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第二話 紹介
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窓から入るのどかな春の風が長髪の栗色の髪をたなびかせる。澄んだ青い瞳が女性の姿となった俺を映す。
ターレン王子は髪をかきあげながら優しい声でつぶやく。
「側室になる答えはすぐに出せずともよい。
…貴方に好きになってほしいから…それだけの努力はしよう。その後に決めてほしい。」
顔を赤くしながら少し震えて話す様子が愛らしい。
少し間を置いて真剣な面持ちで王子は口を開く。
「…実は貴方に会わせたいお方がいる。」
王子がお方と敬意を込めていることから高貴な身分の方であることは予想がつく。どんな方なのだろうかと考えていると王子の瞳が僅かに揺れた。
先程まで宝石のように輝いていた青い瞳は光をなくし影を浮かべていた。
栗色の眉を寄せ不安そうに俺を見つめる。心配させまいと慌てるようにして王子はぎこちなく口角をあげ笑みをつくる。
「今の貴方の体では無理はできない。ゆっくり休んでいてほしい。案じなくともよい。父上に会わせたい人がいると伝えると喜んでおられたくらいだ。安心して待っていろ。時期に来られる筈だ。」
父上となると…まさか…。不安がより一層募る。速く王子に俺が女性では無いことを伝えなければならない。そう思いながらも喉が締め上げられたような感覚になり声を出すことができない。
静まり返った王子の居室に長廊下を歩く音だけが段々と大きくなり響く。
「父上。お越しくださりありがとうございます。待っておりました。」
王子は先程から変わらない笑みを父である王に向ける。
俺は頭を垂れたまま王の姿を想像する。
儚げで触ると今にも溶けてしまいそうな繊細さを持つ王子の父はどのようなお姿をされているのだろう。
「それほど固くならずともよい。顔をあげよ。」
恐る恐る顔をあげるとそこには白蛇を思わせるような細い目を持ち栗色の長髪をたらした凛とした美しさを放つ王がいた。
王は小首をかしげ微笑みながら
「美しい人だ。王子には勿体無いくらい。私の側室になってもらいたいくらいだ。」
笑いながら冗談を言う王に俺は正体がばれずに良かったと安堵する。しかし、王子は動揺を隠せない様子であった。
「父上…畏れながら申し上げます。この娘は私が心を決めた想い人でございます。誰にも渡す気はございません。」
「分かっておる。お前は冗談も通じないのか」
やや呆れながらも朗らかに笑う王の姿から鷹揚な人柄が伺えた。
「ふっ。私は席を外す故、二人の時間を楽しむがよい。」
なにやら満足そうな笑顔を浮かべ王は先程来た長廊下に向かって歩いていった。
緊張が解けたせいか今まで気づかなかったふわりと甘い匂いが鼻を霞める。どこか懐しいような匂いだった。
「どうやら匂いがするのに気づいたようだな。」
いたずらっぽく笑う王子を見て意外な一面を見たような気がした。
「今、貴方の為に香水を作っているんだ。この匂いの正体はクマリといって宮廷の庭園にのみ育つ事ができる花を香料に使っているんだ。クマリは綺麗な真紅色をしておる、…貴方にぴったりではないか?」
白く細い手が俺の手を包み込む。伝わってくる熱気に心臓の速鐘が止まらない。今にも意識を失いそうなくらいに俺は王子に心を奪われていた。
ターレン王子は髪をかきあげながら優しい声でつぶやく。
「側室になる答えはすぐに出せずともよい。
…貴方に好きになってほしいから…それだけの努力はしよう。その後に決めてほしい。」
顔を赤くしながら少し震えて話す様子が愛らしい。
少し間を置いて真剣な面持ちで王子は口を開く。
「…実は貴方に会わせたいお方がいる。」
王子がお方と敬意を込めていることから高貴な身分の方であることは予想がつく。どんな方なのだろうかと考えていると王子の瞳が僅かに揺れた。
先程まで宝石のように輝いていた青い瞳は光をなくし影を浮かべていた。
栗色の眉を寄せ不安そうに俺を見つめる。心配させまいと慌てるようにして王子はぎこちなく口角をあげ笑みをつくる。
「今の貴方の体では無理はできない。ゆっくり休んでいてほしい。案じなくともよい。父上に会わせたい人がいると伝えると喜んでおられたくらいだ。安心して待っていろ。時期に来られる筈だ。」
父上となると…まさか…。不安がより一層募る。速く王子に俺が女性では無いことを伝えなければならない。そう思いながらも喉が締め上げられたような感覚になり声を出すことができない。
静まり返った王子の居室に長廊下を歩く音だけが段々と大きくなり響く。
「父上。お越しくださりありがとうございます。待っておりました。」
王子は先程から変わらない笑みを父である王に向ける。
俺は頭を垂れたまま王の姿を想像する。
儚げで触ると今にも溶けてしまいそうな繊細さを持つ王子の父はどのようなお姿をされているのだろう。
「それほど固くならずともよい。顔をあげよ。」
恐る恐る顔をあげるとそこには白蛇を思わせるような細い目を持ち栗色の長髪をたらした凛とした美しさを放つ王がいた。
王は小首をかしげ微笑みながら
「美しい人だ。王子には勿体無いくらい。私の側室になってもらいたいくらいだ。」
笑いながら冗談を言う王に俺は正体がばれずに良かったと安堵する。しかし、王子は動揺を隠せない様子であった。
「父上…畏れながら申し上げます。この娘は私が心を決めた想い人でございます。誰にも渡す気はございません。」
「分かっておる。お前は冗談も通じないのか」
やや呆れながらも朗らかに笑う王の姿から鷹揚な人柄が伺えた。
「ふっ。私は席を外す故、二人の時間を楽しむがよい。」
なにやら満足そうな笑顔を浮かべ王は先程来た長廊下に向かって歩いていった。
緊張が解けたせいか今まで気づかなかったふわりと甘い匂いが鼻を霞める。どこか懐しいような匂いだった。
「どうやら匂いがするのに気づいたようだな。」
いたずらっぽく笑う王子を見て意外な一面を見たような気がした。
「今、貴方の為に香水を作っているんだ。この匂いの正体はクマリといって宮廷の庭園にのみ育つ事ができる花を香料に使っているんだ。クマリは綺麗な真紅色をしておる、…貴方にぴったりではないか?」
白く細い手が俺の手を包み込む。伝わってくる熱気に心臓の速鐘が止まらない。今にも意識を失いそうなくらいに俺は王子に心を奪われていた。
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