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第二章 もう絶対に離しませんからね、先輩!
殴り込み
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桜月財閥の支社は、何故か鈍市内にある。
鈍市自体はそんなに大きい都市ではないので、何で支社が配置されたのかは謎に包まれている。しかも複数配置されてるし。
何か意味があるのかな……。
まあそんな事よりもとにかく早く行かないと……!
そんな風に全力疾走している時だった。
突然私の前に、茶髪の男が立ちはだかった。
「うわっ! 危な! すみませんでした……ってあんたは!」
「よう、久し振りだな!」
一瞬分からなかったけど私はそいつの顔にうっすらと見覚えがあった。
厨二病こと漢野力也だ。
色々ありすぎて完全に忘れてた。
「確かに久し振りだけど今はあんたに構ってる暇は無いの! じゃ!」
「おい待てよ~つれねえ事言うなよ。ちょっとくらい俺の喧嘩に付き合え!」
鬱陶しい事に漢野はダッシュで逃げる私を追い掛けてきた。
くそっ……邪魔すんな!
「これでも食らえ!」
「おおっ! やる気になったん――のわっ!」
八重染琥珀で閃光を放ち漢野の目を眩ませる。
こうでもしないとこいつは延々と私を追い掛けてくるだろう。
なんて迷惑なストーカーなんだ……。
そうげんなりしつつもまた支社へと走ろうとすると……。
「へへっ、目が使えなくても気配で分かるぜ!」
「あんた生まれた世界間違ってるよ!」
目潰しをくれてやったのに依然私を追い掛けてくる漢野。
コイツ……世紀末とか戦国時代とかあの辺に生まれればよかったのに!
そうすれば凄い活躍を見せてくれただろうに……。
「オラオラ行くぜぇ!?」
漢野が走りながら鋭いパンチを私に繰り出してきた。
私は八重染琥珀で足を加速させて逃げる。
漢野の拳は一つも私の身体に当たらず空を切った。
「おお!? 随分スピードが上がったじゃねえか! お前一体どんな風に鍛えたんだ!?」
「別に鍛えてない。でも私は……大切な人が力を貸してくれているの。だから強いんだよ!」
私は漢野にそう言い放って八重染琥珀を体全体に行き渡らせる。体が琥珀色に染まり光り輝く。
そして拳をしっかりと握りしめて漢野にラッシュをお見舞いした。
「どらああああああああっ!」
「ぐはあっ!」
突きの一つ一つに八重染琥珀が掛かり、凄まじい威力と速さを生み出す。
漢野は私のラッシュに吹き飛ばされ民家の塀にめり込んだ。
よし、これでコイツがもう追い掛けてくる事は流石に無いだろう。
私はそう考えまた急いで支社へと走り出す。
この時も八重染琥珀を使えたらいいんだけど、もしうっかりその辺の一般人にぶつかったら大惨事になるし……。
能力を使っていいのは基本的に特色者に襲われた時だけだ。
まあ八重染琥珀を照明替わりにする程度の事だったら大丈夫……。
「おい、まだ終わってねえぞ!」
「なっ!?」
などと考えているといきなり背後から再び漢野が現れた。
こいつ……! さっき完全に倒した筈なのに……!
塀にめり込んでたじゃん!
「あれ位じゃ俺は倒れねえ! お前は誰かと一緒に戦ってるらしいが俺にだって可愛い舎弟が居るんだよ! そこは俺も負けてねえ!」
「うるさい! 厨二病の癖にちょっといい事言ってんじゃないよ!」
本当にしぶといなこの人。
一周回ってかっこよく見えてくる。
そんな漢野が珍しくまともな質問をしてきた。
「なあ……お前何で急いでるんだ? もしかしてお前の仲間が敵に攫われでもしたのか?」
「……そうだよ。だから今はあなたの相手をしてる場合じゃないって言ってるの。悪いけど今度にして」
「なるほど……分かった」
「!?」
あの喧嘩バカの漢野が頷いた!?
明日は槍を通り越して隕石でも降って来るんじゃないだろうな……。
麗紗があっさり止めそうだけど。
「お前そこに殴り込みに行くんだろ? なら俺も一緒に行くぜ! お前のお蔭で今の俺はベストコンディションだ! いくらでも暴れまくってやるぜ!」
良かった。いつも通りだった。明日は快晴だな。
いや言ってる場合じゃない。
「あのね! 私の仲間は大変だけど殴り込みに行く訳じゃないんだよ! あなたが来ると話が余計ややこしくなるからやめて!」
「あ? 殴り込みじゃ無かったら一体何しに行くんだよ……」
「ああ~もう!」
分かってねえなコイツ……!
……でも待てよ。
識英天衣はあの二人の特色者を凍牙の下に送り込んできている。
つまり武力行使で事を済ませようとしている訳だ。
なら、こっちも拳で抵抗しても立派な正当防衛では?
