せつなときずな

岡田泰紀

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せつなときずな 42

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「せつなときずな」42

「一時託児所で契約社員として働く」

刹那の唐突な宣言に、サキは自分の娘の顔を思わず二度見した。

「何で相談ぐらいしないの?」

怒ってはいない。娘の真意がまるでわからないだけだ。
「あんた、子供好きじゃないでしょ」

「どうしてそう思うの?」

「それは…」
サキは、刹那と絆の親子の間に横たわる遺憾ともし難い空気を感じていたが、それを口に出す勇気は無かった。
「刹那が絆以外の子供にやさしくしている姿を見たことがないから」

「確かに、子供は好きではないかも」

それはもしかしたら、あなたのせいなのだ。
私が子供の頃、あなたはまあまあぶっ飛んだ母親で、生活感のない容姿を自分だけでなく私にも施した。
私はあなたのマスコットのような存在で、可愛がるための愛玩物だった。
それが元で、私は回りから浮いた存在になり、直にいじめの対象としか扱われなくなった。
子供とは、無邪気ではなく、残酷なの存在なのだ。

あなたが母親に成長したことは幸いだけど、それは既に遅かったのかもしれない。
私は準備も覚悟もないままで、母親になってしまった。
パートナーは無様な罪を犯して、幼い息子と私を残して去らざるを得なかった。

それでも、子供を好きになれるとでも?



「黒猫のマダムの紹介なのね?」

図星のことを言われたが、誰とも親交がないのだから、美緒さゆり以外の名前は出ないだろう。
美緒から紹介された杉山の言葉を思い出した。

「福原さん、あなた、子供は好きじゃないですよね」

どうしてそう思うのかと聞くと
「そんな顔をしています」と杉山は答えた。
失礼にも程があるが、それもまた事実ではあった。

「美緒さん以外に誰もいないから。
私はお母さんと違って、人生のリスクヘッジに失敗してるの」

また難しいことを言うなとサキは思ったが、そんなことはどうでもいい。
美緒のことは、どうにも不吉な感じがしてならない。

「で、条件は?」

「社保年金含みの総支給で20万。契約だから賞与はないけど、勿論時間外手当は別に付く。
一宮駅前のビルの中にあるハニーぶれっどって名前の託児所なんだけど、保育園の別事業でやってて、本体の保育園の方で絆をみてもらえるから本当に助かるよ」

サキは保育園の「ハニーぶれっど」は知っていたが、美緒との関係性がわからない。

「マダムと保育園のつながりは何だったの?」

「そんなことは私にもわからない」

確かにわからなかったし、知ろうとも思わなかった。
しかし、「覚悟が必要かも」と美緒さゆりが言った通り、高校卒業後正規採用の経験すらない自分に、こんな好条件が無条件に出された訳ではなかった。

「こんなことを言うのは刹那にとっては不快だとわかってはいるけど

お母さん、どうしても何かある気がして不安なの」

お母さんの直感は当たっているよと、心の中でだけ刹那は答えた。
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