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1【一年後】※R18
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かつて豪華な装飾で彩られていた部屋には、必要最低限の調度品しかなかった。広々した部屋には男二人が並んで横たわってもゆとりのある寝台がある。
カーテンは閉じていて、明かりといえば、寝台横のテーブルにある燭台だけだ。すでに繋がり合ったふたりの姿を、淡く照らしていた。
背中を向けた男はバルトルト・ガドリン。騎士団を率いる団長である。
王や国を守るために鍛えた筋肉で、今は獣のように激しく腰を振り続けている。休むことなく運動を続けているため、項にまで伸びた黒髪は汗にまみれて湿っていた。
バルトルトに組み敷かれているのは、ひと回りも小柄な青年マレクだった。軍人と比べると細身に見えるだけで、全身には程よく筋肉がついている。
軍人の厳つい顔とは違い、マレクの顔は幼さを残している。澄み切った海のような瞳を瞼の裏に隠して、今は眉間にシワを寄せていた。
マレクは一際大きな声を上げると、腰を浮かせて、張りのある太腿を痙攣させた。
バルトルトは自身を埋めたまま、腰の動きを止めた。太い首と腕に水の筋が伝っていく。
熱の籠もった琥珀色の目で、白い肌を舐めるように視姦していく。
マレクが一息つけたのも束の間だった。剣だこのある指が、青年の両足を掴んだ。
一度、腰を退くと、「あ、やだ」とマレクが甘えるように鼻のかかった声を漏らした。それにバルトルトは喉の奥で笑ってから、一気に貫く。マレクの腰に腕を巻き付けて、奥深くをえぐった。
「そんなにこれが欲しいか?」
マレクはバルトルトの背中に跡ができるほど深く、爪を立てた。
バルトルトはマレクが首を振っても、構わずに腰を押し進めてくる。奥に到達すると、一旦動きを止めた。バルトルトはマレクの前髪を指で払った。あらわになった額に唇を寄せる。
瞼を瞬き、目を丸くしたマレクに、バルトルトは声を上げて笑った。
「可愛いな」
屈強な男が自然とこぼした言葉に、マレクは唇を尖らせる。赤く染まった顔をそらした。
「いつもはそんなこと言わないくせに」
「いつも言ってほしいのか?」
「そんなことはないけど」
バルトルトは鼻で笑う。
「動くぞ」
腰つきが速くなり、バルトルトの引き締まった尻が小刻みに動く。
次第に息も荒々しくなっていく。
喉を反らして、マレクの喘ぐ声が部屋に反響する。
首筋を舐めて、「もっとだ」とバルトルトは呟いた。
「もっとお前が欲しい」
具体的なことは言わない。バルトルトは常々、言葉が足りないと言われる。マレクがいつも推し量るかたちだ。今この時もそうなっている。
マレクは何度もうなずいた。
「僕も、ほしい」
ふたりの唇が重なった。舌を絡め合って、間に水音を立てる。バルトルトが喉元で詰まった声を出す。マレクも一際大きい声を上げた。
しばらく体を震わせたマレクは、瞼を開く。バルトルトを見上げて、その頬に手をそえた。
そして、「もう、終わり?」とささやいた。挑発してくるのは、マレクの照れ隠しだと、軍人は心得ている。
「まさか、これからだ」
バルトルトはマレクの手を掴むと、手のひらに唇を押し付けた。
もしこの手が血まみれで薄汚れていようとも、バルトルトは同じように唇を押し付けるだろう。
バルトルトとマレクの出会いは一年前にさかのぼる。
カーテンは閉じていて、明かりといえば、寝台横のテーブルにある燭台だけだ。すでに繋がり合ったふたりの姿を、淡く照らしていた。
背中を向けた男はバルトルト・ガドリン。騎士団を率いる団長である。
王や国を守るために鍛えた筋肉で、今は獣のように激しく腰を振り続けている。休むことなく運動を続けているため、項にまで伸びた黒髪は汗にまみれて湿っていた。
バルトルトに組み敷かれているのは、ひと回りも小柄な青年マレクだった。軍人と比べると細身に見えるだけで、全身には程よく筋肉がついている。
軍人の厳つい顔とは違い、マレクの顔は幼さを残している。澄み切った海のような瞳を瞼の裏に隠して、今は眉間にシワを寄せていた。
マレクは一際大きな声を上げると、腰を浮かせて、張りのある太腿を痙攣させた。
バルトルトは自身を埋めたまま、腰の動きを止めた。太い首と腕に水の筋が伝っていく。
熱の籠もった琥珀色の目で、白い肌を舐めるように視姦していく。
マレクが一息つけたのも束の間だった。剣だこのある指が、青年の両足を掴んだ。
一度、腰を退くと、「あ、やだ」とマレクが甘えるように鼻のかかった声を漏らした。それにバルトルトは喉の奥で笑ってから、一気に貫く。マレクの腰に腕を巻き付けて、奥深くをえぐった。
「そんなにこれが欲しいか?」
マレクはバルトルトの背中に跡ができるほど深く、爪を立てた。
バルトルトはマレクが首を振っても、構わずに腰を押し進めてくる。奥に到達すると、一旦動きを止めた。バルトルトはマレクの前髪を指で払った。あらわになった額に唇を寄せる。
瞼を瞬き、目を丸くしたマレクに、バルトルトは声を上げて笑った。
「可愛いな」
屈強な男が自然とこぼした言葉に、マレクは唇を尖らせる。赤く染まった顔をそらした。
「いつもはそんなこと言わないくせに」
「いつも言ってほしいのか?」
「そんなことはないけど」
バルトルトは鼻で笑う。
「動くぞ」
腰つきが速くなり、バルトルトの引き締まった尻が小刻みに動く。
次第に息も荒々しくなっていく。
喉を反らして、マレクの喘ぐ声が部屋に反響する。
首筋を舐めて、「もっとだ」とバルトルトは呟いた。
「もっとお前が欲しい」
具体的なことは言わない。バルトルトは常々、言葉が足りないと言われる。マレクがいつも推し量るかたちだ。今この時もそうなっている。
マレクは何度もうなずいた。
「僕も、ほしい」
ふたりの唇が重なった。舌を絡め合って、間に水音を立てる。バルトルトが喉元で詰まった声を出す。マレクも一際大きい声を上げた。
しばらく体を震わせたマレクは、瞼を開く。バルトルトを見上げて、その頬に手をそえた。
そして、「もう、終わり?」とささやいた。挑発してくるのは、マレクの照れ隠しだと、軍人は心得ている。
「まさか、これからだ」
バルトルトはマレクの手を掴むと、手のひらに唇を押し付けた。
もしこの手が血まみれで薄汚れていようとも、バルトルトは同じように唇を押し付けるだろう。
バルトルトとマレクの出会いは一年前にさかのぼる。
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