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第32話 山田さんちの娘2
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アレから1週間が経った。
こちらに来たあと直ぐ、豪華過ぎる部屋に連れ込まれ、悪夢のようにダサいヒラヒラなドレスを着せられそうになった。断固拒否して、いま着ているものと同じものが良いと伝えたが無いと言う。分かってて言ったんだが、嫌味が通じないらしい。マジレスで、作るから見本に貸してくれと言われた。これも戻ってこない可能性を考えて、やっぱり拒否する。
取り敢えず替えの服としては、王子の取り巻きの取り巻きに居た、事務職っぽい手帳を携えた女性と同じ服を要求する。(文官と言うらしい)
王子は優しく丁寧に接してくれるが、こちらとしては橘さんを斬り殺しても笑顔でいる異常者って認識が消えない。
チヤホヤしたいのだろう、顔ばかり異常に整った取り巻きを私の側に置きたがる、まるで監視するように、だ。お仕事で貴方の側に居ます、って感じがして気分が悪いよ。
こいつらは、ただ私を甘やかすだけ。王子の異常性がなければ、イケメンにチヤホヤされて、さぞやキャッキャウフフと過ごしたかもね。〇〇は斬り殺す、それがこちらの世界では常識なのかもしれないが、私には異常なんだよ。
そんな中、初めてまとも(人間的に)な男性に引き合わされた。スラックスにシャツ、背広の上着代わりにマントを着た格好をしている。イケメンなのに、コスプレしてるようで残念かな。ただ、その表情も言葉も、私の世界の常識に近いものを感じる。
「早速だがマーリン、聖女様の鑑定を頼む」
「まず、状況は説明されたのですか?」
「いや、技能を確認しておかないと、今後の方針も立たないからな」
そんなやり取りをする王子とマーリンさん。最後に、私に向き合って挨拶を述べる。
「改めまして聖女様、マーリンと申します。
今から行うのは、貴方の才能を調べる魔法です。
鑑定と言います、自分でも認知していない才能が分かるとでもお思いください」
分かったような分からないような。従うしかないんでしょ? と、思わず口に出してしまった。
「申し訳ありません。
しかし、確認しておかないと、どこまで行軍できるか決まりませんから」
「行軍?」
「ええ、聖女様の役割です。
この世界では、人では滅ぼせない存在があるのです。
貴方はそれができる可能性がある、そのような才能に我々はお越し願ったのです」
「召喚ってやつ?」
「そうです。
実際に我々が行ったのは儀式のみで、女神様が遣わすと言われています」
「役割が終われば帰れるの?」
「はっきり言うと分かりません。
以前の聖女召喚を経験した世代はもういません。
ただ、留まったとか、元の世界に帰還したとか、数多の記録にはどちらの場合も存在しますね。
いえ、召喚は何度もあったのです。それぞれの聖女が別の選択をしたものだと思います」
今までも拉致られた人がいるのか。確かに、戻って留年確定、受験大失敗の状況なら留まる選択肢も出てくるな…… マジで最悪だよ。
「鑑定は、貴方に抵抗する意思がなければ成功します」
頷いてみせると、マーリンさんは目を瞑ってゴニョゴニョと呟いてからこちらを見る。そして、手帳に何かを書き始めた。
アカネ ヤマダ
才能:火属性、水属性、風属性、土属性
技能:女神ラダの加護、光属性広域化、ニジニ言語
「女神様は3つの技能を聖女に与えると聞いていましたが……」
感嘆のためか、周囲からほぉ…… と声が漏れる。
凄いのかどうなのかは、良く判らない。
この属性とやらは「魔法の属性」なのだろうか? 火やら水の魔法が使えると? これは分かる。でも、女神の加護はまったく見に覚えがないよ、よくあるのは異世界に呼ばれる前に面接みたく女神に会うとかだよね。でも誰にも会ってないし。
ニジニ言語は、この世界の言葉なのだろう。どう見ても周りに日本語が通じるような見てくれの人は居ない、この世界の住人と話すために与えられたのだろう。私には外国語を話している意識はないし、周りも日本語を話しているような認識しかない。
最後が問題、「光属性広域化」とはなんだろう。光属性の才能は無いが、広域化の才能はあると?