頭の中でその結論が出た私は足を止めて漢野に言った。
「……漢野、ごめん私の勘違いだった。私が今から行くのは間違いなく殴り込みだよ。あんたも良かったら一緒に来る?」
「あたぼうよ! ほらな俺の言った通りだった! よっしゃ暴れ尽くしてやるぜ!」
「うん、頼んだよ。それじゃあ急ぐよ!」
「おう! かっ飛ばそうぜ!」
そうして何故か漢野が同行する事になった。
正直暑苦しいけどこれで少しでも識英天衣から凍牙を逃がせる確率が増えるのならいい判断だと自分でも思う。
「てか俺達どこに殴り込みに行くんだ?」
「桜月財閥の支社。識英天衣って奴が経営してるとこね」
「よし、間違えないようにするぜ! この前間違えて別んとこ壊しちまって大変だったからな!」
「…………」
やっぱり判断を誤ったかもしれない。
でも時既に遅し。
まあ役に立ってくれると信じよう。
私はそう思う事にした。
*
*
*
時は少し遡る。
「琥珀先輩が慌てて家を出た……? やっぱり凍牙の事を何か知って……」
麗紗は自分の部屋で携帯で琥珀の行動を見ていた。
「盗聴器とカメラ……リビングにも仕掛けておくべきだったな……何かお義父様と先輩話してたみたいだし……」
麗紗は携帯の画面に映し出されている誰も居ない琥珀の部屋を見ながらそう呟いた。
何故麗紗は琥珀本人が部屋に居るのにも関わらず監視カメラと盗聴器を仕掛ける事が出来たのか?
その疑問は全て恋色紗織で解決出来る。
まず、恋色紗織の出す糸はピサの斜塔並の太さから原子レベルの細さまで伸縮自在だ。
つまり家の窓や玄関のほんの少し空いた隙間からでも恋色紗織の糸を入り込ませる事は可能。
そうして麗紗は実際に琥珀の家の前まで行き、恋色紗織を窓から侵入させたのだ。
後は侵入に成功した恋色紗織で琥珀の視野や聴覚を制限して気付かれないようにしてから窓の鍵を内側から開け、最後にじっくりと盗聴器と監視カメラの位置や角度を吟味すれば……。
完全に気付かれる事なく琥珀を見守れるという訳だ。
麗紗は琥珀の慌てぶりを思い出し、決意する。
「凍牙が先輩に何かしたの……? いやあの感じは……心配しているという風だったような……どちらにせよ、私も行かないと……」
そうして彼女もまた、支社に集結する事となった。
鈍市自体はそんなに大きい都市ではないので、何で支社が配置されたのかは謎に包まれている。しかも複数配置されてるし。
何か意味があるのかな……。
まあそんな事よりもとにかく早く行かないと……!
そんな風に全力疾走している時だった。
突然私の前に、茶髪の男が立ちはだかった。
「うわっ! 危な! すみませんでした……ってあんたは!」
「よう、久し振りだな!」
一瞬分からなかったけど私はそいつの顔にうっすらと見覚えがあった。
厨二病こと漢野力也だ。
色々ありすぎて完全に忘れてた。
「確かに久し振りだけど今はあんたに構ってる暇は無いの! じゃ!」
「おい待てよ~つれねえ事言うなよ。ちょっとくらい俺の喧嘩に付き合え!」
鬱陶しい事に漢野はダッシュで逃げる私を追い掛けてきた。
くそっ……邪魔すんな!
「これでも食らえ!」
「おおっ! やる気になったん――のわっ!」
八重染琥珀で閃光を放ち漢野の目を眩ませる。
こうでもしないとこいつは延々と私を追い掛けてくるだろう。
なんて迷惑なストーカーなんだ……。
そうげんなりしつつもまた支社へと走ろうとすると……。
「へへっ、目が使えなくても気配で分かるぜ!」
「あんた生まれた世界間違ってるよ!」
目潰しをくれてやったのに依然私を追い掛けてくる漢野。
コイツ……世紀末とか戦国時代とかあの辺に生まれればよかったのに!
