1 / 16
(1)
しおりを挟む
電車を降りる。
改札を抜ける。
人を躱す。
横断歩道を渡る。
渋滞気味の道路を眺める。
落ち葉を踏む。
笑い声が聞こえる。
ショウウィンドウが目に入る。
ダウンジャケットが、───。
温かそうだと思ったときには、小さく舌打ちしていた。
心頭滅却し、極力寒さに関することから目をそらしていたのに、後出しじゃんけんで負けたときのような忌々しさを感じる。
毎日通うこの通りのショウウィンドウのことは分かり切っていたのに、何故か毎回目に入れてしまう。目をそらせばそらすほど、トルソーにコーディネートされたジャケットが目に入るからいただけない。
自分の意思を裏切る両目をぎゅっと瞑り、誉は大きく息を吐いた。
峰石誉は、この街路樹の並ぶ先にある松院高等学校に入学して二回目の冬を迎えた。
巷では評判の進学校だが、校則はいたって緩い。化粧も染毛も特に罰せられることはないうえ、アルバイトも職種にはよるものの許可されていた。ただし、極端に成績が落ちない、という前提ではある。そのせいか飛び抜けて目につく生徒というのは、誉の知る限り殆どいなかった。こういったところがこの校風にありながら進学校と言われる所以なのだろう。
『自由には責任がついてくる』と、いつだったか全校朝礼で校長がそんなことを言っていたのは、まだ寒さを感じる季節ではなかったと記憶の糸をたぐる。
首元を吹き抜ける風に身を竦め、誉は少しずり落ちたスクエア型の眼鏡を中指で押し上げた。ついでに制服のネクタイもきつく締め直す。気休めだと分かっていても、少しでも隙間から風が入らないようについついしてしまうのだ。
再び冷たい風が頬を撫でていき、誉は大きく身震いした。姉である遥夏の忠告を今頃になって後悔する。
(セーター着てくりゃ良かったな…)
誉の横目にマフラーや手袋をした同じ学校の女子生徒が通り過ぎる。毛糸のもこもこふわふわ感がとても温かそうだ。誉は自分を見返し、彼女達との格好の差にさらに寒さが増したように感じて、知らぬうちに恨めしそうに見つめていた。
ぼんやりと防寒具を見ているうちに、今朝の遥夏とのやり取りを思い出した。
「誉、今日かなり冷えるからセーターくらい着てったら?」
「えー?この間もそう言って寒くならなかったじゃん」
玄関で背中越しに聞こえた声に、靴を履きながら不満げに答えると、振り返った先にはむしろ自分の心配でもしたらどうだと言いたくなるくらい、寒そうにパジャマの肩にブランケットを巻きつけている遥夏がいた。トイレのドアノブに手を掛けているから、その状態で用を足すらしい。
前に向き直り、
「…俺、トイレにブランケット持ち込むほど歳取ってな」
とまで言うと、誉は慌てて玄関扉から脱兎の如く逃げ出した。尋常でない禍々しさが背中越しに伝わり、危険だと判断したからだ。直後、後ろから聞こえたのは遥夏が扉に向かって何かを投げつけた鈍い音だった。
思わず振り返って、追われていないことを確かめ、ほうと息を漏らす。
家の中ではほぼ素顔、ジャージかパジャマを部屋着とし、口よりも先に手や足が出る乱暴者の遥夏なので、『きれいなお姉さん』の看板を背負ってる今は、間違ってもあんな格好で外に出られないのを知っている。知っているにもかかわらず、誉は身に染み付いた条件反射で確認するのだ。毎度のことながら遥夏の豹変ぶりには恐ろしいものがある。
姉の遥夏は、家の中でこそ他人様に見せられたものではないが、一歩外に出ると誰もが振り返るほどの『きれいなお姉さん』に変身する。おまけに笑顔を絶やさず人当たりも良い。
実際その器量を生かしてファッション誌のモデルをしているから他より抜きん出ているのだろう。近所の方からも『美人で優しいお嬢さん』で通っているのが誉は釈然としないものの、やはり見てくれは悪くないらしい。姉に対して容姿を誉めるということは、その姉に似ていると言われる弟の身として自画自賛のようで居たたまれない気持ちになる。しかし似ているからといって『男前、格好良い』といった賛辞を貰ったことがないのだから世知辛い世の中である。
