転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫

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「申し訳なかった、家は必ず弁償する」

「アルフリード様!」

城の前にいる人達は俺の姿を見て、膝を付いて祈りを捧げている。
俺がこの家が嫌で家出をしたように見えたようで、顔色が皆悪い。

家出をしたわけではなく、これ以上ここにいたら屋敷事壊しかねないから離れただけだ。

家を直す手伝いをしたかったが、すぐに泣きつかれて止められた。
もう落ち着いているからこれ以上破壊はしない事を伝えたが、そういう事ではないと言われた。

俺の手を煩わせる事が彼らにとって許されない事らしい。

そういう考えが一番煩わしいが、面倒だから放っておく。

自分の部屋が完成するまで仮住まいの家に泊まる事にした。
そこはまさかの城の中で、国王も俺の存在を知っているから了承してくれた。

国王が一番危険な状態になるのに周りのにんげは止めなかったのだろうか。
それほどまでに、神竜とは命を預けられるほどの信頼なのか。

国を永久に守ってくれるならそう思う事も不思議じゃないのかもしれない。
俺にとっては自分含めてあり得ない事の連続で、魔物やら神やらが当たり前の人達からはずれていると分かっている。

城の一室を借りて、俺は窓を見つめながら一人になった。

落ち着いている今なら何でも出来る気がする。
俺の暴走は心の感情で左右される、心を無にしなくては…

目蓋を閉じて、姿を変えるなら魔力を全身に纏わせる。

ゆっくりと目を開けて、目の前のガラスの窓に自分の姿が映り込む。
俺の想像していた姿だからか、そこにいたのは死ぬ前の人間の姿の俺だった。

竜の年齢は人間の姿に反映されるのか、子供の姿だった。
見慣れた顔だけど、心のモヤモヤは増していく。

この顔は今でも殴り飛ばしたいくらい嫌いだ。
アイツのせいで、俺達は切り裂かれたんだ。
全くの別人に今からでもなれないものだろうか。

もう一度目蓋を閉じて別人の顔を思い浮かべる。
どんな姿でもいい、彼に「綺麗だね」と言ってもらう事はもうない。
全ての世辞の言葉が彼以外だと思うと無意味になる。

「アルフリード様…朝食のご準備が……し、ししし失礼いたしました!!」

扉を数回ノックされて、城で働く使用人の男が呼びに来た。
目を開けるのと同時に使用人の男は慌てるようにして部屋を出ていった。

変な顔にでもなったのかと窓ガラスを見つめる。

さっきと全く変わらない顔を見て小さくため息を吐いた。
とりあえず、人がまた来たら面倒だから服を着よう。

竜の時は全然気にしていなかったが、流石に人間の姿はダメだな。
さっきは男だったから良かったが、女性が来たらパニックになりそうだ。

クローゼットを開けると、元々誰かが住んでいた部屋だったのか人間の子供用の服が掛けられていた。

その一つを手に取り、袖に腕を通して着替えた。
こうしていると、本当に普通の人間の子供だ。

後ろを見ても竜の羽や尾はなく、頭もツノはない。

この姿でいると、まるで俺だけがこの世界に取り残されているように感じた。
新しい命に生まれ変わったのに、未練の塊のようだ。

これも罰だ、永遠に彼と結ばれる事はないと言われている気分だ。

不思議な世界に生まれ変わる事よりも、過去に戻ってやり直す事の方がどんなにいいか。
もう一度両親の厳しい躾けに耐える、俺に出来る事はなんだってする。
もう一度、彼を俺のものに出来るなら二度と離さない。

周りから人がいなくなっても、今の地位が失われても、他の何を失っても構わない。

俺から、彼を奪わないでくれ…苦しくて胸の痛みは耐えられそうにない。

「会いたい、君にもう一度愛していると伝えたい」

何故もっと沢山言わなかったのか、何度言っても言い足りないほどなのに。

俺の声は、誰かに届く事はなく…ガラスの窓からこちらを覗く自分の顔に嘲笑われているようだ。
幸せだったあの頃の俺にもきっと恨まれている。
なんで引き止めなかったのか、惨めでもカッコ悪くても失うよりマシだ。

控えめに部屋の扉がノックされて、今度は勝手に入って来る事はなかった。
そろそろ行かないと待たせてしまうな、せっかく用意してくれたものなのに…

頬に付いた涙のあとを拭って、部屋の扉を開いた。
人間の姿になると、力のコントロールもしやすくて助かる。
竜の姿は本能と感情がむき出しになるから、力が爆発してしまう。

思い出す度に暴走していたら、国を守るどころか破壊神だ。
俺の思い出だけ彼は生きている、辛い悪夢の過去ではなく優しい記憶。
それをより強く思い出せるようになったのは背中に触れるあの温もりのおかげだ。

悲しみに勝てば、きっと竜でもコントロールが出来る。

そういうつもりはなくても少女には感謝している。

姿を見られてしまったからには、お礼を直接言う事はないが家を調べて贈り物をしたい。

それほどまでに悪夢を塗り替えるほど、俺に思い出させてくれた。
怯えさせてしまったが、感謝という気持ちしかない。
手の温もりは彼に近かったが、それ以上の感情はない。

幸せな記憶は辛い記憶に負けてはいけない、絶対に…

俺を見る人の目は可笑しいものを見るような目だった。
完璧な人間だと思うが、何処か変なのかと自分の身体を確認する。
もしかしたら、何処かに竜が残っているかもしれない。

面影がなく、急に変身する事が出来た俺に周りの人達は半信半疑だったみたいだ。
これからこの姿は変わらないだろうから慣れてもらわないと困る。

竜の俺しか知らないから、食器の使い方やマナーが完璧だと褒められた。
生まれてからずっと竜で、この顔でフォークやナイフは持っていない。
でも俺には前世の人間の時にマナーを叩き込まれたからこのくらい出来る。

特に褒められるような事はしていないと心の中で思った。
味はあるんだろうが、全然味覚がしなかった。

「人間のお姿に変えられても、ぜひこの部屋を住まいにしていただきたく…」

「アルフリード様は神様から授かったお方、神様の信仰深く住み慣れた私達の家に…」

国王と育ての母が無駄な争いを始めてしまった。
やる事は何も変わらないからどちらでもいい。
どうせ大人になったら国を守るために、国の中心部に位置する城で住む事になりそうだから。

それまでは子供だから、育ての両親に世話になる事に決めてその場はおさまった。

俺をここまで育ててくれて感謝はしている。
衣食住があるのとないのでは全く違う、それ以外はほとんど関わりはないが…
国から選ばれて、国から多額の金をもらっているから最初は世話をしていると思っていた。

でも、その顔は人間の欲望で染まっていた。

俺が人でないからか、人間の嫌な部分に敏感になっている。

俺自身ではなく、俺の力がほしいんだろうな。

理解出来ないな、好き好んで化け物になりたいなんて。
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