エンジェルダスト

岡田泰紀

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エンジェルダスト 1

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「エンジェルダスト」1

山田は、何度も墜ちた。

「えっ、また…」

秋田は、やっぱり、思った通りだった。
口から出た言葉を恥ながら、気持ちはどうにもならなかった。

好きなだけ、思い通りにすればいい。

思い通りにされたいのだ。

秋田以上に、自分がかたくなっていくことがわかる。
初めてなのに、本当は、決して快い訳でもなく、寧ろ、時にそれは苦痛ですらあるのに、どうにもならないぐらいに乱れた。

こうなる気はしていた。
望みはしなかったし、自分のことを、そんな風にイメージはできなかった。

いや、嘘だ。
どこかで、こんな風になることを、感じていた筈だ。
望みはしてなかったけど。

でも、抗うつもりも、なかった…

僕らは、性的な人間だ。
そこだけで、繋がっていた。
心のことを、敢えて必要とはしない。
だからといって、こうなるのは、あんまりだ。

受容なのだ。
僕は、器だ。
器が悦ぶのは、倒錯だ。
倒錯して、悦んでいるのだ。

もう、どっちが先か、わからない…

「日出さんは、山ちゃんのことが好きだったんだ。

オレは知っていた」

「…」

秋田の囁きに、あなただけではない、それを知ってたのはと、山田は口にしなかった。

「日出郞は、山田さんのことが好きだったんだよ。
この人黙ってるけど、わかってたからね。

私が奪っちゃった。山田さん、ゴメンね」

日出郞と日菜子の祝いで、日菜子は嬉しそうに山田に囁いた。
日出郞は否定するでもなく、笑顔で山田を見ていた。

あの日、隣で秋田は、日出郞が山田にリクエストしたエビマヨをつまみながら、少しニヤついていた。

背後から抱かれるのが、ずっと夢だった。

今まで、女犯しかしてこなかった。
妻は僕を受け入れはしなかった。
器は美しく、なのに、何も盛り付けできない。
秋田は、女でも男でも、分け隔てなく行為に及ぶ。
僕らは、カトリックでなくて良かったに違いない。
きっと、抱くより抱かれることを望んでいたのだ。
愛でるより、愛でられたいのだ。
子供は玩具を欲しがる。
僕は玩具になりたがる。
この男は躊躇しなかった。
僕はどうしてまかせたのか?
波は、何度も来る。
溺れたい。
好きにすればいい。
好きにされたいのだ。

「可愛いいよ…」

秋田の言葉が、遠くに思える。

「こんなことをして…こんなのを、僕に書かせるつもりなの?…」

「山ちゃん、そりゃ、自分だろ?

自分で思って、自分で欲情してんだろ?

あんた、変態だよ」

そうなんだ。
この男は、それを知ってて、僕を抱いたんだ。

木乃伊獲りが、木乃伊になるって、初めて知ったよ。

秋田の獣性が、山田のフェミニンな隠された顔を暴くのは、必然だった。

同じ屋根の下に住まう人間ではないのだ。

「立川さんは…」

「別れるよ」
秋田はにべもない。

「立川さんの代わりに、僕をおもちゃにしてる…

誰かの代わりに誰かを好きになるなんて、そんなの…」

「恋愛じゃないって言いたいのかい?

オレは山ちゃんが可愛いいから抱いてるだけさ。

あんたも、そうなんだろう?」

唇を塞がれて、なら、可愛いがってほしい、山田はそう思って、考えるのはやめた。
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