「今日、家帰れんのかな…」
溜め息まじりに小さく呟く。自分で招いた結果だとは言え、つくづく緊張感の絶えない姉弟関係だ。
思い返すと遥夏には昔から散々な目に遭わされてきた。使いっ走りにされるのは序の口で、酷いときには彼氏と別れたいがために誉を女装させ、『私のきょうだいに手を出すとかいい度胸じゃない』などと、美人局のようなやり口で浮気現場をでっち上げたこともあった。ヤクザさながらのやり口に閉口したのは言うまでもない。無理が通れば道理が引っ込むとは言うが、無理をするにもほどがある。
その後、件の彼氏に自分は男だと説明してもしつこく言い寄られ、本気で恐怖に戦いたこともあった。立派なトラウマである。
そんなことがあったにも関わらず、遥夏といえば『アンタ、私に似て可愛いからしょうがないよね!』と、呵々大笑していたのだ。自分さえ良ければいい、まさにその典型といえる。
そんな遥夏が今ではご近所受けの良い、そこそこ名前の売れているモデルなのだ。世間の真実というのは、残念なことに見た目が多大に影響するらしい。
ありえない、と誉は顔をしかめて小さく頭を振った。直後背中に強い衝撃を受ける。
「うわっ」
と、誉はうわずった声を上げ、つま先に力を入れるものの咄嗟のことで踏み留まれず、格好悪くも地面に四つん這いになった。
したたかに打ち付けた手や膝がじんじんと痛み、そっと掌を確認すると擦りむいてほんのり血が滲んでいた。とたんに痛みが倍増したように感じるのは、目からの情報が脳に痛みの信号を送っているのかもしれない。じんわり涙目になる。
誉ははっと我にかえり、散らばった持ち物に目を遣る。周りには手放してしまった手さげ鞄と中に入っていた教科書やノート、胸ポケットに仕舞っていたスマートフォン、それに先ほどまで掛けていた眼鏡が舗装道路に散らばっていた。のんびりしている場合ではない。ぐっと目に力を入れ、浮かび上がった涙を無理やり引っ込める。
それらを急いで拾い上げるべく、真っ先に眼鏡を掛けて周囲を見回した。視力が悪くて必要に駆られてでも、ぶつかった相手を捜す為でも、転んでしまった気恥ずかしさでもない。極力顔を晒さないようにしなければならない事情があるからだ。
その事情とは、誉もまた、遥夏と同じくモデルをしているから、である。といっても普通のモデルではなく、女性の格好をして女性モデルを演じているのだ。女装と何が違うのか、と問われればはっきり言って何が違うのか分からない。
(どうせ見られても、誰にも気付かれないだろうけど…)
片膝をついて荷物を拾い上げながら、誉は気付かれたときのことを想像して途方もなく気が滅入った。
ことの発端は春。二年に進級して皆クラスに慣れてきた頃、遥夏の所用(という名のパシリ)で雑誌紙面の撮影が行われている、モデル事務所兼スタジオへ訪ねたときだった。
いつものように受付で名を名乗れば、言わずもがなで通される。
こちらの都合にお構いなく呼び立てるわがままな姉に、誉は不満ゲージが振り切れそうになっていた。数少ない友人の誘いを幾度となく断るのは情が薄いようで心苦しいし、高校生活を平穏に過ごしたい誉にとって、友人との間に波風を立てるのは死活問題でもある。そして遥夏の用事を無視出来ない自分の不甲斐なさにも嫌気がさしていた。
デモを起こしたい…、そんなことを考えながら勝手知ったるスタジオの扉を開ければ、関係者たちが何やら深刻な顔で話し合っているところだった。何事だろうと思いつつ、暇そうに壁に凭れていた遥夏を見つけ不満をぶつける。
「いいかげんにしろよ。俺にだって付き合いがあるんだからな。くだらないことだったら帰るぞ」
「あんた靴のサイズは?」
壁に凭れて腕組みしたまま、遥夏は誉の靴をじっと見る。
「は?二十五だけど…」
意味も分からず素直に答えれば、
「小林さーん」
遥夏は聞くだけ聞くと小林と呼ばれ振り返った男性と、誉の方を指差しながら真剣な面持ちで話しはじめた。すぐにその男性が誉に近づき、品定めするように誉の周りをぐるりと回る。