「どういう事だ? マーリン」
王子が同じ疑問を口にする。
「考えられるのは、直接に聖女の役割をアカネ殿が与えられたのではない、
という事でしょうか。
私は見ていないのですが、召喚では二人の女性が現れたとか。
光属性の才能を持つ方と、それを補助する才能を持つアカネ殿の二人が
聖女の役割を果たす。
そんな可能性がありますね」
マーリンさんが、かなり無理矢理に私をフォローしているのが解かる。私が考える最悪のパターンは、本来は橘さんが与えられる技能を、すべて私が貰っているって奴だ。わざわざ二人に分ける必要なんてないから。
「それでは光属性を持つ者を探さないとな」
王子がしれっと言ってのける。二人居たことには触れない。
不穏な空気になってきた。
こちらに来たあと直ぐ、豪華過ぎる部屋に連れ込まれ、悪夢のようにダサいヒラヒラなドレスを着せられそうになった。断固拒否して、いま着ているものと同じものが良いと伝えたが無いと言う。分かってて言ったんだが、嫌味が通じないらしい。マジレスで、作るから見本に貸してくれと言われた。これも戻ってこない可能性を考えて、やっぱり拒否する。
取り敢えず替えの服としては、王子の取り巻きの取り巻きに居た、事務職っぽい手帳を携えた女性と同じ服を要求する。(文官と言うらしい)
王子は優しく丁寧に接してくれるが、こちらとしては橘さんを斬り殺しても笑顔でいる異常者って認識が消えない。
チヤホヤしたいのだろう、顔ばかり異常に整った取り巻きを私の側に置きたがる、まるで監視するように、だ。お仕事で貴方の側に居ます、って感じがして気分が悪いよ。
こいつらは、ただ私を甘やかすだけ。王子の異常性がなければ、イケメンにチヤホヤされて、さぞやキャッキャウフフと過ごしたかもね。〇〇は斬り殺す、それがこちらの世界では常識なのかもしれないが、私には異常なんだよ。
そんな中、初めてまとも(人間的に)な男性に引き合わされた。スラックスにシャツ、背広の上着代わりにマントを着た格好をしている。イケメンなのに、コスプレしてるようで残念かな。ただ、その表情も言葉も、私の世界の常識に近いものを感じる。
「早速だがマーリン、聖女様の鑑定を頼む」
「まず、状況は説明されたのですか?」
「いや、技能を確認しておかないと、今後の方針も立たないからな」
そんなやり取りをする王子とマーリンさん。最後に、私に向き合って挨拶を述べる。
「改めまして聖女様、マーリンと申します。
今から行うのは、貴方の才能を調べる魔法です。
鑑定と言います、自分でも認知していない才能が分かるとでもお思いください」
分かったような分からないような。従うしかないんでしょ? と、思わず口に出してしまった。
「申し訳ありません。
しかし、確認しておかないと、どこまで行軍できるか決まりませんから」
「行軍?」
「ええ、聖女様の役割です。
この世界では、人では滅ぼせない存在があるのです。
貴方はそれができる可能性がある、そのような才能に我々はお越し願ったのです」
「召喚ってやつ?」
「そうです。
実際に我々が行ったのは儀式のみで、女神様が遣わすと言われています」
「役割が終われば帰れるの?」
「はっきり言うと分かりません。
以前の聖女召喚を経験した世代はもういません。
ただ、留まったとか、元の世界に帰還したとか、数多の記録にはどちらの場合も存在しますね。
いえ、召喚は何度もあったのです。それぞれの聖女が別の選択をしたものだと思います」
今までも拉致られた人がいるのか。確かに、戻って留年確定、受験大失敗の状況なら留まる選択肢も出てくるな…… マジで最悪だよ。
「鑑定は、貴方に抵抗する意思がなければ成功します」
頷いてみせると、マーリンさんは目を瞑ってゴニョゴニョと呟いてからこちらを見る。そして、手帳に何かを書き始めた。
アカネ ヤマダ
才能:火属性、水属性、風属性、土属性
技能:女神ラダの加護、光属性広域化、ニジニ言語
「女神様は3つの技能を聖女に与えると聞いていましたが……」
感嘆のためか、周囲からほぉ…… と声が漏れる。
凄いのかどうなのかは、良く判らない。
この属性とやらは「魔法の属性」なのだろうか? 火やら水の魔法が使えると? これは分かる。でも、女神の加護はまったく見に覚えがないよ、よくあるのは異世界に呼ばれる前に面接みたく女神に会うとかだよね。でも誰にも会ってないし。
ニジニ言語は、この世界の言葉なのだろう。どう見ても周りに日本語が通じるような見てくれの人は居ない、この世界の住人と話すために与えられたのだろう。私には外国語を話している意識はないし、周りも日本語を話しているような認識しかない。
最後が問題、「光属性広域化」とはなんだろう。光属性の才能は無いが、広域化の才能はあると?
「どういう事だ? マーリン」
王子が同じ疑問を口にする。
「考えられるのは、直接に聖女の役割をアカネ殿が与えられたのではない、
という事でしょうか。
私は見ていないのですが、召喚では二人の女性が現れたとか。
光属性の才能を持つ方と、それを補助する才能を持つアカネ殿の二人が
聖女の役割を果たす。
そんな可能性がありますね」
マーリンさんが、かなり無理矢理に私をフォローしているのが解かる。私が考える最悪のパターンは、本来は橘さんが与えられる技能を、すべて私が貰っているって奴だ。わざわざ二人に分ける必要なんてないから。
「それでは光属性を持つ者を探さないとな」
王子がしれっと言ってのける。二人居たことには触れない。
不穏な空気になってきた。
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