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せつなときずな 38
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「せつなときずな」38
実家から帰る道は、なんだかぼやけて見えた。
せつなは「黒猫」のシフトが無い日曜日に、サキに呼ばれた会見に臨むことにした。
想定内のことと、想定外のこと、どちらも自分に深く関わることだったが、後者の方がずっと多く、それを理性や感情の中で整理することに困難を感じていた。
唐突といえば唐突だったが、「あなたがお店で働くって話の方が、私には唐突だったわ」とサキに言われた。
お母さんにとっては、決して唐突ではなかったんだ。
それは、理解できる。
リビングでは田辺裕道をあらためて紹介された。
「ハートスタッフ」に在籍していた頃、ビジネスパートナーの一人としてよく事務所に訪れていたその男が、サキが付き合っている彼氏だとは感じていた。
サキはプライベートのパートナーがいることは明かしていたが、若い頃とはうって変わり、その存在について一切語ることは無かった。
刹那は娘でありながら、母親がやっと大人になったなと思っていた。
しかし、お互いこの歳で親子を新しくやる覚悟までは持っていなかった。
田辺はそれを言及した。
「刹那さん、私はお母さんからプロポーズされました。謹んでそれをお受けしました。
ただし、刹那さんのご理解がなければ、籍は入れません。
ご存知かもしれませんが、今までサキさんとは長くお付き合いしてきました。
しかし私は、サキさんが刹那さんと気持ちが共有できない限り、紹介しないで欲しいとお伝えしてきました。
今回、プロポーズいただいた事で結果として事後承諾となってしまい、本当にすいません」
誠実な男だなと刹那は思った。
サキが変わったきっかけは、この恋人との付き合いだったことをあらためて思い知った。
「お母さん、田辺さん、おめでとう。
私は…それでいいです」
刹那はどう答えていいのかわからなかったのだ。
「祝福します」「大丈夫です」「嬉しいです」どれも違った。
だからと言って「それでいいです」は無いだろうが、その言葉に嘘偽りは無かったのも事実だ。
言って後悔したが、じゃあどう言えば良かったのかはわからない。
その後、サキの口から新居を建てる話を聞いた。
想定外はそこからどんどん大きくなる。
「刹那と一緒に住む二所帯住宅にしたいの。
刹那さえ良ければ。
カフェのアルバイトでシンママはやれないこと、わかるよね?
今は援助してるし、経済的なことはどうでもいいのだけど、いつまでも自立できないのでは絆にとってもいい親にはなれないと思う。
ハートスタッフに復帰して欲しい。
それができなければ、私たちと一緒に暮らす選択をして」
田辺は、強制的な提案だと案じるのでサキの考えには同意しないとほのめかした。
義父になろうとする男の率直な気持ちは嬉しかったが、つまりこれは母娘の問題なのだ。
「それは…」
刹那は口ごもった。
自分の人生を母親にグリップされることへの不満が、一気に心に拡がった。
「そんなこと…直ぐには決められない」
会見の後、絆を預けた託児所に向かう車で、まだ時間はあるのだからと街を流した。
設計のタイムリミットがあるから1週間以内に返事が欲しいとサキは口にした。
何なんだ、一体…
久しぶりにできたはずの居場所、それは私にとって必要ではないと、そういう事なのか?
人にはそれぞれの人生があって、確かに私は経済的に親を頼ってはいるが、もう少し時間をくれてもいいのではないか。
私のわがままなのか?
私は、これまでわがままに生きてきたつもりはなくて、結果的にそんな状況になってしまったことは、理解してくれてたのじゃなかったのか。
私は…
刹那は名鉄本線の一本東の裏道に入った。
安藤毛織の旧い社屋の前に車を停めて、どうにもならない気持ちを砂のような時に溶かした。
泣くなと呟いた。
泣きはしなかったが、無力であることは変わらなかった。
実家から帰る道は、なんだかぼやけて見えた。
せつなは「黒猫」のシフトが無い日曜日に、サキに呼ばれた会見に臨むことにした。
想定内のことと、想定外のこと、どちらも自分に深く関わることだったが、後者の方がずっと多く、それを理性や感情の中で整理することに困難を感じていた。
唐突といえば唐突だったが、「あなたがお店で働くって話の方が、私には唐突だったわ」とサキに言われた。
お母さんにとっては、決して唐突ではなかったんだ。
それは、理解できる。
リビングでは田辺裕道をあらためて紹介された。
「ハートスタッフ」に在籍していた頃、ビジネスパートナーの一人としてよく事務所に訪れていたその男が、サキが付き合っている彼氏だとは感じていた。
サキはプライベートのパートナーがいることは明かしていたが、若い頃とはうって変わり、その存在について一切語ることは無かった。
刹那は娘でありながら、母親がやっと大人になったなと思っていた。
しかし、お互いこの歳で親子を新しくやる覚悟までは持っていなかった。
田辺はそれを言及した。
「刹那さん、私はお母さんからプロポーズされました。謹んでそれをお受けしました。
ただし、刹那さんのご理解がなければ、籍は入れません。
ご存知かもしれませんが、今までサキさんとは長くお付き合いしてきました。
しかし私は、サキさんが刹那さんと気持ちが共有できない限り、紹介しないで欲しいとお伝えしてきました。
今回、プロポーズいただいた事で結果として事後承諾となってしまい、本当にすいません」
誠実な男だなと刹那は思った。
サキが変わったきっかけは、この恋人との付き合いだったことをあらためて思い知った。
「お母さん、田辺さん、おめでとう。
私は…それでいいです」
刹那はどう答えていいのかわからなかったのだ。
「祝福します」「大丈夫です」「嬉しいです」どれも違った。
だからと言って「それでいいです」は無いだろうが、その言葉に嘘偽りは無かったのも事実だ。
言って後悔したが、じゃあどう言えば良かったのかはわからない。
その後、サキの口から新居を建てる話を聞いた。
想定外はそこからどんどん大きくなる。
「刹那と一緒に住む二所帯住宅にしたいの。
刹那さえ良ければ。
カフェのアルバイトでシンママはやれないこと、わかるよね?
今は援助してるし、経済的なことはどうでもいいのだけど、いつまでも自立できないのでは絆にとってもいい親にはなれないと思う。
ハートスタッフに復帰して欲しい。
それができなければ、私たちと一緒に暮らす選択をして」
田辺は、強制的な提案だと案じるのでサキの考えには同意しないとほのめかした。
義父になろうとする男の率直な気持ちは嬉しかったが、つまりこれは母娘の問題なのだ。
「それは…」
刹那は口ごもった。
自分の人生を母親にグリップされることへの不満が、一気に心に拡がった。
「そんなこと…直ぐには決められない」
会見の後、絆を預けた託児所に向かう車で、まだ時間はあるのだからと街を流した。
設計のタイムリミットがあるから1週間以内に返事が欲しいとサキは口にした。
何なんだ、一体…
久しぶりにできたはずの居場所、それは私にとって必要ではないと、そういう事なのか?
人にはそれぞれの人生があって、確かに私は経済的に親を頼ってはいるが、もう少し時間をくれてもいいのではないか。
私のわがままなのか?
私は、これまでわがままに生きてきたつもりはなくて、結果的にそんな状況になってしまったことは、理解してくれてたのじゃなかったのか。
私は…
刹那は名鉄本線の一本東の裏道に入った。
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泣くなと呟いた。
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