「この子でいくわ」
この一言であれよあれよという間に誉は、小林に化粧を施され、季節外れの衣装に袖を通された頃には見事なまでの『女子』が出来上がっていた。深刻そうな撮影関係者、靴のサイズ確認、化粧、季節外れの衣装。点と点を線で結ぶと自ずと答えは導きだされる。
「怪我で入院した子の代役、できるよね?」
遥夏は誉の傍らに立つと、肯定しか受け入れない笑顔で尋ねてきた。
「はああああああああっ?」
こうして誉は女装モデルとして華々しく(?)デビューしたのである。
腹立ちまぎれに勢いをつけて立ち上がると、またしても後ろからの衝撃で地面に手をついた。弾みで掛けていた眼鏡が再びカツンカツンと乾いた音を立てて跳ねる。あ、と思う間もなく、ガリだかバリだか分からない嫌な音を立てて眼鏡は踏まれ、割れた。
スローモーションのように見届けた自身の眼鏡の最期は、誰かの靴の下であるとはまことに想定外である。世の中も分からないが、人生も分からない。視界に入っている靴の大きさや、同じ制服のズボンから男子生徒が踏んだらしいことは分かった。どうでもいい情報だ。実にどうでもいい。せめて女子生徒なら良かったのに、と思う心情はこんなときくらい許してほしいものだ。
踏まれた誉、踏んだ男、しばし無言でその場に固まる。
不測の事態に思いのほか混乱していたらしく、誉は顔を上げることもできずしゃがみ込んだまま、ただただ踏まれた眼鏡を見つめていた。そして、沈黙を破ったのは踏んだ男だった。
「マジか…」
そろそろと見上げると、何度か遠目でしか見かけたことのない、学校内でも一、二を争うイケメンと言われる男だった。名前は以前どこかで聞いたことがあるはずなのに、興味がなかったせいか思い出せない。それどころか、名前のことなど瑣末だと思わせるほどのイケメンぶりに吹き飛んでしまった。
意志の強そうなキリッと上がった眉、切れ長の瞳に通った鼻梁、薄い唇にシャープな顎。無造作にセットした明るい色の髪が太陽に透けて金色にも見える。おまけに百八十はあろうかという背丈に、制服の上からでも分かるスポーツで鍛えられたような均整の取れた身体は、まさに男が羨む男だった。
かたや誉の背丈は百七十そこそこの男子高校生平均身長。お世辞にも筋肉があるとは言えない細身の身体である。女性モデルもこなせる中性的な顔立ちは、男らしさとは悲しいほどに無縁だった。
彼をこんな間近で見たのは初めてだったが、結果、どこをとっても嫌味なくらい格好良く、可愛さ余って憎たらしさがただならぬ勢いで湧いてくる。
(俺だってこんな外見だったら女モデルなんかやってねーよ)
家族だけは知っていることとはいえ、公言できない秘密と自身のコンプレックスによる不満。面と向かっては言えないので、ひっそり心の中で不貞腐れる。そうでもしないとやっていられない。
そんな誉も妬む彼にはイケメンという輝かしい肩書きとはまた別に、悪い噂を耳にしたことがある。喧嘩や暴力、恐喝といった下手すれば退学ものの悪い噂。友人の殆どいない自分のところへさえも入ってくるその噂話に、できるならば卒業するまで関わりたくないと思った人物だったのだ。それがよもやこんな形で関わり合うことになるとは、予想だにしなかったが。
(遥夏はキレるし、眼鏡も割れて、不良と対峙しなくちゃならんとか、今日は厄日かな…)
誉は心を無にして遠くを見つめていると、
「つーかお前もさ、こんなところでボサッとしてんのも悪くね?」
と、眼鏡を割った張本人は、悪びれもせず言い放った。
(この状況でその言い草とは…さすが不良)
怒りよりも、その悪びれない態度に清々しさを感じ、関わりがなければうっかり羨望の眼差しで見つめてしまうところだ。が、冷静に割れた眼鏡の現実を再確認する。
(確かにあんたの言いたいことは分かるさ)
往来で周りを確かめず、いきなり立ち上がった誉にも非がある。がだこの場合、後ろから来たのは彼の方なのだ。彼も前方不注意であり、一方的に責められる言われはないはずだろう。
