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せつなときずな 21
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「せつなときずな」 21
40代とおぼしき、背が高く、一重の眼が無感情を醸し出す担当刑事は、刹那が去る直前に絶望的な助言をした。
「林さん、帰ったら身の回りの必需品を早急にまとめ、しばらく家を離れてください。
明日の新聞に実名で事件が報じられるでしょう。
有名人でもありませんし、過度の傷害や強盗容疑はないとはいえ、多分今までと同じ生活は送れないと覚悟された方がいい。
あと、マスコミには一切取り合わない方がいいです。
何を言っても良い印象を持ってもらえることは不可能です」
詰んだなと、刹那は聞こえないような小声で呟いた。
そこからは急いで事に当たった。
「考えるな、動け」
ずっとそう繰り返し口にした。
保育園に車を飛ばしながらサキに電話する。
旦那はレイプで逮捕された。
家には当分帰れないからしばらくホテルに身を隠す。
保育園は退園する。
福原興業も私を除籍して欲しい。
悪いけど、当面の経済的支援をして欲しい。
驚くほど業務的な報告を前に、サキもかける言葉が見つからない。
「わかった。滞在先が決まったら連絡して。
落ち着いたら必要な物を教えて。それを用意して落ち合おおう」
保育園には身内に不幸があったと話し、絆を早退させると、住んでいるマンションに戻るも車を駐車場には入れず、徒歩ではまあまあ距離がある最も寄りのコインパーキングに車を停めた。
エレベーターで部屋より階上に上がり、廊下に出てしばらく時間を置いてから階段で部屋に降りる。
絆には、一切話したり音を立てたりしてはいけないと言ってある。
部屋のカーテンを閉め、段ボール箱に当面の着替えなどの日用品を素早く詰めると、予め連絡しておいた宅急便の引き取りが来て、荷物をピックアップする。
宛先は実家のサキの離れ。
必要最低限の身の回りの荷物を鞄に詰め込み、先程と同じように迂回しながらパーキングに戻ると、携帯でホテルを検索する。
本当はラブホの方が身を隠すには都合がいい気がしたが、絆もいるしサキとも合流できないので諦める。
まだ事件が報道されていないのにもかかわらず、刹那には、もう何一つとして信じられるものなど無くなってしまった。
この世界は全てが、刹那と絆の敵になるのだとしか思えなかった。
そのタイミングで、サキから電話が入る。
「部屋は確保したわ。
さつきマンションは知ってるでしょ?405号よ。先に行って待ってるわ」
シングルマザー専用物件を運用するハートスタッフは、一宮市の社協と連携して、DVなどの被害者の保護にも関わっている。
ハートスタッフに空き部屋がない時のため、福原興業が持っている人気の無い旧い物件の部屋を、いつでも使える状態にしているのだ。
サキはそれを使うと決断した。
「会社には迷惑かけられないよ」
「そんな会社なら、私は辞めるわ」
サキは刹那の心配を却下した。
福原興業の物件で一番旧いそれは、サキが生まれる前に建っている。
4階建てでエレベーターは無く、トイレと風呂はあるものの公団と同じ仕様、部屋は全て和室で、今のご時世、お世話にも借り手がつくような部屋ではない。
しかしありがたいことに、いつでも使えるように電気、ガスを契約してあり、エアコンだけは新調してあった。
ペンキが捲れ上がったぼろぼろのスチールドアを開けると、サキが部屋に備えてあった小さな座卓に、割と高めの幕の内弁当を用意して待っていた。
「おつかれさま」
サキはそう言うと、刹那と絆に座るように言った。
「まずは食べなさい。
話はそれからよ」
40代とおぼしき、背が高く、一重の眼が無感情を醸し出す担当刑事は、刹那が去る直前に絶望的な助言をした。
「林さん、帰ったら身の回りの必需品を早急にまとめ、しばらく家を離れてください。
明日の新聞に実名で事件が報じられるでしょう。
有名人でもありませんし、過度の傷害や強盗容疑はないとはいえ、多分今までと同じ生活は送れないと覚悟された方がいい。
あと、マスコミには一切取り合わない方がいいです。
何を言っても良い印象を持ってもらえることは不可能です」
詰んだなと、刹那は聞こえないような小声で呟いた。
そこからは急いで事に当たった。
「考えるな、動け」
ずっとそう繰り返し口にした。
保育園に車を飛ばしながらサキに電話する。
旦那はレイプで逮捕された。
家には当分帰れないからしばらくホテルに身を隠す。
保育園は退園する。
福原興業も私を除籍して欲しい。
悪いけど、当面の経済的支援をして欲しい。
驚くほど業務的な報告を前に、サキもかける言葉が見つからない。
「わかった。滞在先が決まったら連絡して。
落ち着いたら必要な物を教えて。それを用意して落ち合おおう」
保育園には身内に不幸があったと話し、絆を早退させると、住んでいるマンションに戻るも車を駐車場には入れず、徒歩ではまあまあ距離がある最も寄りのコインパーキングに車を停めた。
エレベーターで部屋より階上に上がり、廊下に出てしばらく時間を置いてから階段で部屋に降りる。
絆には、一切話したり音を立てたりしてはいけないと言ってある。
部屋のカーテンを閉め、段ボール箱に当面の着替えなどの日用品を素早く詰めると、予め連絡しておいた宅急便の引き取りが来て、荷物をピックアップする。
宛先は実家のサキの離れ。
必要最低限の身の回りの荷物を鞄に詰め込み、先程と同じように迂回しながらパーキングに戻ると、携帯でホテルを検索する。
本当はラブホの方が身を隠すには都合がいい気がしたが、絆もいるしサキとも合流できないので諦める。
まだ事件が報道されていないのにもかかわらず、刹那には、もう何一つとして信じられるものなど無くなってしまった。
この世界は全てが、刹那と絆の敵になるのだとしか思えなかった。
そのタイミングで、サキから電話が入る。
「部屋は確保したわ。
さつきマンションは知ってるでしょ?405号よ。先に行って待ってるわ」
シングルマザー専用物件を運用するハートスタッフは、一宮市の社協と連携して、DVなどの被害者の保護にも関わっている。
ハートスタッフに空き部屋がない時のため、福原興業が持っている人気の無い旧い物件の部屋を、いつでも使える状態にしているのだ。
サキはそれを使うと決断した。
「会社には迷惑かけられないよ」
「そんな会社なら、私は辞めるわ」
サキは刹那の心配を却下した。
福原興業の物件で一番旧いそれは、サキが生まれる前に建っている。
4階建てでエレベーターは無く、トイレと風呂はあるものの公団と同じ仕様、部屋は全て和室で、今のご時世、お世話にも借り手がつくような部屋ではない。
しかしありがたいことに、いつでも使えるように電気、ガスを契約してあり、エアコンだけは新調してあった。
ペンキが捲れ上がったぼろぼろのスチールドアを開けると、サキが部屋に備えてあった小さな座卓に、割と高めの幕の内弁当を用意して待っていた。
「おつかれさま」
サキはそう言うと、刹那と絆に座るように言った。
「まずは食べなさい。
話はそれからよ」
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