美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

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続編

兄妹

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 時間が一気に進みました。エル君、ソフィーちゃん十歳です!!

~~~~~~~


「おはようございます、ソフィーおねえさま……」

「おはよう、フィオナ。どうしたの?」

 皇城に遊びに来ていたある日、今日もフィオナと遊ぼうと思ってフィオナのお部屋に行くと、私を迎え入れてくれたフィオナは悲しそうな顔をしていた。

「おねえさまたちがあしたにはかえってしまうとおもうと……」

「あぁ……私も寂しいわ」

「わたしもです……」

 しょんぼりしているフィオナに胸が痛む。
 初めてフィオナに会ってから五年……あの時お父様やシリウスお兄様が言っていたように、フィオナとは本当の姉妹みたいに仲良くなることができたわ。

 ただ……会えるのは一年に数回で、それも一週間程度。もっと一緒に過ごしたいけれど、私は公爵令嬢でフィオナは第一皇女。立場上難しいわね……

「──今日は悔いが残らないように思いっきり遊びましょう!」

「はい!」

 まずは何をしようかしら?

「う~ん、まずはエルを迎えに行きましょう? そろそろ剣の鍛練が終わる頃だと思うの」

「まぁ、たんれんをしているエルおにいさま! みたいです!」

「ふふっ、じゃあ行きましょう」



* * *



「わぁ! かっこいい!」

「本当ね、いつものエルと全然違う」

 私達が鍛練場に着いた時、エルは剣を受ける練習をしていたの。
 年齢も体格も上の大人を相手にするなんてすごい……
 もちろん、相手も加減をしてくれているのかもしれないけれど、簡単なことではないはずよね?

「エルおにいさますごいですね」

「フィオナはエルが剣を振っている姿を見るのは初めてだったかしら?」

「はい」

「初めてだとびっくりするわよね」

「……少し」 

 剣を握ったエルは普段とは全然違う顔をするの。
 目付きがキリッとして、神経が研ぎ澄まされたというか、張り詰めた空気感というか……纏う空気や気配から全然違うの。

 普段のエルはとても優しくて、双子なのに私よりも博識で頭がいいの。……私だって普通以上にはできているのよ? エルがおかしいだけで。
 ……話が逸れたけれど、ともかく普段は柔らかい空気なの。私だけじゃなくて、家族や屋敷の使用人に対しても基本はそうみたい。

「かっこいい……」

 あら、フィオナちゃんはエルに恋をしているのかしら?
 う~ん……まぁエルなら信頼できるし頼りになるから大丈夫だと思うけれど……
 
 なんて考えていたらエルとその対戦相手が礼をしていた。

「終わったみたいね」

「──ソフィー! フィオナ!」

「お疲れ様エル、気が付いていたの?」

「ははっ、二人に気が付かなかったら兄失格だよ」

 そう言って肩をすくめながら笑うエルはいつものエル。さっきまでの鋭さは少しも感じられない。気のせいだったのかしら?って思える程よ。

「エルおにいさま、とってもかっこよかったです!」

「ありがとう。フィオナは今日も可愛いね。もちろんソフィーも」

「まったく、またそんな事を言って………ありがとう」

「ははっ。二人は迎えに来てくれの?」

「そうよ」

 私の隣にいるフィオナも元気よく「はい!」と言っている。

「嬉しいなぁ。あっ、今日はシリウス兄様も学園が休みだから、お祖父様のところに行った後でいらっしゃると思うよ」

「そうなのね!」

 シリウス兄様は十三歳になる今年から学園に通い始めたから、皇城に遊びに来ても会えないということが多かったの。夕方には帰っていらっしゃるから、夕食は一緒に食べられるけど、学園から出されている課題が忙しいみたいで……

「今日は何をするの?」

「そうね……フィオナのお勉強も兼ねて最初は本の読み聞かせをしない? シリウス兄様がいらしたらまた考えましょう」

「いいね。ここには僕たちが知らない話もたくさんあるからね」

「えぇ」

「ごほんよみたいです!」