(っていうか、故意でなくても他人の物を壊したらまず謝るだろ)
などと心の中で思ってみたものの、体格も性格も反論するのは無謀だと素早く状況判断できてしまう己が恨めしい。
それならば、と誉はちらりと割れた眼鏡を見遣り、小さく唾を飲み込む。
「…一万円」
と、膝を払いながら立ち上がって彼の前にすっと右手を差し出した。弱者と強者の鉄則の如く、目を合わせないよう左斜め下に視線を落としながら。
「は?」
「だから弁償。その眼鏡の代金。全額とは言わないよ。俺も『ボサッと』してたのが悪いし、半額で良いよ」
いくら相手が悪い噂の奴だとしても、少しは良心というものを見せて欲しい。
本当は金額云々より謝罪の言葉が欲しいのだ。ごめんの一言で、気持ちの治まりもあるだろう。それすらも無いのでは割れた眼鏡も浮かばれない。
それにここは学校近くの往来だ。何かあれば目撃者もいるだろうし、酷い目には遭わないのではないかという打算も働いた。
彼はチッと舌打ちすると、割れてフレームだけになった眼鏡を拾い上げる。
「悪かったよ。俺も前ちゃんと見てなかったし…。つかさ、おまえホント何してたわけ?あんなところに突っ立てたら邪魔だろ」
謝罪の言葉もそこそこに、彼は邪魔くさそうに尋ねた。
そんなこと関係ないだろうとは言えず、
「…あんたとぶつかる前に誰かが後ろからぶつかってきて、転んだんだよ」
渋々そう答える。すると彼はじっと誉を見つめ、ニヤリと口の端を吊り上げた。
「そーいうことは早く言えよ。で、誰だ?そのぶつかった相手は」
「は?…いや、あんたに関係ないし」
嬉々とした表情で答えを待っている彼に、誉は一抹の不安を感じずにはいられなかった。 何故この状況で嬉しそうな顔を見せるのか謎としか言いようがない。
「これも何かの縁だ、遠慮せずに言えよ。悪いようにはしねーから」
どこが〝縁〟で、何を〝悪いようにしない〟のか誉は理解し難く顔を顰めた。
「遠慮してないから。そもそも誰だか見てないし…」
「何だよ使えねーな。…おーい、誰かコイツにぶつかった奴見なかった?」
見下し、またもやチッと舌打ちすると、本人そっちのけで彼は周りに声を掛け始めた。
(初対面なのに使えないとか…普通言うか?!)
誉は苛立つ心を極力抑えて「もういいから」と言って立ち去ろうするが、彼に腕を掴まれて行くに行けなくなる。するとそこへ、話を聞きつけた目撃者たちがちらほら集まってきた。皆それぞれあいつだと指差し、どういう状況でぶつかったかを説明していた。
「…ああ、あいつらか。助かった。サンキュ。──おい、いくぞ」
彼は皆に軽く手を振ってやり過ごし、誉に向き直ると肩を掴んで後半声を落として言った。
「な、なんで」
「いいから来い。どーせ学校行くんだろうが。お前が居ねーと話になんねーんだよ」
「え?ちょっ…!」
誉の戸惑いも無視し、彼は一人言い捨てて先にある校門へ走って行った。
(ものすごく嫌な予感がするんだけど…)
さっきまで寒さで身体が縮こまっていたのに、そんなものはどこかへ吹き飛んでいた。
何をするつもりか分からないけど、何かしでかそうとしていることは分かる。
誉は取りあえずあの男を止めなければと、慌てて彼を追いかけて行くことにした。
しかしそれも唐突に終わる。
我が目を疑い、誉は呆然とその場に立ち尽くしてしまった。
先を走っていたと思っていた彼は大きく足を踏み込み、ゲラゲラと下品な声で笑っている二人組の男子生徒めがけて跳び蹴りを見舞っていたのだ。見舞われた方は、突然の跳び蹴りに意味も分からず呆気に取られ、地面に倒れたまま彼を見ていたが、何かを話す彼に首を勢い良く振って助けを求めていた。成り行きを見守る野次馬たちも口々に『やっぱりあいつは』とか『噂通りだ』などと好き勝手に言っている。
誉も心の中で激しく賛同する。
暴力や恐喝という言葉が頭の中をぐるぐる回り、先ほどまでの彼との会話が、映像が克明に思い出された。眼鏡代を要求したことを、今になって無謀なことをしたのだと気が付いた。
(よし、逃げよう!)
