転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫

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触れる熱

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浴室の扉を開いて、大人の男二人でも余るほどに広い。
お湯を出して、少ししたらアルくんが浴室に入ってきた。

着痩せするのか、しっかり筋肉が付いていて綺麗で完璧な肉体美だ。
ボーッと見つめていたら「そんなに見られるほどじゃない」と言って顔を赤くしている。
普段はカッコいいのに、今のアルくんは可愛いな。

俺も見すぎてしまったから「ごめんね、俺も見ていいから!」と訳の分からない事を言っていた。
見られたら見てもらえばお互い様だと思ったから両手を広げた。

しかし、アルくんはすぐに目を逸らして頭を撫でられる。

俺の身体は筋肉が付いていないヒョロヒョロの身体だから見ていてもつまらないよな。

アルくんが見惚れるほどの漢らしい身体になりたい。

「手を出さないって約束したのに惑わす事言わないでくれ」

「え?なにか言った?」

「いや、何でもない」

自分の筋肉を想像して考え事をしていたから、アルくんの小さな呟き内容が分からなかった。

何でもないなら深く聞くわけにもいない、いつか教えてくれればそれでいい。

今はアルくんの身体を洗うという大事な役目があるんだ!
火傷が当たらないように両手に水を纏ったアルくんがシャワーの前に座る。
俺は向かい合わせでアルくんの前にしゃがんて、泡になる薬草を擦ってから身体を洗う準備万端になる。

「痛かったら遠慮なく言って」とアルくんに言ってから、首に身体を洗う布を当てる。
撫でるように滑らせて、離れてたらやりにくいなと身体をもう少し近付く。
筋肉に恐る恐る手で触れて、ドキドキと変な気分になる。

「どうした?」

「な、何でもない!」

誤魔化すように身体を撫でて、泡で見えなくなった。
アルくんが泡の鎧を着ているみたいで、これなら恥ずかしくないと泡だらけの身体を洗う。

腕は火傷しているから、足を綺麗に洗って硬い筋肉に触れる。

いつも騎士の仕事で疲れているんだよな、マッサージすれば少しでも疲れが取れるかな。
マッサージは初めてだけど、アルくんに「マッサージしてもいい?」と聞いた。

勝手にマッサージしたらダメかと思って聞くと「いいけど、ユートのせいじゃないから無理するな」と言われた。
無理はしていない、やりたいからマッサージをしているんだ。

軽く掴んで、優しく揉んでだんだん強くしようと思った。

「ゆっ、ユート!ちょっと待て!」

「え?痛かった?じゃあちょっと力を緩めるね」

「いや、そうじゃなくて…本当に、そこは…っ」

力を込めたつもりはなかったが、痛いならもうちょっと優しく触る。
触ると何故かアルくんの息が乱れて、俺の肩を掴んでなにかに耐えているようだ。

俺、足をマッサージしてるだけだけどくすぐったいのかな。
視線を下に向けて、泡の中から指先でカタチを確認する。

あれ?なんか太いけど足じゃなくて棒みたいなカタチをしている。

撫でると、アルくんは小さな声で「ユート、そこは足じゃない」とだんだん声が小さくなっていた。
さっきとは比べ物にならないほど顔を真っ赤にして手を離す。

俺、なんて事をしたんだ…いくら恋人同士でもやっちゃいけない。

「ごっ、ごごごめん!俺はなんて事を」

「いや、大丈夫だ…気にするな」

安心させるように俺に笑いかけているが、辛そうだ。
俺が中途半端にしてしまったからだ、どうしよう…後ろを向けばいいのかな。

ダメだ、アルくんは両手が使えないんだ…自分でする事も出来ない。

俺はアルくんの手になるって決めたんだ、アルくんさえ良ければ…

アルくんは目を閉じて静めようとしていたが、眉を寄せていて全くおさまっていなさそうだ。

お湯を出して、泡を洗い流すとアルくんが慌てていた。
泡で隠れているなら大丈夫だけど、見られるならさすがに嫌だよな。

俺は下を見ずにアルくんの顔をジッと見つめて、見ないようにした。

「アルくん、俺に処理させて」

「しょっ!?さすがにそれはダメだ、俺が一人で」

「男にされるのが嫌なら目を瞑ってていいから」

いくら恋人同士でも、嫌な事くらいあっても不思議じゃない。

アルくんは顔を赤くしつつ、俺の頬に両手で触れた。

「嫌なわけないだろ」と悲しい顔をさせて、俺も悲しい気持ちになった。
自分の発言を反省して、アルくんの手に手を重ねて謝った。

身体を抱き締められて、距離がなくなるほど肌が触れ合う。
それが当たり前のように、唇も触れ合ってゆっくりと舌が絡み合う。

俺だってアルくんのに触れてるの気付かなかったけど、アルくんのだって分かってても嫌じゃない。
触りたいし、もっとアルくんのいろんな顔が見たい。

俺しか知らないアルくんをもっと見せてほしいな。

唇を離すと、お互いの顔が赤いのが見えてさっきよりも身体が熱くなる。

「俺がしたからとか関係なく、触っていい?」

「俺もユートに触りたい」

「うん、いっぱい触ってほしい」
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