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第一章 ここから私達の全てが始まったんですよね先輩!
もう先輩の全部が大好きっ!
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琥珀と麗紗が昼休みに連絡先を交換したその日の夜。
「あはっ……あははっ……ひっ……あひゃはははははははは!!!」
鈍市の市街地から離れた所にひっそりと存在する大きな屋敷の。
熊のヌイグルミなどのファンシーグッズに埋め尽くされた一室の中で、狂ったように笑う一人の美少女が居た。
そう……桜月麗紗である……。
「ふふ、大成功ね。これで先輩とデートに行ける……やっぱり私達って絶対に結ばれる運命だったのね! きゃははははははははは!!!」
実は昼の琥珀とのやり取りは麗紗の手によって大掛かりな準備がなされていた。
琥珀と会ったあの日に麗紗は持ち前の伝手を生かして情報屋に行き、その情報屋を営む霊視の特色者を大金で従わせ、琥珀の趣味や性格等を暴いた。
生年月日や氏名から好きな作品に交友関係、果ては琥珀の推しまで。そして琥珀が食い付いてきそうな映画のチケットを二人分、しかも複数用意したのだ。
もちろん友人から貰ったというのは嘘である。
「来なさい」
「畏まりました」
「分かったわ」
「おうよ~」
麗紗が部屋の電話を取りただ一言呟くと、刹那、三人の人影が麗紗の部屋に現れる。
「計画は成功したわ……お客様を迎える準備をして頂戴。今週の土曜日までにね」
「承知しました。用意をしておきます」
「は~い」
「おう、分かったぜ」
人影……もとい麗紗の家の使用人達それぞれの返事を聞いた麗紗は、少し間を置いてから言った。
「何かあの方に無礼があったら……あなた達の首じゃ済まさないわよ」
「「「心得ております」」」
麗紗のその言葉に、彼等は途端に足並みを揃えて応える。使用人の内二人の今さっきまでの軽さは一切無い。ただただ忠実で機械的な返事をする。
「以上よ。戻っていいわ」
「「「はっ」」」
一瞬で麗紗の部屋から去る使用人達。
麗紗は彼等が去っていった方向から視線を外し、おもむろにベッドに飛び込んだ。
そして琥珀を思い浮かべて手足を激しくバタバタとさせた。
(ああ土曜日が凄く楽しみだなあ……いや楽しみなんてモノじゃないわ……先輩だぁい好き……うふふふふふ……
あの宝石みたいな黄色くて綺麗な目が大好きさらっさらな金色の髪が大好き小さくてかわいいお口が大好きかっこよくてかわいい顔が大好き背が高いのが大好きおっ……おっぱいもちょうどいい大きさで大好き私を助けてくれた時みたいに誰にでも優しい所が大好き男らしくてクールだけどちょっと抜けた所が大好き心の中に熱いものを秘めてるところも大好き強くて素敵な八重染琥珀も大好きオタクな所も大好き時々ぼーっとするところも大好き女の人なのに男の人らしい動作をするところも大好き喋り方も優しくて大好き声も綺麗で大好きでもたまにお淑やかになるところも大好きもう先輩の全部が大好きっ!
ああ……早くはやく話したい、愛したい、愛されたい、抱きしめたい、抱きしめられたい、撫でたい、撫でられたい、ほめたい、ほめられたい、料理作ってあげたい、キスもしてみたい、一緒にお泊りしたい、一緒に暮らしたい――永遠に側に居たい)
「あの人は私のモノ。神さまが引き合わせてくれた最高の恋人。私気付いちゃった。これが、本当の恋ってモノなのよね。誰にも邪魔出来ないし邪魔する人も居ないの。だって私とあの人は絶対に解けない運命の赤い糸で結ばれているから。ふふふ……先輩、大好き。先輩を構成する元素の一つ一つまで愛しているわ。あの人も私と同じように思ってるに決まってる。こんな私に優しくしてくれたんだし。私今人生で一番幸せっ! これが永遠に続くなんて恋って本当に素敵だわ!