本能が関わったら危険だと、心臓の音が鼓膜を響かせる。
誉は野次馬の壁に隠れて、一目散に校舎へと逃げ込んだ。
『お前がいねーと話になんねーんだよ』
そして、上履きに履き替えたところで彼の言葉を思い出し、貧血を起こしそうなくらい血の気が引いた。
一瞬後には、遥夏との姉弟喧嘩でも出したことがないほどの全速力で、誉は教室まで駆けて行った。
走っている間も、人が宙を舞っている残像は頭から消えることはなかった。
改札を抜ける。
人を躱す。
横断歩道を渡る。
渋滞気味の道路を眺める。
落ち葉を踏む。
笑い声が聞こえる。
ショウウィンドウが目に入る。
ダウンジャケットが、───。
温かそうだと思ったときには、小さく舌打ちしていた。
心頭滅却し、極力寒さに関することから目をそらしていたのに、後出しじゃんけんで負けたときのような忌々しさを感じる。
毎日通うこの通りのショウウィンドウのことは分かり切っていたのに、何故か毎回目に入れてしまう。目をそらせばそらすほど、トルソーにコーディネートされたジャケットが目に入るからいただけない。
自分の意思を裏切る両目をぎゅっと瞑り、誉は大きく息を吐いた。
峰石誉は、この街路樹の並ぶ先にある松院高等学校に入学して二回目の冬を迎えた。
巷では評判の進学校だが、校則はいたって緩い。化粧も染毛も特に罰せられることはないうえ、アルバイトも職種にはよるものの許可されていた。ただし、極端に成績が落ちない、という前提ではある。そのせいか飛び抜けて目につく生徒というのは、誉の知る限り殆どいなかった。こういったところがこの校風にありながら進学校と言われる所以なのだろう。
『自由には責任がついてくる』と、いつだったか全校朝礼で校長がそんなことを言っていたのは、まだ寒さを感じる季節ではなかったと記憶の糸をたぐる。
首元を吹き抜ける風に身を竦め、誉は少しずり落ちたスクエア型の眼鏡を中指で押し上げた。ついでに制服のネクタイもきつく締め直す。気休めだと分かっていても、少しでも隙間から風が入らないようについついしてしまうのだ。
再び冷たい風が頬を撫でていき、誉は大きく身震いした。姉である遥夏の忠告を今頃になって後悔する。
(セーター着てくりゃ良かったな…)
誉の横目にマフラーや手袋をした同じ学校の女子生徒が通り過ぎる。毛糸のもこもこふわふわ感がとても温かそうだ。誉は自分を見返し、彼女達との格好の差にさらに寒さが増したように感じて、知らぬうちに恨めしそうに見つめていた。
ぼんやりと防寒具を見ているうちに、今朝の遥夏とのやり取りを思い出した。
「誉、今日かなり冷えるからセーターくらい着てったら?」
「えー?この間もそう言って寒くならなかったじゃん」
玄関で背中越しに聞こえた声に、靴を履きながら不満げに答えると、振り返った先にはむしろ自分の心配でもしたらどうだと言いたくなるくらい、寒そうにパジャマの肩にブランケットを巻きつけている遥夏がいた。トイレのドアノブに手を掛けているから、その状態で用を足すらしい。
前に向き直り、
「…俺、トイレにブランケット持ち込むほど歳取ってな」
とまで言うと、誉は慌てて玄関扉から脱兎の如く逃げ出した。尋常でない禍々しさが背中越しに伝わり、危険だと判断したからだ。直後、後ろから聞こえたのは遥夏が扉に向かって何かを投げつけた鈍い音だった。
思わず振り返って、追われていないことを確かめ、ほうと息を漏らす。
家の中ではほぼ素顔、ジャージかパジャマを部屋着とし、口よりも先に手や足が出る乱暴者の遥夏なので、『きれいなお姉さん』の看板を背負ってる今は、間違ってもあんな格好で外に出られないのを知っている。知っているにもかかわらず、誉は身に染み付いた条件反射で確認するのだ。毎度のことながら遥夏の豹変ぶりには恐ろしいものがある。
姉の遥夏は、家の中でこそ他人様に見せられたものではないが、一歩外に出ると誰もが振り返るほどの『きれいなお姉さん』に変身する。おまけに笑顔を絶やさず人当たりも良い。
実際その器量を生かしてファッション誌のモデルをしているから他より抜きん出ているのだろう。近所の方からも『美人で優しいお嬢さん』で通っているのが誉は釈然としないものの、やはり見てくれは悪くないらしい。姉に対して容姿を誉めるということは、その姉に似ていると言われる弟の身として自画自賛のようで居たたまれない気持ちになる。しかし似ているからといって『男前、格好良い』といった賛辞を貰ったことがないのだから世知辛い世の中である。
