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続編
初めてのお茶会⑦(ソフィア視点)
しおりを挟む「ただの石ころだなんて……オリバー様、自分の努力を一番に認めてあげられるのは自分なのですよ?」
オリバー様は悲壮感に満ちた様子だけれど、自分を認められずに苦しんでいたら、どんどん辛くなってしまうと思う。
「…僕に認めてもらえる……自分を認められる部分があるのでしょうか……?」
「それはわかりません。私達は今日会ったばかりなのですから。……ですが、オリバー様自身は自分が積んできた努力や、その時の思い……それらを誰よりも良くわかっているはずでしょう?」
期待のこもった眼差しのオリバー様には申し訳ないけらど、私がオリバー様について何か言ったところで、中味なんて何もない、軽い言葉。
自分を認める言葉というのは、少なからず自分の努力を知っている人が掛けてくれるから意味があると思うの。
「……実になっていない行いも努力と言って良いのでしょうか?」
「もちろんです。 すぐに実になる努力などありません。小さな小さな努力の積み重ねがゆっくりと大きくなっていき、いつかは実を結ぶ……私はそのように考えています」
「僕も小さな積み重ねが大切だと思いますよ」
「積み重ね……」
オリバー様は私達が言ったことを自分の中で噛み砕こうとしているみたい。
……今少し話しただけだけど、オリバー様は素直な方だと思う。良くも悪くも。
素直な方だから、こうして初対面の私達の言葉も真摯に受け止めようとしているし、素直だからこそ周囲からの批判に心を揺さぶられてしまっている。
「オリバー様は“努力”を止められたことはないのでしょう?」
「……はい、勉強にも武術にも毎日取り組んでいます。……習得は遅いですし、全然できないままですけど……」
「まぁ、毎日取り組まれているのですね! それは誇って良いことだと思います。……大きな声では言えませんが、悲しいことに貴族の中には自分が貴族であるからと怠惰になって、日々を何もせず遊んで過ごしている方もいます。オリバー様はそうした方とは比べようもないほど高潔だと思います」
「僕もそのように思います。先程ソフィアが言ったように、すぐに実になる努力などありません。諦めずに努力を続けることができるか……それが一番大切なのでは?」
「ありがとうございます。そう、ですね……“すぐに実になる努力はない”か……はい、形になるまで諦めずに頑張ります」
そう言って、微かに口の端を上げて微笑むオリバー様。
「……もしかして、何かに行き詰まっていらっしゃるのですか?」
「恥ずかしながら……」
「差し支えなければ、お聞きしてもよろしいですか?」
「……はい。最近、政治学を学び始めたのですが、授業についていけていないのです。政治学だけでなく歴史も難しくて……」
……帝国の歴史は小さい頃から習い始めるけど、政治学?
私とエルに勉強を教えてくれている先生は、政治学は普通、学園への入学の前後で習い始めると言っていたけど……。
私とエルも習っているけれど、深い部分については経済学や法学への理解を深める必要があるからと、全ては修められていない。今はそういった科目と並行して授業が進められている、
「……オリバー様、政治学は学園入学の前後で学び始めるというのが一般ですが、その事はご存知ですか?」
「そうなのですか? ……兄上は9歳の頃から学び始めて、学園入学前には完全に修めていたと聞いていたので……。でも、お二人もすでに学ばれているのでしょう?」
「一応は……ですが、私も兄もまだ基礎だけしか学べておりません」
「オリバー様、確認なのですが、歴史は今何を学ばれているのでしょう?」
エルが歴史についてもどこで躓いてしまっているのか確認する。……私も確認した方がいいと思う。きっと、一般的な認識とオリバー様の中での認識とで、各学問の各過程修得年齢の認識にズレがある。
「今はアスラート帝国の属国の国々の歴史です」
やっぱり……帝国の歴史はもう修めていたのね。
「オリバー様、他国の歴史も政治学と同様で、一般的にはもう少し上の年代の方々が取り組まれる内容ですよ? 私と兄もまだ歴史はアスラート帝国のものしか習っていません」
「えっ?」
「国が違えば文化も違います。同じ出来事に対する解釈や内容も……」
「はい、帝国史で勉強したことと違っている部分があって混乱してしまっていて……」
「混乱して難しく感じてしまうのは当たり前のことです」
おそらく、オリバー様のお兄さんは今の私達の年齢の頃には周辺国の歴史についても修めていたのだと思う。
どうしてオリバー様のお父様やお母様、家庭教師の方々が一般的な学習進度を伝えていなかったのかが問題ね。一般的な進度を知っていれば、オリバー様もお兄さんと比べてしまうということはあっても、今程思い悩むことはなかったでしょうに……
……オリバー様はお兄さんを見て育ったから、周囲の大人からの言葉を単なる慰めとして捉えられてしまったのかしら?それとも、意図的に伝えなかったのか……
でも、確かに言えることがある。
「オリバー様は決して落ちこぼれではありませんよ」
「そう、でしょうか……」
「ははっ、オリバー様が落ちこぼれなのだとしたら、僕と妹も落ちこぼれになってしまいます」
「そ、そんなことは……!」
「だから、自信をもってください」
「ふふっ、だからといって慢心してはいけませんよ?」
「──」
冗談っぽくそう言うと、オリバー様はポカンとした後で手の指を組み、片膝をついて祈りの姿勢をとった。
「「?」」
「カトル公爵家の方々が神様のように見えてきました……公爵様はあの一件以来女神だとしか思えませんし……」
「私達はオリバー様となんら変わりのない人間ですよ?」
「僕も崇められるよりも友人として仲良くしてもらえた方が嬉しいです」
「……そのように言っていただけて嬉しいです」
「あっ、それと、私達はもちろんなのですけど、私達のお母様を崇めるというのも止めた方がいいかと思います。……先程も感じられたと思いますけど、私達のお父様はお母様のことになると、狭量になってしまいますので」
オリバー様は私の言葉にキョトンとした顔をしてしまっている。……エルは苦笑しているわね。お父様はとにかくお母様が大好きなの。かといって、お母様が絡むと浅慮になってしまうというわけではないけれど……ただ、心が狭くなってしまうの。特に自分以外の男性に対してはね?
……お母様も困ったような顔をしつつも嬉しそうだし……本当に仲が良い夫婦だと思う。
私も素敵な方と結婚して、そんなこと夫婦になりたいわ。
~~~~~~~~
『初めてのお茶会』編は以上となります!
ここまでこのお話しを読んでくださった皆様、ありがとうございます(*^^*)
この後はしばらくお時間をいただきまして、続編(エリオットとソフィアの学園編)を投稿する準備をさせていただき、準備が整いましたら、こちらでも宣伝させていただこうかと思いますm(。_。)m
本編終了後もお付き合いくださいましたこと、重ねてお礼申し上げます_(..)_
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