あはははははははははははははははははははははははっ!!!」
麗紗はそう言ってまた笑い狂った。
琥珀は思ってもみないだろう。彼女にここまで異常な愛を抱かれているという事に。
「はあ……お嬢様を止めるにはどうしたら良いのでしょう……」
「もう無理よ~。私達じゃどうする事も出来ないわね」
「ああ……もう子供の時から既に二十歳ん時の俺よりも強かったしな……」
廊下で使用人達三人は呆れてそうため息をつく。この屋敷において麗紗の言葉、命令は絶対である。
使用人達は決して彼女に逆らう事は出来ない。逆らおうものなら何をされるか分からない。
何故なら麗紗は“最強”だから。
「はあ……ガキに逆らえない大人……何て俺は情けないんだ……」
「でも普段は優しいからいいじゃない。対等に話してくれるし。私は麗紗ちゃん大好きよ」
「そうですね……いつも敬語を使う私に敬語なんて使わなくても良いとおっしゃってくれます。本当はお嬢様もお優しいのですよ耕一郎さん」
「うるせえ! その名前で俺を呼ぶなポンコツ弟子! 年下相手にタメ口叩かれる時点でもう駄目なんだよボケ! ああ~もう嫌だ。これだからガキの癖にレベル10の特殊型特色者のお嬢様は嫌なんだ!」
「耕一郎もレベル10じゃない。何言ってるのよ」
「おいポンコツ弟子その2! 俺を呼び捨てにすんな! ったく、俺の能力が農耕型じゃ無けりゃ勝てたかもしんねーのによ……ま、んな面倒くせーことやんねーけどな」
「結局何もしないじゃないですか……」
そう、麗紗はレベル10の特殊型特色者。
特殊型の能力は、能力が強力な場合が多い。麗紗もまたその例に漏れない。
“豪傑熊”のあの男や漢野が何人集まろうとも彼女の前では羽虫同然。
同じレベル10特色者の耕一郎も、麗紗とは格が違う。これは彼が戦闘向きではない農耕型特色者であるのも大きいが。
それ故に使用人達は何があろうと立場的にも力量的にも麗紗に逆らえない。自らの主人が非人道的行為をしていても、黙って見ている事しか出来ない。
「何とか目を覚ましてくれないもんかね……」
「そう言えば麗紗ちゃんの好きな人って私達と同じ特色者らしいわよ?」
「ほ~お? なるほど……もしかしたら役に立ってくれるかもしれねえなあ……」
「うーん、なんていう他力本願……僕は弟子として恥ずかしいです」
「うっせえ! いいんだよ、人間ってのは協力し合う生き物だしな!」
「苦しい言い訳ね耕一郎ちゃん」
「お前は師匠をちゃん付けするなあ! あーもう! こいつ等一回ぶちのめしてぇ……!」
しかし変人な彼等には今ひとつ危機感が無かった。
「あはっ……あははっ……ひっ……あひゃはははははははは!!!」
鈍市の市街地から離れた所にひっそりと存在する大きな屋敷の。
熊のヌイグルミなどのファンシーグッズに埋め尽くされた一室の中で、狂ったように笑う一人の美少女が居た。
そう……桜月麗紗である……。
「ふふ、大成功ね。これで先輩とデートに行ける……やっぱり私達って絶対に結ばれる運命だったのね! きゃははははははははは!!!」
実は昼の琥珀とのやり取りは麗紗の手によって大掛かりな準備がなされていた。
琥珀と会ったあの日に麗紗は持ち前の伝手を生かして情報屋に行き、その情報屋を営む霊視の特色者を大金で従わせ、琥珀の趣味や性格等を暴いた。
生年月日や氏名から好きな作品に交友関係、果ては琥珀の推しまで。そして琥珀が食い付いてきそうな映画のチケットを二人分、しかも複数用意したのだ。
もちろん友人から貰ったというのは嘘である。
「来なさい」
「畏まりました」
「分かったわ」
「おうよ~」
麗紗が部屋の電話を取りただ一言呟くと、刹那、三人の人影が麗紗の部屋に現れる。
「計画は成功したわ……お客様を迎える準備をして頂戴。今週の土曜日までにね」
「承知しました。用意をしておきます」
「は~い」
「おう、分かったぜ」
人影……もとい麗紗の家の使用人達それぞれの返事を聞いた麗紗は、少し間を置いてから言った。
「何かあの方に無礼があったら……あなた達の首じゃ済まさないわよ」
「「「心得ております」」」
麗紗のその言葉に、彼等は途端に足並みを揃えて応える。使用人の内二人の今さっきまでの軽さは一切無い。ただただ忠実で機械的な返事をする。
「以上よ。戻っていいわ」
「「「はっ」」」
一瞬で麗紗の部屋から去る使用人達。
麗紗は彼等が去っていった方向から視線を外し、おもむろにベッドに飛び込んだ。
そして琥珀を思い浮かべて手足を激しくバタバタとさせた。
(ああ土曜日が凄く楽しみだなあ……いや楽しみなんてモノじゃないわ……先輩だぁい好き……うふふふふふ……
あの宝石みたいな黄色くて綺麗な目が大好きさらっさらな金色の髪が大好き小さくてかわいいお口が大好きかっこよくてかわいい顔が大好き背が高いのが大好きおっ……おっぱいもちょうどいい大きさで大好き私を助けてくれた時みたいに誰にでも優しい所が大好き男らしくてクールだけどちょっと抜けた所が大好き心の中に熱いものを秘めてるところも大好き強くて素敵な八重染琥珀も大好きオタクな所も大好き時々ぼーっとするところも大好き女の人なのに男の人らしい動作をするところも大好き喋り方も優しくて大好き声も綺麗で大好きでもたまにお淑やかになるところも大好きもう先輩の全部が大好きっ!
ああ……早くはやく話したい、愛したい、愛されたい、抱きしめたい、抱きしめられたい、撫でたい、撫でられたい、ほめたい、ほめられたい、料理作ってあげたい、キスもしてみたい、一緒にお泊りしたい、一緒に暮らしたい――永遠に側に居たい)
「あの人は私のモノ。神さまが引き合わせてくれた最高の恋人。私気付いちゃった。これが、本当の恋ってモノなのよね。誰にも邪魔出来ないし邪魔する人も居ないの。だって私とあの人は絶対に解けない運命の赤い糸で結ばれているから。ふふふ……先輩、大好き。先輩を構成する元素の一つ一つまで愛しているわ。あの人も私と同じように思ってるに決まってる。こんな私に優しくしてくれたんだし。私今人生で一番幸せっ! これが永遠に続くなんて恋って本当に素敵だわ!
あはははははははははははははははははははははははっ!!!」
麗紗はそう言ってまた笑い狂った。
琥珀は思ってもみないだろう。彼女にここまで異常な愛を抱かれているという事に。
「はあ……お嬢様を止めるにはどうしたら良いのでしょう……」
「もう無理よ~。私達じゃどうする事も出来ないわね」
「ああ……もう子供の時から既に二十歳ん時の俺よりも強かったしな……」
廊下で使用人達三人は呆れてそうため息をつく。この屋敷において麗紗の言葉、命令は絶対である。
使用人達は決して彼女に逆らう事は出来ない。逆らおうものなら何をされるか分からない。
何故なら麗紗は“最強”だから。
「はあ……ガキに逆らえない大人……何て俺は情けないんだ……」
「でも普段は優しいからいいじゃない。対等に話してくれるし。私は麗紗ちゃん大好きよ」
「そうですね……いつも敬語を使う私に敬語なんて使わなくても良いとおっしゃってくれます。本当はお嬢様もお優しいのですよ耕一郎さん」
「うるせえ! その名前で俺を呼ぶなポンコツ弟子! 年下相手にタメ口叩かれる時点でもう駄目なんだよボケ! ああ~もう嫌だ。これだからガキの癖にレベル10の特殊型特色者のお嬢様は嫌なんだ!」
「耕一郎もレベル10じゃない。何言ってるのよ」
「おいポンコツ弟子その2! 俺を呼び捨てにすんな! ったく、俺の能力が農耕型じゃ無けりゃ勝てたかもしんねーのによ……ま、んな面倒くせーことやんねーけどな」
「結局何もしないじゃないですか……」
そう、麗紗はレベル10の特殊型特色者。
特殊型の能力は、能力が強力な場合が多い。麗紗もまたその例に漏れない。
“豪傑熊”のあの男や漢野が何人集まろうとも彼女の前では羽虫同然。
同じレベル10特色者の耕一郎も、麗紗とは格が違う。これは彼が戦闘向きではない農耕型特色者であるのも大きいが。
それ故に使用人達は何があろうと立場的にも力量的にも麗紗に逆らえない。自らの主人が非人道的行為をしていても、黙って見ている事しか出来ない。
「何とか目を覚ましてくれないもんかね……」
「そう言えば麗紗ちゃんの好きな人って私達と同じ特色者らしいわよ?」
「ほ~お? なるほど……もしかしたら役に立ってくれるかもしれねえなあ……」
「うーん、なんていう他力本願……僕は弟子として恥ずかしいです」
「うっせえ! いいんだよ、人間ってのは協力し合う生き物だしな!」
「苦しい言い訳ね耕一郎ちゃん」
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しかし変人な彼等には今ひとつ危機感が無かった。
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