「今日、家帰れんのかな…」
溜め息まじりに小さく呟く。自分で招いた結果だとは言え、つくづく緊張感の絶えない姉弟関係だ。
思い返すと遥夏には昔から散々な目に遭わされてきた。使いっ走りにされるのは序の口で、酷いときには彼氏と別れたいがために誉を女装させ、『私のきょうだいに手を出すとかいい度胸じゃない』などと、美人局のようなやり口で浮気現場をでっち上げたこともあった。ヤクザさながらのやり口に閉口したのは言うまでもない。無理が通れば道理が引っ込むとは言うが、無理をするにもほどがある。
その後、件の彼氏に自分は男だと説明してもしつこく言い寄られ、本気で恐怖に戦いたこともあった。立派なトラウマである。
そんなことがあったにも関わらず、遥夏といえば『アンタ、私に似て可愛いからしょうがないよね!』と、呵々大笑していたのだ。自分さえ良ければいい、まさにその典型といえる。
そんな遥夏が今ではご近所受けの良い、そこそこ名前の売れているモデルなのだ。世間の真実というのは、残念なことに見た目が多大に影響するらしい。
ありえない、と誉は顔をしかめて小さく頭を振った。直後背中に強い衝撃を受ける。
「うわっ」
と、誉はうわずった声を上げ、つま先に力を入れるものの咄嗟のことで踏み留まれず、格好悪くも地面に四つん這いになった。
したたかに打ち付けた手や膝がじんじんと痛み、そっと掌を確認すると擦りむいてほんのり血が滲んでいた。とたんに痛みが倍増したように感じるのは、目からの情報が脳に痛みの信号を送っているのかもしれない。じんわり涙目になる。
誉ははっと我にかえり、散らばった持ち物に目を遣る。周りには手放してしまった手さげ鞄と中に入っていた教科書やノート、胸ポケットに仕舞っていたスマートフォン、それに先ほどまで掛けていた眼鏡が舗装道路に散らばっていた。のんびりしている場合ではない。ぐっと目に力を入れ、浮かび上がった涙を無理やり引っ込める。
それらを急いで拾い上げるべく、真っ先に眼鏡を掛けて周囲を見回した。視力が悪くて必要に駆られてでも、ぶつかった相手を捜す為でも、転んでしまった気恥ずかしさでもない。極力顔を晒さないようにしなければならない事情があるからだ。
その事情とは、誉もまた、遥夏と同じくモデルをしているから、である。といっても普通のモデルではなく、女性の格好をして女性モデルを演じているのだ。女装と何が違うのか、と問われればはっきり言って何が違うのか分からない。
(どうせ見られても、誰にも気付かれないだろうけど…)
片膝をついて荷物を拾い上げながら、誉は気付かれたときのことを想像して途方もなく気が滅入った。
ことの発端は春。二年に進級して皆クラスに慣れてきた頃、遥夏の所用(という名のパシリ)で雑誌紙面の撮影が行われている、モデル事務所兼スタジオへ訪ねたときだった。
いつものように受付で名を名乗れば、言わずもがなで通される。
こちらの都合にお構いなく呼び立てるわがままな姉に、誉は不満ゲージが振り切れそうになっていた。数少ない友人の誘いを幾度となく断るのは情が薄いようで心苦しいし、高校生活を平穏に過ごしたい誉にとって、友人との間に波風を立てるのは死活問題でもある。そして遥夏の用事を無視出来ない自分の不甲斐なさにも嫌気がさしていた。
デモを起こしたい…、そんなことを考えながら勝手知ったるスタジオの扉を開ければ、関係者たちが何やら深刻な顔で話し合っているところだった。何事だろうと思いつつ、暇そうに壁に凭れていた遥夏を見つけ不満をぶつける。
「いいかげんにしろよ。俺にだって付き合いがあるんだからな。くだらないことだったら帰るぞ」
「あんた靴のサイズは?」
壁に凭れて腕組みしたまま、遥夏は誉の靴をじっと見る。
「は?二十五だけど…」
意味も分からず素直に答えれば、
「小林さーん」
遥夏は聞くだけ聞くと小林と呼ばれ振り返った男性と、誉の方を指差しながら真剣な面持ちで話しはじめた。すぐにその男性が誉に近づき、品定めするように誉の周りをぐるりと回る。
「この子でいくわ」
この一言であれよあれよという間に誉は、小林に化粧を施され、季節外れの衣装に袖を通された頃には見事なまでの『女子』が出来上がっていた。深刻そうな撮影関係者、靴のサイズ確認、化粧、季節外れの衣装。点と点を線で結ぶと自ずと答えは導きだされる。
「怪我で入院した子の代役、できるよね?」
遥夏は誉の傍らに立つと、肯定しか受け入れない笑顔で尋ねてきた。
