転生後推しが俺の執事になっていました

三

今話をしている人はゲームを始めてすぐに出てくる年上の執事。名前はユグナ。俺の最推し。
オールバックに髪を固め大人の気品を漂わせている。
黒のユニフォームがとても良く似合う。

ユグナ執事は俺の額に手を伸ばす。

「……お坊ちゃま…どうやら熱があるようです。体調が優れませんか?」

ユグナ執事は心配した表情で俺を見つめる。

「…うーん…今まで大変で…ほっとしたのかな」

緊張がほぐれた時、決まって熱を出す。

ぼやっとする視界に最推しがいる。見慣れているはずなのに信じられない。　
同じ空間で息を吸い話している。

「そうでしたか…ゆっくりとお休みください」

朗らかな笑みを俺に向ける。

目を閉じようとし、ためらう。

またあの世界に戻るかもしれない。

怖い、怖い、助けて。

手が無意識に震える。

「…お坊ちゃま…私がそばにおります。どこにも行きません。」

そうだ…俺は一人じゃない。

心強い味方がいる。

ユグナ執事は俺の震える手を優しく包み込む。

人の温もりを感じる。

長いこと感じることのなかった優しさを。