「じゃあ、書庫に本を選びに行って、それからお部屋に戻りましょう」



* * *



「随分と怖そうな本だけど……これでよかったの?」

 エルが自分の手に持っている本に視線を落としながら、本を選んだフィオナに尋ねる。

「はい! 」

「ふ、フィオナ……その、もっと楽しそうなお話の方がいいんじゃないかしら? その方が文字や文法も覚えられると思うの」
 
「……だめですか?」

「うぅ……」

 フィオナが選んだ本は『墓地に渦巻く怨念の霧』というタイトルで、表紙の絵は霧が立ち込めた墓地の墓石の影からギョロっとした目が覗いていたり、地面から禍々しい腕が伸びていたり……明らかにの絵。

「だめ、ですか?」

「…………………いいえ、この本にしましょう」

 フィオナったら、私がフィオナのおねだりに弱いことをわかっていてわざと上目遣いをしてくるんだから。

 私、虫とかは大丈夫なのだけど、オバケとかのものが苦手なの……うぅ、姉としての尊厳を保てるかしら……私がオバケが苦手なことは誰も知らないはず。絶対にバレないようにしないと。

「ソフィー、怖くなったら途中で目を閉じて耳も塞いでていいからね?」

「な、何を言ってるの? 全然大丈夫よ! フィオナ、早速読みましょう」

「おねがいします!」



* * *



「──こうして、墓地を彷徨っていた怨霊達は光の粒となって消えていったのでした」

 お、終わった……ハッピーエンドではあるけれど、かなり怖かった。三人で本を読むときは、私とエルが交互に本を読んでフィオナがそれを聞くということが多くて、今回もそんな感じだったの。
 ページをめくったら見開きでゴーストの怨念の籠った目が大きく書かれていたり、血みどろなページだったり……私が読んでいる時にそんな絵が出てきたときは声が裏返ってしまったわ。

「おもしろかったですね! ごーすとさんたちのむねんがはらされてよかったです」

「そうだね」

 二人ともすごいわ……あんな話を読んだ後なのに普通にしているなんて……いい話ではあったけれど、とっても怖かったわ。

「ソフィーは大丈夫?」

「え? も、もちろんよ! 興味深い話だったわね……そ、そろそろシリウス兄様がいらっしゃるんじゃない?」

 と言ったところでちょうどノックが聞こえた。


 ───コンコンコン

「シリウスだ。入って大丈夫?」


「シリウス兄様! どうぞお入りください」


「遅くなったね。三人は何をしていたの?」

「エルおにいさまとソフィーおねえさまがごほんをよんでくれました」

「よかったね。それで何の本を──……」

 シリウス兄様はテーブルの上に置かれた本を見てピシッと固まった。……きっと予想外の本だったのね。
 それから、私にチラッと視線を寄越してからフィオナに向き直った。

「……フィオナはこういった類いの本を読むのは初めてだったと思うけど、大丈夫だった?」

「はい! ドキドキしておもしろかったです」

「それならよかったけど……」

 面白かった……私がフィオナくらいの歳だったら泣いていたでしょうに……強いわね。

「さて、四人で何をしようか?」

「かくれんぼがしたいです!」

「あぁ、エリオットとソフィアが帰ってしまったら二人になってしまうもんね……」

「はい……」

 再びシュンとしてしまうフィオナ。

「フィオナ、今生の別れじゃないから悲しまないで」

「そうよ、一緒に遊ぶのは最後ではないのだから悲しそうな顔をしないで」

「しんみりさせてしまったね……二人の言う通りだ。今日は思いっきり楽しもう」

「……うん」

「さぁ、誰が探し役をする?」

「シリウス兄様、僕がやりたいです」

「本当? じゃあ、よろしくねエリオット」

「はい」








  

~~~~~~~~

 読んでくださりありがとうございます(*^^*)
 キリが悪いけど今回はこの辺で_(..)_
 夜野が力尽きました……

 今更ですが、続編はウィル=ウィリアムとして普通に生活している世界観になっております!
 辻褄が合わない部分などありますが、細かいことはつっこまない方向でよろしくお願いしますm(。_。)m


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