「はああああああああっ?」
こうして誉は女装モデルとして華々しく(?)デビューしたのである。
腹立ちまぎれに勢いをつけて立ち上がると、またしても後ろからの衝撃で地面に手をついた。弾みで掛けていた眼鏡が再びカツンカツンと乾いた音を立てて跳ねる。あ、と思う間もなく、ガリだかバリだか分からない嫌な音を立てて眼鏡は踏まれ、割れた。
スローモーションのように見届けた自身の眼鏡の最期は、誰かの靴の下であるとはまことに想定外である。世の中も分からないが、人生も分からない。視界に入っている靴の大きさや、同じ制服のズボンから男子生徒が踏んだらしいことは分かった。どうでもいい情報だ。実にどうでもいい。せめて女子生徒なら良かったのに、と思う心情はこんなときくらい許してほしいものだ。
踏まれた誉、踏んだ男、しばし無言でその場に固まる。
不測の事態に思いのほか混乱していたらしく、誉は顔を上げることもできずしゃがみ込んだまま、ただただ踏まれた眼鏡を見つめていた。そして、沈黙を破ったのは踏んだ男だった。
「マジか…」
そろそろと見上げると、何度か遠目でしか見かけたことのない、学校内でも一、二を争うイケメンと言われる男だった。名前は以前どこかで聞いたことがあるはずなのに、興味がなかったせいか思い出せない。それどころか、名前のことなど瑣末だと思わせるほどのイケメンぶりに吹き飛んでしまった。
意志の強そうなキリッと上がった眉、切れ長の瞳に通った鼻梁、薄い唇にシャープな顎。無造作にセットした明るい色の髪が太陽に透けて金色にも見える。おまけに百八十はあろうかという背丈に、制服の上からでも分かるスポーツで鍛えられたような均整の取れた身体は、まさに男が羨む男だった。
かたや誉の背丈は百七十そこそこの男子高校生平均身長。お世辞にも筋肉があるとは言えない細身の身体である。女性モデルもこなせる中性的な顔立ちは、男らしさとは悲しいほどに無縁だった。
彼をこんな間近で見たのは初めてだったが、結果、どこをとっても嫌味なくらい格好良く、可愛さ余って憎たらしさがただならぬ勢いで湧いてくる。
(俺だってこんな外見だったら女モデルなんかやってねーよ)
家族だけは知っていることとはいえ、公言できない秘密と自身のコンプレックスによる不満。面と向かっては言えないので、ひっそり心の中で不貞腐れる。そうでもしないとやっていられない。
そんな誉も妬む彼にはイケメンという輝かしい肩書きとはまた別に、悪い噂を耳にしたことがある。喧嘩や暴力、恐喝といった下手すれば退学ものの悪い噂。友人の殆どいない自分のところへさえも入ってくるその噂話に、できるならば卒業するまで関わりたくないと思った人物だったのだ。それがよもやこんな形で関わり合うことになるとは、予想だにしなかったが。
(遥夏はキレるし、眼鏡も割れて、不良と対峙しなくちゃならんとか、今日は厄日かな…)
誉は心を無にして遠くを見つめていると、
「つーかお前もさ、こんなところでボサッとしてんのも悪くね?」
と、眼鏡を割った張本人は、悪びれもせず言い放った。
(この状況でその言い草とは…さすが不良)
怒りよりも、その悪びれない態度に清々しさを感じ、関わりがなければうっかり羨望の眼差しで見つめてしまうところだ。が、冷静に割れた眼鏡の現実を再確認する。
(確かにあんたの言いたいことは分かるさ)
往来で周りを確かめず、いきなり立ち上がった誉にも非がある。がだこの場合、後ろから来たのは彼の方なのだ。彼も前方不注意であり、一方的に責められる言われはないはずだろう。
(っていうか、故意でなくても他人の物を壊したらまず謝るだろ)
などと心の中で思ってみたものの、体格も性格も反論するのは無謀だと素早く状況判断できてしまう己が恨めしい。
それならば、と誉はちらりと割れた眼鏡を見遣り、小さく唾を飲み込む。
「…一万円」
と、膝を払いながら立ち上がって彼の前にすっと右手を差し出した。弱者と強者の鉄則の如く、目を合わせないよう左斜め下に視線を落としながら。
「は?」
「だから弁償。その眼鏡の代金。全額とは言わないよ。俺も『ボサッと』してたのが悪いし、半額で良いよ」
いくら相手が悪い噂の奴だとしても、少しは良心というものを見せて欲しい。
本当は金額云々より謝罪の言葉が欲しいのだ。ごめんの一言で、気持ちの治まりもあるだろう。それすらも無いのでは割れた眼鏡も浮かばれない。