そうすれば凄い活躍を見せてくれただろうに……。
「オラオラ行くぜぇ!?」
漢野が走りながら鋭いパンチを私に繰り出してきた。
私は八重染琥珀で足を加速させて逃げる。
漢野の拳は一つも私の身体に当たらず空を切った。
「おお!? 随分スピードが上がったじゃねえか! お前一体どんな風に鍛えたんだ!?」
「別に鍛えてない。でも私は……大切な人が力を貸してくれているの。だから強いんだよ!」
私は漢野にそう言い放って八重染琥珀を体全体に行き渡らせる。体が琥珀色に染まり光り輝く。
そして拳をしっかりと握りしめて漢野にラッシュをお見舞いした。
「どらああああああああっ!」
「ぐはあっ!」
突きの一つ一つに八重染琥珀が掛かり、凄まじい威力と速さを生み出す。
漢野は私のラッシュに吹き飛ばされ民家の塀にめり込んだ。
よし、これでコイツがもう追い掛けてくる事は流石に無いだろう。
私はそう考えまた急いで支社へと走り出す。
この時も八重染琥珀を使えたらいいんだけど、もしうっかりその辺の一般人にぶつかったら大惨事になるし……。
能力を使っていいのは基本的に特色者に襲われた時だけだ。
まあ八重染琥珀を照明替わりにする程度の事だったら大丈夫……。
「おい、まだ終わってねえぞ!」
「なっ!?」
などと考えているといきなり背後から再び漢野が現れた。
こいつ……! さっき完全に倒した筈なのに……!
塀にめり込んでたじゃん!
「あれ位じゃ俺は倒れねえ! お前は誰かと一緒に戦ってるらしいが俺にだって可愛い舎弟が居るんだよ! そこは俺も負けてねえ!」
「うるさい! 厨二病の癖にちょっといい事言ってんじゃないよ!」
本当にしぶといなこの人。
一周回ってかっこよく見えてくる。
そんな漢野が珍しくまともな質問をしてきた。
「なあ……お前何で急いでるんだ? もしかしてお前の仲間が敵に攫われでもしたのか?」
「……そうだよ。だから今はあなたの相手をしてる場合じゃないって言ってるの。悪いけど今度にして」
「なるほど……分かった」
「!?」
あの喧嘩バカの漢野が頷いた!?
明日は槍を通り越して隕石でも降って来るんじゃないだろうな……。
麗紗があっさり止めそうだけど。
「お前そこに殴り込みに行くんだろ? なら俺も一緒に行くぜ! お前のお蔭で今の俺はベストコンディションだ! いくらでも暴れまくってやるぜ!」
良かった。いつも通りだった。明日は快晴だな。
いや言ってる場合じゃない。
「あのね! 私の仲間は大変だけど殴り込みに行く訳じゃないんだよ! あなたが来ると話が余計ややこしくなるからやめて!」
「あ? 殴り込みじゃ無かったら一体何しに行くんだよ……」
「ああ~もう!」
分かってねえなコイツ……!
……でも待てよ。
識英天衣はあの二人の特色者を凍牙の下に送り込んできている。
つまり武力行使で事を済ませようとしている訳だ。
なら、こっちも拳で抵抗しても立派な正当防衛では?
頭の中でその結論が出た私は足を止めて漢野に言った。
「……漢野、ごめん私の勘違いだった。私が今から行くのは間違いなく殴り込みだよ。あんたも良かったら一緒に来る?」
「あたぼうよ! ほらな俺の言った通りだった! よっしゃ暴れ尽くしてやるぜ!」
「うん、頼んだよ。それじゃあ急ぐよ!」
「おう! かっ飛ばそうぜ!」
そうして何故か漢野が同行する事になった。
正直暑苦しいけどこれで少しでも識英天衣から凍牙を逃がせる確率が増えるのならいい判断だと自分でも思う。
「てか俺達どこに殴り込みに行くんだ?」
「桜月財閥の支社。識英天衣って奴が経営してるとこね」
「よし、間違えないようにするぜ! この前間違えて別んとこ壊しちまって大変だったからな!」
「…………」
やっぱり判断を誤ったかもしれない。
でも時既に遅し。
まあ役に立ってくれると信じよう。
私はそう思う事にした。
*
*
*
時は少し遡る。
「琥珀先輩が慌てて家を出た……? やっぱり凍牙の事を何か知って……」
麗紗は自分の部屋で携帯で琥珀の行動を見ていた。
「盗聴器とカメラ……リビングにも仕掛けておくべきだったな……何かお義父様と先輩話してたみたいだし……」
麗紗は携帯の画面に映し出されている誰も居ない琥珀の部屋を見ながらそう呟いた。
何故麗紗は琥珀本人が部屋に居るのにも関わらず監視カメラと盗聴器を仕掛ける事が出来たのか?
その疑問は全て恋色紗織で解決出来る。
まず、恋色紗織の出す糸はピサの斜塔並の太さから原子レベルの細さまで伸縮自在だ。
つまり家の窓や玄関のほんの少し空いた隙間からでも恋色紗織の糸を入り込ませる事は可能。
そうして麗紗は実際に琥珀の家の前まで行き、恋色紗織を窓から侵入させたのだ。
後は侵入に成功した恋色紗織で琥珀の視野や聴覚を制限して気付かれないようにしてから窓の鍵を内側から開け、最後にじっくりと盗聴器と監視カメラの位置や角度を吟味すれば……。
完全に気付かれる事なく琥珀を見守れるという訳だ。
麗紗は琥珀の慌てぶりを思い出し、決意する。
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