだ…ずっと」

「アルくんを?」

「あんな奴を探す意味なんてない、俺が探していたのはお前だ、ユート」

「俺を…」

「ずっとアイツの中にも居たんだろうな、ユートという大きな存在が」

俺の頬に触れて、金髪のアルくんは切なそうな顔をしていた。
俺の世界にだってアルくんの存在が大きくて、今もその大きさは底を知らない。

自然な動きで唇が触れて、反応するのが遅くなった。

面と向かって「俺はお前がほしい」と言われて、俺はなんて言えばいいのか分からない。
アルくんはアルくんだけど、俺も好きだと言うのは簡単には言えない。

口を閉ざしていたら、金髪のアルくんは胸を押さえて急に背中を丸めて苦しんでいた。

すぐに駆け寄って顔色を伺うと、顔が青ざめていた。

いきなりどうしたんだろう、さっきまでは何もなかったのに…

「アルくん!?」

「…アイツ、力を解放したのか」

「…ちから?」

金髪のアルくんは足に力を入れて、立ち上がって行こうとしたから腕を掴んで止めた。

アルくんのところに行かせない気持ちもあるが、それよりも彼の体が心配だった。
理由は分からないけどまだ苦しそうだ、彼とアルくんが重なって放っておけない。

今度は俺の顔を見る事はなく、手を振り払われた。

それでも腕を掴む俺に鬱陶しそうに睨みつけている。

さっきと態度が変わり、俺を拒絶しているのが分かった。

引き止める腕に力が込もる、どんな態度でもやっぱり彼はアルくんだ。

俺が腕を引っ張っても、もう座るつもりはないらしい。
だったら俺にも考えがあると金髪のアルくんの腰を掴んだ。

「何してる」

「辛いなら座ってください!」

「君には関係ない」

「座ってよ!アルくん!」

俺が声を上げると、びっくりしたのか目を丸くしていた。
驚かせて申し訳ないけど、俺だって必死なんだ。

辛い君を行かせたりしない、元気になってもアルくんを殺しに行くなら行かせないけど。
下に向かって力を入れようとすると、金髪のアルくんも力を緩めて一緒に倒れ込んだ。

鼻が軽く触れるほどの至近距離に、俺の方が驚いて固まった。

お互いの息遣いを感じられるほどの距離でアルくんに押し倒されている体勢になった。

これは俺が悪いな、怪我はないか聞くと首を横に振った。
でも、顔色はまだ悪い…医者に診てもらった方がいい。

「病院に行こう!」

「…必要ない」

「なんで!?」

「俺の体調の変化は黒竜のアルフリードになにかあった証拠だ」

「…アルくん?アルくんになにがあったの!?」

「君がいない事に気付いたのだろう、そのぐらいで感情のコントロールが出来ないならやはりアイツに黒竜の資格はない」

金髪のアルくん舌打ちして、イラついているのか拳を震わせていた。

アルくんの影響で変化するなら、彼になにかあったらアルくんも変化するのかもしれない。

ギュッと抱きしめると小さな声で「おい」と聞こえた。
背中に腕を回して、ゆっくりと撫でながら「大丈夫だよ」と声を掛けた。

前世の時、有流くんは生徒会の仕事を頑張りすぎてしまった時があった。
でも、熱はないからと無理して学校に来てしまった。

薬を飲めば大丈夫だと言って、心配掛けないように笑っていた。
絶対学校終わったら病院に行く事を約束して、俺には背中を撫でる事しか出来なかった。

さっきまで辛そうな顔をしていた有流くんは、元の顔に戻った。

『凄いな、優斗の手は魔法みたいだ』

魔法は使えないけど、気分が少しでも良くなるなら…

気持ちを込めて撫でると「その手…」と金髪のアルくんが呟いていた。

上を見上げると、金髪のアルくんの顔色がさっきよりも良くなっているように思えた。

「まだ苦しい?」と聞くと「…いや、力が制御出来てる」と言っていた。
アルくんがなにかしたのかな、だとしたら良かった。
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