それにここは学校近くの往来だ。何かあれば目撃者もいるだろうし、酷い目には遭わないのではないかという打算も働いた。
彼はチッと舌打ちすると、割れてフレームだけになった眼鏡を拾い上げる。
「悪かったよ。俺も前ちゃんと見てなかったし…。つかさ、おまえホント何してたわけ?あんなところに突っ立てたら邪魔だろ」
謝罪の言葉もそこそこに、彼は邪魔くさそうに尋ねた。
そんなこと関係ないだろうとは言えず、
「…あんたとぶつかる前に誰かが後ろからぶつかってきて、転んだんだよ」
渋々そう答える。すると彼はじっと誉を見つめ、ニヤリと口の端を吊り上げた。
「そーいうことは早く言えよ。で、誰だ?そのぶつかった相手は」
「は?…いや、あんたに関係ないし」
嬉々とした表情で答えを待っている彼に、誉は一抹の不安を感じずにはいられなかった。 何故この状況で嬉しそうな顔を見せるのか謎としか言いようがない。
「これも何かの縁だ、遠慮せずに言えよ。悪いようにはしねーから」
どこが〝縁〟で、何を〝悪いようにしない〟のか誉は理解し難く顔を顰めた。
「遠慮してないから。そもそも誰だか見てないし…」
「何だよ使えねーな。…おーい、誰かコイツにぶつかった奴見なかった?」
見下し、またもやチッと舌打ちすると、本人そっちのけで彼は周りに声を掛け始めた。
(初対面なのに使えないとか…普通言うか?!)
誉は苛立つ心を極力抑えて「もういいから」と言って立ち去ろうするが、彼に腕を掴まれて行くに行けなくなる。するとそこへ、話を聞きつけた目撃者たちがちらほら集まってきた。皆それぞれあいつだと指差し、どういう状況でぶつかったかを説明していた。
「…ああ、あいつらか。助かった。サンキュ。──おい、いくぞ」
彼は皆に軽く手を振ってやり過ごし、誉に向き直ると肩を掴んで後半声を落として言った。
「な、なんで」
「いいから来い。どーせ学校行くんだろうが。お前が居ねーと話になんねーんだよ」
「え?ちょっ…!」
誉の戸惑いも無視し、彼は一人言い捨てて先にある校門へ走って行った。
(ものすごく嫌な予感がするんだけど…)
さっきまで寒さで身体が縮こまっていたのに、そんなものはどこかへ吹き飛んでいた。
何をするつもりか分からないけど、何かしでかそうとしていることは分かる。
誉は取りあえずあの男を止めなければと、慌てて彼を追いかけて行くことにした。
しかしそれも唐突に終わる。
我が目を疑い、誉は呆然とその場に立ち尽くしてしまった。
先を走っていたと思っていた彼は大きく足を踏み込み、ゲラゲラと下品な声で笑っている二人組の男子生徒めがけて跳び蹴りを見舞っていたのだ。見舞われた方は、突然の跳び蹴りに意味も分からず呆気に取られ、地面に倒れたまま彼を見ていたが、何かを話す彼に首を勢い良く振って助けを求めていた。成り行きを見守る野次馬たちも口々に『やっぱりあいつは』とか『噂通りだ』などと好き勝手に言っている。
誉も心の中で激しく賛同する。
暴力や恐喝という言葉が頭の中をぐるぐる回り、先ほどまでの彼との会話が、映像が克明に思い出された。眼鏡代を要求したことを、今になって無謀なことをしたのだと気が付いた。
(よし、逃げよう!)
本能が関わったら危険だと、心臓の音が鼓膜を響かせる。
誉は野次馬の壁に隠れて、一目散に校舎へと逃げ込んだ。
『お前がいねーと話になんねーんだよ』
そして、上履きに履き替えたところで彼の言葉を思い出し、貧血を起こしそうなくらい血の気が引いた。
一瞬後には、遥夏との姉弟喧嘩でも出したことがないほどの全速力で、誉は教室まで駆けて行った。
走っている間も、人が宙を舞っている残像は頭から消えることはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
三ヶ月だけの恋人
perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。
殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。
しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。
罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。
それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる