麗紗ちゃんは最狂メンヘラ

吉野かぼす

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第二章 もう絶対に離しませんからね、先輩!

刺客

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 はあ……今日もか……。
 今日もあの子の家に行かないといけないのか……。

 学校が終わり麗紗の屋敷へと向かいながら私はため息をついた。
 何も毎日行かなくてもいいでしょ!?  私にも私の時間ってものがあるんだよ! 

 これじゃ監禁されてた時と大して変わってないじゃん! 

 そろそろちゃんと言わないと駄目だな……。
 ていうかまたかよって感じだけど。

 RAINだとヘラって終わりだし……。
 そう決意を固めていた時だった。

「がはあああああああああああっ!」
「!? 今の声は……!」

 聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきたのは。
 急いでその悲鳴がした方向に走ると、そこには住宅街だというのに暴れている二人の特色者と地面に転がされている凍牙の姿があった。

 私は凍牙の下に慌てて駆け寄った。

「凍牙っ!? ちょっとあんた大丈夫!?」
「ぐっ……こ、琥珀さん!? これは私の問題ですからあなたは下がっていてください……!」
「で、でもあんた……!」

「ねえキミだれ? 私達の仕事のジャマしないでよ~」
「邪魔すんならぶっ飛ばすぞ」

 特色者二人が私にそう言ってくる。
 キミだれ? と聞いてきた方は水色の髪をショートヘアーにした童顔の可愛い女の子。見た目童顔だから歳は分からない。

 もう一人のぶっきらぼうな方は赤い髪をポニーテールにしたサバサバした印象の美人。歳は20代後半くらい? 

 なんか対照的な二人だ。凍牙とはどういう関係なんだろう。
 元カノとかで痴情の縺れとかだったら即見捨てて帰る所だけど水色の子が今仕事って言ったな。

 ただの特色者じゃなさそうだ。

「私はこの人の知り合いだよ。あんたら何なの? 何いい大人が二人がかりでリンチしてんの? 警察呼ぶよ?」

「はあ……これだから子供は……これは仕事って言ってるの! いいからさっさとそこをどきなさい。あなたが首を突っ込む問題じゃないの! もちろん警察もね」
「呼んだら飛ばすぞ」

「……琥珀さん……あの人達の言う通りここは私に任せて屋敷に行ってください……! さっきも言いましたがこれは私の問題なんです……警察も役に立たない……! それにあなたを巻き込む訳はっ……!」

「凍牙……」

 息を切らしながら私の前に立つ凍牙。
 ここは引くべきなのか? 
 でも……。

「ねえ凍牙、私を巻き込まなければいいんでしょ?」
「はっ……? な、何を……!」

「これは私が勝手にやる事だから、安心して。私はあの水色の方と戦うから凍牙は赤い方をよろしく。あいつ私を子供扱いしたし……!」

「ちょ、ちょっと!」
「いいから! ほら行くよ! たまには美味しいおやつの借りを返したっていいでしょ!」

 二対一ってのは気に食わない! 
 おまけに凍牙にはたっぷり美味しいおやつを貰っている。

 ここで逃げたら駄目だ! 
 私は凍牙にそう言って水色の髪の女に殴り掛かった! 

「ふんっ、正しい判断が出来ないあたりやっぱ子供ね」
「そういうアンタらは大人気無いよ!」

 八重染琥珀で加速した拳をそいつに振るう。めんどくさいからこいつは童顔でいいや。
 凍牙にも通用したそのパンチは――。
 童顔に当たる事なく空振った。

「なっ!?」
「子供にしては中々やるじゃない。でもまだまだねっ」

 童顔は空中に高く飛び上がって上から目線で私に言ってくる。
 能力か!? 今一体何をしたんだ!? 

「次は私の番ね。先手は譲ってあげたんだから感謝しなさい!」
 童顔は地面に降り立ったかと思えば突然私の目の前に現れて膝蹴りをしてきた。

「がっ!」
「ふふっ、決まったわね!」

 あまりのスピードに私は対応できず膝をモロに食らってしまった。
 なんて大人気ない……でもスピードは間違いなく凍牙以上……! 

 でも……それがどうした。
「これでも食らえ!」
「何よ? いきなり……ってうわっ!?」

 私は童顔に八重染琥珀で閃光を浴びせてやった。
 完全にそれを食らい悶える童顔。

 そして私はあの言葉を撤回する。逃げたら駄目だって言葉を。
 私は凍牙にこう呼び掛ける。

「凍牙! 逃げるよっ!」
「な、なるほど……! はいっ!」

「逃がさんぞ」
「ほい」
「ぬあっ!?」

 赤い髪の女にも閃光を食らわせる。
 別にこいつらを今倒さなくても義理には反しない! 凍牙を助けられればいいんだ! 
 私は凍牙の手を引いて一目散に逃げ出した。



 麗紗の屋敷の近くまで逃げた私達はそこで走るのを止めた。

「はあっ……はあっ……ここまで来れば大丈夫でしょ……ねえ凍牙、一体何があったんだよ……!」
「ぜえっ……ぜえっ……それは……」

「あっ、やっぱ一旦休んでからでいいや……」
「わ、分かりました……」

 凍牙は私に言われた通り息を整えてからぽつりと事のあらましを語り始めた。

「昨日……突然桜月財閥の支社の社長である私の父親から……突然手紙が届いたんです。桜月麗紗の使用人から父親の会社の社員に移動しろと……」

「えっ……あなたの親が……財閥の支社の社長……じゃあ何であそこの使用人になったの?」
「私が特色者だったからです……お嬢様を制御する為のせめてもの防波堤として、桜月財閥の社長への出世の賄賂として父が私を送ったんです……」

「それなら凍牙の父親はあなたを物扱いしてるって事じゃない……! なんて酷い……」

「そこまでなら私も良かったんです。何せそのお蔭でお嬢様と出会いお嬢様の下で働く事が出来たのですから……でもこの命令は理不尽にも程がある! そもそも私はお嬢様の使用人であって厳密には桜月財閥の社員ではないのに……! 散々放置した挙句今更手紙を寄越してきたかと思えば……っ!」
「………」

 ちょっと話を聞いただけでも相当なクズだな。
 実際は違っていたとはいえ怪物と評された人間の所に自分の出世の為だけに自分の息子を送るとは……。

 絶句している私に凍牙は更にこう続けた。

「もちろん私は断りました。この話は無かった事にしてくれと。そうしたらあの二人の刺客を送り込んできたんです……! 私を暴力で従えようと……昨日の今日で!」

「……それであいつ等は仕事って言ってたのか……ていうか何でこんな突然凍牙を社員にしようって話が出たんだろう。目的がいまいち分からないんだけど……」

「僕も知りませんよそんな事! ……っ! すみません……」
「いやいやいいよ……」

 珍しく荒れている凍牙。
 多分自分の事だからと麗紗とかにも相談しなかったんだろう。

 私としては何とかしてやりたい気持ちはある。こいつの料理は美味しいし。
 でもどうしたら……。

「あっ! そうだ!」
「ど、どうかしました?」

「腕利きの情報屋が居るんだけど、良かったら紹介しよっか? その親の弱味とか握れるかもよ?」
「え?」
 私が凍牙にそう提案すると、凍牙はそんな不思議な声を出した。






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